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一宿一飯



翌朝。

昨日と変わらぬのんびりした雰囲気のトンキーさん。少し憂いのある目の奥さん。おそらくホンキーは出ていったのだろう。ラキュオスは泊めてもらった礼に、道中で倒した魔獣の素材を トンキーさんに渡した。


「お世話になりました。そろそろ収納がいっぱいになりそうなので、受け取ってくれませんか?この先の旅に、必要の無い素材ばかりですので……」


「お気遣い、ありがとうございます。そこまで言われるのでしたら、受け取らせて頂きますね。」


「こちらこそ。泊めてもらったばかりか、荷物の整理も出来ました。」


傍で見ていたらっく。どうやらラキュオスの真似がしたいらしい。


「これもあげるにぃ!らっく、ちょびっと食べ飽きたにぃ!」


と、干し魚を三枚出した。


「ありがとう、お嬢ちゃん。」


トンキーさんは、らっくの頭を撫でる。らっくは嬉しそうに目を細めた。


「そう言えばトンキーさん、昨日お邪魔した時に、表で馬車に乗った商人とすれ違ったのですが、あれはどの街から来た商人ですか?」


「あぁ、それは多分、隣街のギルドの下請けで、ウチに素材を買い取りに来た商人でしょう。バッケスという、ダザイシティの商人ですよ。」


「ダザイシティ……そこは近いのですか?」


「そうですね、貴方の足でしたら、一日半というところでしょうか。街道の一本道ですから。」


「なるほど。ありがとうございます。」


次の目的地を ダザイシティに決め、ラキュオス達は街を出た。いつまでも手を振り見送ってくれるトンキー夫妻。二人が見えなくなるとラキュオスは足を止めた。


「らっく、干し魚、あげて良かったのか?」


「にゅ?呑気さん、寂しそうだったにぃ。美味しいものを食べると、元気出るにぃ!だからあげたにぃ。」


「そうか。(まさか好物を渡すとは……優しい子なのかもな……)しかしのんびりし過ぎて、身体が鈍ったな。らっく、少し身体を動かすぞ!」


「にぃ!」


ラキュオス達は、街の周辺で魔獣を狩った。トンキー夫妻への恩義を返す意味も込め、街に危険が無いように……



-ダザイシティ。

一昔前は、各街道の拠点として栄華を極めた。それが近年、隣接するシノックシティに、帝都へと繋がる魔導列車が運行を開始。経済の拠点を奪われる形となった。


そんなダザイシティにあって、今尚衰えを知らぬ商人がバッケスである。今やバッケスは、金の力でこの街の全てを動かせるまでになった。

そして今後の展開として、シノックシティに拠点を置き、帝国の流通全てを牛耳ろうと目論んでいた。


「親方!大変です!シノックの小娘の一件、失敗しやした!あのアマ、ウチのヤツを樽に詰めて送り返してきやがった!」


「ちっ、使えんヤツめ。そのまま捨ててこい!」


「へ、へい!」


「まぁいい、今度は少し頭を使うか……おい、誰かギルドに行って、流れもんが居ねぇか見て来い。」



-ラキュオス達がギルドに着いたのは、前の街を出て三日後の昼だった。


「いらっしゃいませー。ご依頼ですか?」


カウンターには若い女性。冒険者上がりというわけでなく、職業として受付をやっているらしい。


「いや、私は旅の冒険者。この街には立ち寄っただけだが、一応挨拶だけはと思い顔を出した。マスターにお取次ぎ願えるか?」


「かしこまりました。少々お待ちください。」


裏でなにやら話をしている。男の声で、ちょうど良かった。などと言っている。


「では旅の方、こちらへどうぞ。」

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