冒険者とは
ゆっくりと外へ出るラキュオス。
路地は封鎖され、大勢の冒険者が取り囲む。その前で仁王立ちのバッケス。
「ほう。覚悟を決めたか?お前が欲を出すからだ!素直に金を持って逃げれば、命は助かったかもしれんのに!」
ラキュオスはもう、バッケスの言葉など耳に入っていなかった。周りの冒険者一人一人の目を見ている。腰の棒を抜き、地面にズドン!と突き刺した。石畳に木の棒が突き刺さっている。
皆の注目が集まる中、ラキュオスは大きく息を吸った。
「皆に問う!冒険者とはなんだ!」
一瞬のざわめき。少し間を置いて、ラキュオスは言葉を続けた。
「冒険者の心は自由!その自由を得る対価として、命を懸けているのではないか!今の君達に自由はあるか!命を懸ける程の!誇れる程の!」
「は、早くアイツを黙らせろ!二百!金額二百枚だ!」
「その男に、命を預ける価値はあるのか!」
「……三百!三百だ!」
「その男が、皆を守ってくれると思うか!」
「四……五百だ!誰でもいい!早く!」
「答えは自分で決めろ!来る者は全て、斬る!」
ラキュオスは棒を引き抜くと、マナを込めた。らっくはヒュドラの爪を振り出し、地に手をつき、髪を逆立てて身を沈める。
「顕化・成刀」
「シャアァァァっ!!」
「や、やれ!何をやっているのだ!全員で掛れ!」
冒険者一人が剣を納めた。一人、また一人、その場に居た冒険者が武器を納めていく。
「そうだな旦那。冒険者は自由の象徴だ。」
「なんか目が覚めたっつーか、なぁ?」
「バカらしくなったな。」
「だな。」
「お、おい、どうした!七百!七百でどうだ!」
「みんな、ごめん!お、おれ、みんなに黙ってたけど、前のギルドが経営難になったの、コイツのせいなんだ!」
「馬鹿野郎!なんで早く言わねぇ!」
「ほほぅ、なるほどぉ。詳しく聞かせて貰わなきゃならねぇな!」
「「だな!」」
指を鳴らし、肩を回し、冒険者達はじわじわとバッケスを取り囲む。
「八百……」
「うるせぇ!てめぇの全財産、没収だ!」
「私の金、私の金だぞ!私の……」
-それから、バッケスの屋敷の家宅捜索が行われた。
掘れば掘る程出て来る悪事の証拠、借金を負わせ、奴隷に落とした者の契約書、性奴隷の売買に関する資料、帝都貴族の密約の覚書き、媚薬……
金になるものなら、何にでも手を出していたようだ。
街の衛兵にも金がばらまかれていたようで、兵士長以下数名の身柄が拘束され、体制も新しくなった。
ギルドの方は、元のマスターが呼び戻され、立て直しをはかっている。信用と自由を取り戻す為に、冒険者達も頑張っているようだ。
-数日後。
ラキュオスは、ある人物を訪ねていた。
「親方は戻られたか?」
「んぁ?あぁ、あんたか。呼んでやるよ。お嬢!お客さんですぜ!」
「誰だいったい……」
「貴女が、ナツさんか?」
そこに現れた女性に、ラキュオスは頭を下げた。
「すまない。私は、貴女を手に掛けようとした。許して欲しい。」
「はぁ?」
ラキュオスは、包み隠さず全てをナツに話した。
「ふーん。アンタも馬鹿正直な人だな。わざわざそれを言いに来たのか?まぁ、気にすんなよ。それより……おい、ウル爺!ヤス!」
ナツは二人の男を呼んだ。一人は父の代から現場を仕切っているオウル。爺と呼ばれるが、五十代の現役バリバリ。もう一人は、先日の倉庫番の男だ。
「ウル爺、そろそろ独立してみないか?」




