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「ごめんなさいだにぃ……」


街の屋敷に戻ったラキュオス達。猫の狩猟本能なのか、ゴブイーターとの戦いにテンションが上がり、調子に乗りすぎたらっくは、貰ったばかりの服を破ってしまった。ラキュオスの横で膝を抱え、小さくなるらっく。


「まぁ、お嬢ちゃんもそんだけ頑張ったってこった!そのお礼と言っちゃあなんだが、お嬢ちゃんの装備、作ってやろうじゃないか。」


「ほんとかにぃ!」


「あぁ。ちゃんとお嬢ちゃんの寸法測ってよ、お嬢ちゃん専用の装備ってヤツだ。受け取ってくれるかい?」


「いいのか?」


「旦那、あの子の戦闘見たろ。この先も魔獣にゃ必ず出会す。だったら、間に合わせの服じゃ可哀想だ。これは俺達からの餞別だ。」


「感謝する!」


「おう、お嬢ちゃん、どんなのがいい?」


「にゅー……破れないの。んで動きやすいの!」


「わかった。ついでに、武器も作ってやろう。せっかくヒュドラを狩ったんだ。その牙で、爪を作っちゃどうだ!」


「作るー!今度はらっくが仕留めるにぃ!強い爪、欲しいにぃ!」


「そうと決まりゃあ、早い方がいいな、おい!」


ルドルフは、屋敷に避難していた職人達を集めた。採寸から材料の吟味、縫製や金属加工、まるで一大プロジェクトのように総出でかかった。


「まぁ、それでも二日はかかるだろ。もう少しこの街で、ゆっくりしてってくれ。」


「にゅー……」


「仕方がないだろ、らっく。お前が欲しいって言ったんだ。」


「お腹空いたにぃ……」


「ぶっ、ははははぁ!こいつぁいいや!野郎ども!ゴブイーター討伐の祝いだ。パァーっとやろうぜ!」


「「「宴だぁーっ!!!」」」


やはり冒険者の宴というのは、肉祭りであるようだ。香草や香辛料をまぶし、絶妙な火加減で焼かれた肉。煮込み、スープ、全てに肉が入っている。

らっくは匂いのキツイ香草が苦手らしい。スープも熱いうちは飲めない。いわゆる猫舌である。それでも好みの肉料理を見つけると、小さい身体のどこに入るのか?と目を疑う程の量が腹に収まっていく。一応手を使って。


「旦那、一つ聞かせちゃくれねぇか?」


ルドルフが食休みとばかりに声をかける。


「旦那の雷を纏った技、確かに凄かったが、俺が驚いたのはそこじゃねぇ。ヒュドラの腹を真っ二つに割いてるが、解体したら骨にヒビどころか傷一つ無かった。旦那、あの一瞬で骨を避けたのか?」


「偶然だ……と、言いたいが、どうやら隊長さんは誤魔化せないな。」


「やはりそうか!旦那は師匠の教えで剣を持ってねぇと言ってたな。その師匠はもしや……」


「他言無用に願う。私の師匠はギルバート。ソードマスターと呼ばれる男だ。」


「そうか!ついでに聞いて悪いが、師匠の傍に、レミという女性はいなかったか?」


「なんだ、隊長さんは、レミ姉さんの知り合いか?元気でやってるよ。」


「本当なのか!ではアイツはまだ剣を!」


「いや。身体を壊して、剣士を引退したらしい。今は魔獣の解体や査定をしている。」


「そ、そうか……ダメだったか……」


拳を握り、俯くルドルフ。


「どうかしたか?」


「あ、あぁ。俺が質問したんだ。黙っている訳にもいかねぇな。」


ルドルフは顔を上げ、頭を振り、一つ息を吐くと、ぽつぽつと語りだした。


「アイツが……ソードマスターの跡継ぎとまで言われたレミが、剣を振れなくなる程の怪我を負ったのは、俺のせいなんだ。」

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