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金という呪い



ラキュオスはギルドに、執務室に直行する。

蹴破るほどの勢いでドアを開け、バッケスを問い詰める!


「何のつもりだ!らっくを何処へやった!」


「いきなり入って来て、何の騒ぎです?」


「惚けるな!私の連れを拐わせたのは、お前だろ!」


「まぁまぁ、落ち着いて。お連れさんが誘拐されたのですか?それは心配ですねぇ。ですが、私ではありませんよ。仮にもギルドマスターです。人さらいなど、する訳ないじゃ無いですか。」


「くっ!白を切るか!」


「そんなに疑うのでしたら、私が冒険者を使って探させましょうか?私も身の潔白を証明したいですから。」


「本気で言ってるのか!」


「えぇ。商人は信用第一。ギルドもまた然り。街の出来事は、街の冒険者が一番頼りになりますよ。その代わり……」


「なんだ!」


「依頼料、少々お高いですよ。」


「いくらだ!」


「そうですねぇ、金貨千枚。」


「馬鹿を言うな!」


「いえいえ、お見受けしたところ、貴方は相当の使い手だ。貴方程の冒険者から人を拐うとなれば、相手もかなりの者でしょう。

力か、知恵か、どちらも優れているのか……それ程の相手となれば、ウチも上位の冒険者を使わねばなりません。数も揃えないといけない。危険も伴います。妥当な金額でしょう。」


「もういい!自分で探す!」


「無理でしょうな。この街は入り組んでおります。余所者が土地勘も無しに、一人で人探しができる程狭くもありませんよ。

じゃあ、こういうのはどうです?以前私が依頼した件を受けてくださるなら、金貨千枚を相殺しようじゃありませんか。」


「はなからそれが狙いか!あくまで表向きは仕事、だがこれは、人質を取った脅しじゃないか!」


「まだお疑いですか?じゃあこうしましょう。私の依頼を達成出来たら、更に金額百枚、お支払い致します。いかがですか?」


(……)


「そんなにゆっくり考えてて良いのですかね?あれ程の可愛らしい獣人、グズグズしてたら、あっと言う間に売り飛ばされてしまいますよ?早く手を打たないと、ウチも探せなくなります。」


「(……卑怯な!)……誰だ、私は誰を討てばいい……」


「良い決断ですな!ナツという小娘が束ねる商会があります。その娘と、周りの連中を数人痛めつけてくだされば結構です。隣街までは、案内を付けましょう。頼みましたよ。」


ラキュオスは屈辱に塗れ、目を真っ赤にして立ち上がった。案内の男と共に、街の境に来たラキュオス。


「旦那、この道を真っ直ぐ行って、池の手前を右へ入ると倉庫街だ。そこにヤツらはいる。」


「……わかった。気が散る。お前は帰れ!」


ラキュオスは、意を決して倉庫街へ向かう。荷馬車の走り交う道沿いに、一際賑やかな倉庫があった。顔を隠し、中の男に尋ねる。


「すまない、この辺りに、ナツという女性の倉庫は無いか?」


「んぁ?ナツってのは、ウチのお嬢だが、今は居ねぇよ。帝都へ行ったから、帰りは明後日だな。お嬢に何か用か?」


「あ、あぁ。ちょっと頼まれ事でな。(出直すか……)」


「そうか。お嬢の客人なら、このまま帰したら怒られるな……何にもねぇが、酒ならある!兄さん、ちょっと付き合わねぇか?俺も倉庫番は退屈でよぅ、な、付き合ってくれ!」


「いや、私は……」


「いいからいいから。ささ、座んなって。ほら。」


ラキュオスは下手に逃げる訳にも行かず、不承不承この男の酒に付き合うことになった。

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