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金という刃物



ラキュオスは、酒のついでに聞いてみた。


「ナツという人は、まだ若いらしいな。」


「あぁ、たしか……十八だったかな。」


「そんな若い娘に、なぜあんた達は従ってるんだ?」


「そうさなぁ、身寄りのねぇ俺を拾ってくれたのは、お嬢のおやっさんなんだ。そのおやっさんが死んで、お嬢があとを継いだ。」


「先代への恩義か?」


「それもあるだろうが、親方としてのお嬢に、惚れちまったのかもな。」


「そういうことか……」


「勘違いすんじゃねぇよ。雇い主としてのお嬢の器量というか、俺達みたいな半端もんを 大事にしてくれるんだよ。」


「親方として?」


「そうさ。先代が死んだ時だ。お嬢は俺達の為に、新しい働き口を探してくれた。真っ先に下のもんの生活の心配をしてくれたんだ。一人一人の能力に合った仕事先を、駆けずり回って探してくれた。」


「責任感……か?」


「そんな事務的なこっちゃねぇよ。お嬢に言われたんだ。みんなは親父が息子のように可愛がってた家族、同じ親を持つの兄妹なら、心配すんのは当たり前だとな。」


「家族……」


「身寄りのねぇ俺にとっちゃ、本当に家族だ。だから俺達はお嬢に頼んだんだ。親方になってくれ、ここで働かせてくれってよ。お嬢は俺達の懇願に、腹を括ってくれた。」


「……」


「それから大変だったぜ。一から仕事を覚えて、得意先の挨拶回り、組合の登録、バッケスとかいうヤツの横取り、俺達も必死に戦った。ようやく最近だ。落ち着いてきたのは。」


「バッケス……」


「あぁ。ウチのお嬢は、人を活かす為に金を使うが、バッケスの野郎は、自分の為だけに使う。他人の命なんざ、屁とも思わないヤツさ。」


(そんなヤツに私は今……)


「あぁ、そういやこの前も、お嬢を狙って来やがったな。まどかって冒険者が助けてくれなかったら、大怪我してたところだぜ!」


「まどか、今まどかと言ったか?」


「んぁ?あぁ、お嬢が乗った魔導列車の護衛に雇われた冒険者らしい。知り合いか?」


「あ、いや、旅の途中で聞いた名だ。知り合いという訳では無い。」


まどかの名を聞き、急に冷静になるラキュオス。


「すまない、急用を思い出した。日を改めさせてもらう。」


「なんだよ、もう行っちまうのか?」


「すまんな。」


「しゃあねぇな。ほらよ。持ってけ。」


男が袋を投げる。


「何だ?」


「酔い醒ましだ。足がフラフラじゃあ、夜道も危ねぇ。用事も出来んだろ。」


中には薬効のありそうなハーブが入っている。


「な、なぁ、これ、猫にも効くのか?」


「はぁ?猫ぉ?知らねぇよ。そいつぁ人間様用だ。」


「そ、そうか。邪魔をした。」


ラキュオスは袋を鼻に当て思いっきり息を吸う。頭がハッキリする感覚があった。そのまま来た道を戻る。


(私は何をやっているのだ!まどかは人々を救い、太陽とまで言われ慕われていると言うのに、私は人質を取られ、悪事の片棒を担がされるなど……


何がランクBだ!何が二枚看板だ!私とまどかでは、天と地程の差があるじゃないか!

あの時私は、家族を守れなかった。強くなろうと冒険者になった。修行もした。

それが何だ!未だに連れの一人も守れないのか!私が今やるべき事は何だ?答など、とうに出ていただろうが!!)


思考と共に、足も加速して行く。ラキュオスはダザイシティへと駆け出した!冷静な思考を取り戻した時、ラキュオスはダザイシティに到着した。

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