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金は腐らない



ラキュオスは、らっくが連れ去られた場所から、少しづつ範囲を広げながら手掛かりを探す。


(何かある筈だ。冷静に、見逃すな……)


逸る気持ちをを抑え、自分に言い聞かせる。


(そうか。今までは、ギルドの連中がやってくれていたのだな……)


今更ながらに気付く。仲間とは、守るとはどういう事なのか。


(子供だな、私は。)


首を振り、頭を切り替えるラキュオス。ふと見ると、数匹の猫が扉をカリカリと引っ掻いている。人通りの無い路地の一角にある倉庫。


(まさかあの匂いに釣られて……)


ラキュオスは静かに扉を開ける。すると猫達がなだれ込んで行った。

猫の後を追うラキュオス。人の気配を感じ、物陰に隠れた。


「……また入って来やがった。ちゃんと扉を閉めろと言ったのに!」


猫を両手に抱え、見覚えのある男が出て来る。


「ドスッ!」


ラキュオスは当身をし、男が崩れ落ちる。猫達は素早く飛び退いた。


奥の部屋には、両手を縛られ、鎖で繋がれたらっくの姿が。首から袋をぶら下げ、恍惚の表情で涎を垂らしている。


「悪趣味な!らっく!」


ラキュオスは首の袋を取り、格子の嵌った窓から捨てる。らっくを抱きかかえると、酔い醒ましの袋を鼻に当てた。


「らっく、吸うんだ!しっかりしろ!」


「……」


「……き、さ……」


「……らき、さま?」


「らっく!」


「……らっ……く、く、くしゃいにぃ。変な匂いだにぃ!」


「効いたか。らっく、わかるか?」


「ラキ様!助かったにぃ。」


ラキュオスは、らっくを縛る縄を解き、鎖の付いた首輪を外した。顔を拭いて頭を撫でる。


「よかった……立てるか?」


らっくは、少しよろけたが、なんとか立てた。


「もう少し、コレを嗅いでろ。」


「うぅ……くしゃい……コレ嫌いにぃ……」


「おやおや、見つかってしまいましたか。」


数人の男を連れ、バッケスが現れる。


「無駄ですよ。この周囲は、()()の冒険者が取り囲んでいます。逃げれるものではありません。そうですねぇ、貴方には、隣街の商人を襲い、獣人を誘拐した犯人として、ギルドに討伐命令を出しましょう。」


「なるほどな。ようやく理解したよ。」


「今更何を?」


「バッケスと言ったか?お前は私に、金は腐らんと言ったな。だが金は、人の心を腐らせる。お前を見てそう思った。いや、違うな……腐ったヤツが金を使うと、周りも腐るって事か。」


「それがお前の遺言か。おい、片付けろ!」


男達がナイフを取り出す。狭い室内では、ラキュオスは不利である。


「ラキ様ぁ、やっつけていいにか?」


「あぁ、コイツらは敵決定だ。」


ラキュオスが、決定だ。の『だ』を言い終わる前に、男達は倒れていた。それぞれの顔に、四本の傷を付けて。


「にゅう……イマイチ身体の反応が鈍いにぃ……」


「な、な、何が起きた!」


「見えなかったのか?やっぱり冒険者の経験が無いマスターは、ダメだな。」


らっくは両手の爪をギラつかせ、バッケスに躙り寄る。


「ま、まて、金をやる!どうだ、金貨二百……いや、五百……」


「おい、らっくを探すだけで千枚だったろ。お前の命が五百か?案外お前、安いな。」


「わ、わ、わかった!二千……二千五百……三千!」


ラキュオスは、やれやれ……と首を振った。その隙にバッケスは、外へと逃げる!


「はっはっはっはー!逆転だ!出てこい!表には百を超える冒険者が居るぞ!お前達!ヤツらを討ち取ったら、賞金を出すぞ!!」

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