ヒュドラ装備
翌日。昼も過ぎた頃に目覚める。
「もう随分日が高いなぁ……」
らっくは床で丸くなって寝ている。
「おい、らっく、ベッドで寝なかったのか?」
「むにゅむにゅ……にゅ?」
「(まぁ猫だからしょうがないのか?)らっく、買物に行くぞ。」
その日はポーションや食料の買い出しに使った。肉は現地調達出来ても、野菜や穀類はそうはいかない。らっくはジャーキーや干し魚が好みらしい。せがまれてそれも買った。
帰りにギルドに立ち寄り、周辺の街を調べた。次の目的地を探すためだ。まぁ、らっくが資料を読めるわけもなく、ラキュオスが調べ、らっくは退屈する訳だが……
次の日、ラキュオスは朝から旅支度をしていた。そこにノックの音。
「コンコン……旦那、起きてるかい?」
「あぁ。」
「降りてきてくれるか?装備が上がった。」
「早いな!今行く。」
ラキュオスは、寝ぼけるらっくを起こし、ロビーへ降りた。
「おう!旦那、見てくれ。これが二人の装備だ!」
胸当てとスカートを 革のベルトで繋いだ軽鎧、胸当てにはヒュドラの鱗を重ね貼りし、見た目以上に防御力が高い。
スカート部は八枚の大小のヒュドラの革、柔軟に動くが、小さめの鱗がびっしり詰まっていて、こちらも防御は申し分無し。パーツによって、使う革の部分を変え、動きを阻害しない構造だ。
隣にはラキュオスの革鎧がある。元の鎧を軽量化し、鱗の重ね貼りで防御力を高めてある。らっくの装備の鱗は、赤紫色に光っているが、ラキュオスの方は漆黒の輝きである。
「どうだい、気に入ってくれたかい?」
「私の鎧まで……しかもギルドの紋章もちゃんとある……ありがとう!大切に使わせて貰うよ!」
傍らでらっくは、爪を手に飛び跳ねている。ヒュドラの牙で、左右四本ずつ、普段は手甲として装備し、戦闘時に振り出して使う仕様である。
「らっく、装備してみろよ。」
職人達に丁寧に装備を着けてもらうらっく。今後たぶん自分が着せ替えなければならないであろうラキュオスも、職人に説明を聞いている。
まず腹巻のようなものをすっぽりと着て、その上から胸当てとスカートを着けていく。腹巻もよく見ると、細かい鱗がびっしり並んでいる。
しっぽを出す穴と、ベルトの微調整をしながら、装備完了だ。
「どうだい、お嬢ちゃん?」
らっくは身体を動かし、飛び跳ね、具合を確認する。
「動きやすいにぃ!これなら邪魔にならないにぃ!」
「そいつぁ良かった!」
「らっく、とりあえず、自分で着れるようになろうな。わからないうちは、私も手伝うが……」
「うーん……わかったにぃ……」
(あからさまに面倒臭そうだな……)
やれやれと首を振っていると、らっくが横からつつく。
「んと、んと、なんて呼んだらいいにぃ?」
「ん?何がだ?」
「んー、ご主人様とは違うにぃ。なんて呼んだらいいにぃ?」
「あぁ。私か。ラキュオスと呼んでくれたらいい。」
「ら、らき、らく、らきゅっ……呼びにくいにゅ……噛んじゃったにぃ。」
「……好きに呼べ。呼び名など、何でもいい。」
「んじゃ……ラキ様。ラキ様にするにぃ!」
(な、なんか、魔王っぽいな……何でもいいとは言ったが……)
「ラキ様ー、出発だにぃ!早く行きたいにぃ!」
「わかったわかった。お前の主人を探すんだったな。
みんな感謝する。少し王国に用事が出来た。我々は、旅を続けることにする。」
「そうか。まぁ、なんとか出発に間に合わせる事が出来て良かったよ。お気を付けて……って、旦那は大丈夫そうだな!ハハハ。」




