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一週間(試験)



「なんかあった?」


レミの言葉に、なかなか返事をしないラキュオス。しばらくして、ようやく口を開く。


「レミ姉さんは、なんでギルドに残ったんですか?」


「おい、質問に質問返すかよ!まぁいいか。そうだなぁ、アイツら、ほっとけないからかなぁ……

怪我してねぇか、ちゃんと稼げてるか、メシ食ってるか、強くなってるか……

アイツらは、あたしにとっちゃ弟弟子。姉さん、なんて言われると、なんかくすぐったくてよ、暖かい気持ちになるんだ。」


レミの含羞はにかみは、どことなく幼い時に見た、母の笑顔に似ていた。


「母さん……」


「おい、せめて姉さんだろ!まぁ、母親ってのは、こんな気持ちで子供を見てんのかもな。」


ラキュオスの思わず漏らした言葉に、レミはそう答える。


「お前もだぞ!たった一週間かもしんねぇけど、あたしの弟弟子だ。明日なんだろ?試験。んじゃ、末っ子のお前に、ヒントをやるよ。」


「え!」


「ずっと解体見てて、魔獣の急所は、何となくわかるようになったろ。」


「は、はい。」


「んじゃあよ、岩の急所って、どこだろうな?」


「岩の?」


「考えるな、感じろ!あと、いつまでもサボってんじゃねぇ、捌くぞ!じゃあな。」


それから三日間は買い取りの客も多く、忙しい毎日だった。レミに考えるなと言われたが、むしろ考える暇など無かったと言えよう。

そして、運命の最終日。


ラキュオスは朝から岩の前で、じっとしている。腰には剣を下げ、確かめるように柄を握っていた。


(お前が生涯の一振りとなるか、今生の別れとなるか……)


「なんだ、諦めてなかったのか?それとも剣を叩き折って、田舎に帰る決心でもしようってか?」


「ギルバートさん。一週間、ありがとうございました。この出会いが無意味で無かったと、私なりに証明したいと思います。」


「ほう、見せてみろ。お前の証明ってヤツを。」


ギルバートとレミが見つめる中、ラキュオスは剣を抜いた。思えば今まで、剣に語りかけたことなど無かったが、今朝は無意識にやっていた。

彼の心が、今何か変わりかけているのかもしれない。真っ直ぐに構えると、岩の一部が光ったような気がした。


「つぇえやぁーっっ!!」「ガギンッ!」


ラキュオスは渾身の突きを放つ!しっかりと踏み込み、腕と剣が一直線になり、岩の一点を突いている。


「ピシッ、パキーン!」


剣にヒビが走り、砕けてしまう。止まっていた息をフゥと吐き、ラキュオスは頭を下げた。


(すまない。)


それは誰に向けた詫びなのか、自然と出た言葉がそれであった。


「終わりだ。まぁ、気をつけて帰れ。」


ギルバートがその言葉を告げた瞬間、


「ビキッ、バキッ!ゴゴゴゴ……ズズーン!!」


岩に亀裂が入り、半分が崩れ落ちた!


「師匠、これって、合格?失格?どっち?」


レミが問い詰める。


「俺が知るか!」


「知るか!じゃねぇだろう!師匠がやらせたんだろ!決めんのも師匠だろうが!!」


「なんだその口の利き方は!まったく誰に似たんだか。昔は蚊の鳴くような声だったクセに。」


「うっさいわ!何かと言うと昔話して、年寄りじゃあるまいし。で?これどうすんの?」


「んー……保留!保留だ。だが終わりは終わりだ。もう教えることはねぇ!剣も折れちまったし、また棒でも下げとけ!今日からお前は、剣を持たない剣士、無剣士だ。」


「なんだそりゃ!」


「ただの棒っ切れでも、気を込めれば魔獣だって切れる。お前でも、追っ払うくらいは出来んだろ。旅を続けるなら、その棒一本で続けてみろ!ちったぁ修行になるだろ。」

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