表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/29

NEXT STAGE



試験の日から一月、ラキュオスは街の周辺で修行を続けた。ギルバートから、


「いつまで居座ってんだ、そろそろ出てけ!」


と言われ、半強制的に旅の準備を始めた。


「ったく、師匠もめんどくさいことさせるよな。あ、それと、これはあたしからの餞別だ。」


ラキュオスは、レミからナイフを受け取る。


「そいつは解体用だ。自分で捌けば、手間賃も取られねぇ、食費も浮くだろ。ちゃんとメシ食えよ!変な女に引っかかんなよ!ポーションは多めに持っていけよ!それから……」


「フフっ……母さん。」


「せめて姉さんだって言ったろ!まぁ、その、なんだ……行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


ラキュオスは、街を出た。新たな決意を胸に。


(魔剣探しの旅は、ひとまずお預けだな。私は、魔剣を振るうに価する剣士になろう!)


今までの旅が、無駄とは言わない。だがラキュオスにとって、本当の意味での旅立ちを迎え、腰に木の棒を下げた剣士は、次の街へと歩を進めるのだった。



-森を抜け、山の麓の街に出た。街の名はホーチックシティ。嘗て帝都直轄の鉱山の街であったが、鉱山がダンジョンであるとわかり、冒険者の集う街へと、その姿を変えつつあった。


出来たばかりのギルドには、マスター代理の冒険者がいた。元は近くの街の冒険者だったが、ダンジョンがスタンピードを起こした時、討伐の指揮を採った者らしい。

名をルドルフ。奴隷の街であったこの地を解放し、横暴な領主は姿を消した。今は実質、ギルドが街の運営をしている。

街の中央には石碑があり、


『旅の冒険者まどか様、我らが太陽』


と刻まれていた。


「すいません、この、まどかという方は……」


「んぁ?あんた、旅の人かい?俺も詳しく知らねぇんだ。ギルドで聞いてみな。」


「そ、そうか。」


ラキュオスは早速ギルドに向かった。と言っても、元大衆食堂兼宿屋だったものを 仮設のギルドとして使っているらしい。古い建物に、ギルドの看板だけが新しかった。


「すいません、あの……」


「おう。冒険者か?買い取りか?潜るか?」


「では、まず買い取りをお願いします。」


「じゃあ、こっちだ。ここに出してくれ。」


ラキュオスは、旅の途中に仕留めた魔獣の素材を出した。


「ほう、解体済か。なかなか丁寧な仕事だ。状態も悪くない。合わせて……金貨十五枚と銀貨八枚ってとこだな。いいか?」


「それで構わない。ところで……マスターにご挨拶がしたい。取り次いで頂けるか?」


「あぁ、ルドルフ隊長か。隊長なら今頃は、ダンジョンの入口だと思うぜ。案内板が出てるから、それに沿って山を登りな。」


ラキュオスは代金を受け取り、ダンジョンへ向かおうとする。すると、出口で立ち塞がる者がいた。


「兄さん、ちょいと待ちな!見たところ剣士の装備だが、剣を持ってねぇ。お前さては盗賊だな?いや、そうに違いねぇ!

解体済の素材に、剣も持たずに剣士の装備。それ全部、盗んで来たんだろ!冒険者ってぇのは、魔獣だけじゃねぇ、盗賊を懲らしめるのも仕事なんだよ。痛い目見たく無かったら、身ぐるみ全部置いて行け!」


この状況を見た者は、十中八九、立ち塞がる者達の方が、盗賊だと判断するだろう。寄せ集めの装備に、スパイク付きのナイフ。髪を半分剃り落とし、残り半分は逆立てている。連れの男は、一見温厚そうな肥満体、血を見て豹変しそうな贅肉ダルマだ。


「私は紛れもない冒険者。一応剣士だが、師匠の教えで剣を持たずに旅をしている。道を空けてくれないか?」


「お前は馬鹿か?盗賊が、はい。私は盗賊です。なんて言うわけねぇだろ!そんな言い逃れが通用するかよ!ちぃと痛い目見なきゃ分からねぇらしいな。表ぇ出ろ!」


ラキュオスは二人と共に外へ出た。野次馬に取り囲まれ、どうやら素通りは出来なさそうである。


(やれやれ……これも修行なのかね……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ