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青の一族1

個人的なイメージでは、砂鮫はドスガレオスというよりハプルボッカ。

 カイエンとダ=ジィルは砂鮫狩りの砂上船甲板で対峙していた。

 カイエンの方はやや腰を落とし、緩く握られた両拳を顔の高さに持ち上げている。相手の上背の高さを警戒し、振り下ろす類の攻撃に備えているといったところか。


 対するダ=ジィルは半身に構えると、腰だめの右手をカイエンに向け、左手は顔の真横に引き付けて防御用とする。

 正面に立てば2メテル近い身長と合わせ、まるで一本の棒が直立しているようにも見えた。


 霊紋持ち同士の決闘に巻き込まれてはかなわないため、他の砂鮫狩り達は遠巻きに陣取り、固唾を飲んで決闘の行方を見守っている。

 ちなみにリンカもヘイを連れて見物に紛れ込んでいるが、ハカクは自分の砂上船を放置できないために居残りである。「兄貴の決闘をみすみす見逃すなんて、一生の不覚ッス」と嘆いていた。


「カイエン、準備できたか?」

「おうよ。いつでもいいぞ」


 律儀に確認を取ったダ=ジィルが頷いて合図を寄越し、この砂上船において最も厳めしい面構えの男が一歩前に進み出る。

 砂鮫狩りのまとめ役であり、決闘の見届け人として指名された人物でもある彼は、ゆっくりと片手を持ち上げると、「始めよっ!」という大音声と共に振り下ろした。


「まずは小手調べといかせてもらうぜ」


 気楽な口調で嘯くなり、カイエンはダ=ジィルに向かって走り出す。

 ただし、その軌道は直線ではない。蛇行という表現すら生温く、カイエンはダ=ジィルを中心として円の軌道を描きつつ、徐々にその輪を狭め始めたのだ。


 狼の群れは狩りの際、獲物を囲んで注意を散らした上で、四方から次々と攻撃を仕掛けるという。カイエンの戦法はさながら、たった一人でそれを再現しようとするものであった。

 普通の人間ならば走力と持久力の壁に阻まれて到底不可能な戦術だが、霊紋によって強化された身体能力はそれすら可能としてのける。


 最初は軽い駆け足程度だったカイエンの動きも、周回を重ねるごとに速度を増し、緩急をつけた足運びと相まって、見守っている者達の中にはカイエンが何人もいるように錯覚する者すら現れるほどだ。

 やがてじりじりと縮まった輪がダ=ジィルの間合いに届くか届かないかといった距離まで迫った時、ようやくダ=ジィルが動きを見せた。


「シッ!」


 気合一閃、反時計回りに薙ぎ払われる下段蹴り。時計回りで間合いを詰めていたカイエンにとってみれば、これは真正面からの迎撃を意味している。

 だが、この程度ならばまだ想定の内だ。カイエンは即座に甲板を蹴って宙に舞うと、霊紋の輝きを伴った蹴りが真下を通過しざま、お返しとばかりに飛び蹴りを放つ。

 ダ=ジィルが顔を引いてそれを避ければ、双方共に蹴りを空振りした状態で交錯することとなった。


 次の瞬間、両手両足で甲板上に着地したカイエンが、這いつくばったような姿勢から猛ダッシュをかける。

 跳び蹴りをかました以上、常識からすればカイエンの方が体勢を崩しており、立て直すのにほんの僅かではあるが時間がかかる。そんな予測を嘲笑うかのように、立ち上がることを端から放棄し、四足の体勢のままで攻勢を畳みかけたのだ。


 この選択は見事にダ=ジィルの意表を突くことに成功した。動きを止めた所を狙うつもりだったらしい手刀が止まり、戸惑いと困惑がブレンドされた気配が伝わってくる。

 そんな隙をみすみす見逃すようなカイエンではない。ここぞとばかりに一挙に懐まで潜り込むと、抉り込むがごときボディブローでダ=ジィルを攻め立てる。


 とはいえ、さすがに甘んじてこれを喰らってくれるほど優しいわけもなく、ダ=ジィルは即座に細い両腕を畳むと胴体を覆い隠すようにガードを固めた。だが、カイエンはお構いなしに拳を振り抜く。激突の瞬間、蓄えていたベクトルが一滴たりとも余すことなく放出され、びりびりと全身の骨を震わせる衝撃となって辺りに四散した。


 ガードの上からでも十分にダメージが突き抜けたことを確信させる手応え。案の定、あまりの威力に数メテルほど吹き飛ばされたダ=ジィルは、どうにか着地するもののすぐに構えを取ることが出来ず、その場でがくりと片膝を折ってしまった。


「……驚いた。砂海の外にいる者の強さ、見誤っていた」

「まあ、自分の周りしか知らなければそういうこともあるさ。俺だって旅に出るまでは、この世に一面砂ばかりの土地があるなんて知らなかったんだぜ」


 感嘆の念と共に紡がれた独白に、気安い口調で応じるカイエン。ダ=ジィルはその瞳をぱちぱちと瞬かせると、口元を楽しげに綻ばせる。


「カイエン、おまえ妙な奴だ」

「そうかもな」


 言葉面だけみれば無礼にも聞こえる物言いだったが、芯に敬意が込められているためか不思議と穏やかに聞こえる。カイエンの方も腹を立てた様子は見当たらず、否定することなくダ=ジィルの言葉を受け入れていた。


「だから不思議だ。おまえ、砂鮫狩り侮辱したと聞いた。それだけの実力を持ちながら、どうしてそんな真似する?」

「侮辱? そんな真似してないぞ」


 さっぱり訳が分からないとばかりにカイエンは首を振ってみせる。ダ=ジィルはほんの少しだけ黙考すると、訊き方を変えた。


「ダ=ボルク……さっきおまえに挑んで敗れた者、おまえが砂鮫狩りを侮ったがゆえに怒った。そう聞いている」

「ああ、あいつか……確かに、謝れとか何とか言われたな。でも、一体全体、何に謝れってんだ? あいつが怒ってた理由が、俺にはさっぱり分からないんだ。むしろ教えて欲しいくらいだぜ」


 臆面も無く言ってのけるカイエンの瞳には、一片の曇りも見当たらない。正真正銘心の底から、怒りを向けられる理由が分からないという雰囲気が伝わってくる。

 そこに嘘は無いと見て取ったのか、纏っていた険しい空気をほんの少しだけ緩めると、ダ=ジィルは唐突に質問を放った。


「カイエン、砂鮫狩りについておまえどう思っている?」

「どうって何だよ、どうって?」

「何でもいい。おまえの目には砂鮫狩りがどう映っているのか、知りたい」


 溜めも遊びもないど直球の問い掛けに、カイエンは困惑したように眉を顰めるが、一切ブレることのないダ=ジィルの視線に根負けしたのか、肩をすくめると指折り数え始めた。


「えーと、俺は砂鮫って生き物を見たことがないから的外れかもしれないけど……船はでかいし、乗ってる奴も結構鍛えられてるみたいだし、砂鮫狩りは凄い奴等だと思ってるぞ」

「本気でそう思っているか?」

「俺、嘘は苦手なんだ」


 打てば響くといった反応で、カイエンは胸を張って言ってのける。何の根拠にもなっていない筈なのだが、この少年が言うとつい納得してしまいそうになる。おそらくは上っ面の言葉だけではなく、その生き方と滲み出る気配に一切の虚飾が無いため、そう感じさせるのだろう。


「……最後にもう一つだけ質問する。ダ=ボルクがおまえに挑む直前、あいつに何を言った?」

「ぶっちゃけ、あんまり憶えていないんだけどな……」


 カイエン自身、特に深い意味を込めたわけでもない言葉を逐一記憶しておく類の人間でないことは、己が誰よりも自覚している。それでもうんうんと唸ってつい先般の記憶を引きずり出すと、曖昧な口調ながら言葉を紡いだ。


「ええっと、確か……霊紋持ちじゃないあいつの実力でも砂鮫って生き物を狩れるなら、霊紋持ちの俺ならきっと倒せると思うとか、そんな類の事を言った気がする」


 はっきり言って枝葉末節はまるで異なるのだが、カイエンの主観からするとそうなる。

 その言葉に、ダ=ジィルは納得がいったという表情で頷いた。


 ダ=ボルクは血気盛んな若者ではあるが身の程知らずではない。霊紋持ちと分かっている相手に無暗に喧嘩を売るとは考えづらい。

 となれば、ダ=ボルクが激昂した時点では、カイエンが霊紋持ちであることはまだ知られていなかったのだろう。


 そして霊紋持ちなどという例外的存在だとは思っていない相手から、お前に狩れる程度の獲物なら俺にだって狩れるなどと告げられれば、挑発と受け取るのが常識的反応なのは間違いない。

 そした言った方は、己が霊紋持ちであることは暗黙の前提であるため、侮辱したという意識に欠けるという寸法である。

 ようやく事の全体像を理解するに至り、ダ=ジィルは長い溜息を吐く。


「はあぁ……理解した。おまえ、砂鮫狩り侮辱していない。勘違いがあっただけと我は断じる」


 そう告げながらも、ダ=ジィルの全身を包む霊紋の輝きは衰える兆候はない。言葉とは裏腹にいや増すばかりの緊張感が、帯電した空気のように満ち溢れている。


「でも、けじめは必要。おまえが謝罪するか、我が敗れるか。この場を治めるにはそのどちらかが必要だ」

「ん? 謝ればいいのか? それならそっちの方が早いだろ。悪かったな、勘違いさせちまったみたいで」


 強い決意を持って言い切ったダ=ジィルであったが、対峙していたはずのカイエンは一切迷う事無く頭を下げた。

 思ってもみなかった反応に、今度こそダ=ジィルは呆気に取られてしまう。周囲の砂鮫狩り達も同様らしく、先程までの勢いはたった一言で腰砕けとなり、甲板上は微妙で中途半端な空気に支配された。

 そんな中、おずおずとダ=ジィルは尋ねる。


「カイエン、謝罪は拒否していたはず。我の記憶違いか?」

「さっきまではどうして謝れって言われてるのか、さっぱり分からなかったからな。でも、俺の言った事で勘違いさせちまったんだろ? 俺に非があるってんなら、頭の一つや二つ、いくらでも下げさせてもらうさ」


 素直なのか天邪鬼なのか甲乙つけがたい言い分である。いや、本人としてはこの上なく筋は通っているのだろうが。

 ともあれ言いたいことを言ってすっきりしたらしいカイエンであったが、しかしこちらも構えを解くことなく、不敵な笑みを浮かべて霊紋の輝きを強める。


「さてと、これで余計な悩み事は片付いただろ。後は俺とあんたのどっちが強いか、白黒決めるだけだぜ」

「おまえ、本当に謎。外の人間の考えていること、ちっとも分からない」


 互いに誤解は解けた。もう戦う意味は無い筈だ。それにも関わらず、カイエンの戦意は一向に衰える気配が無い。

 もはや完全に理解の枠を超えた謎生物を見るような視線を向けるダ=ジィルだったが、それでも彼の発する霊紋の輝きは、カイエンのそれに引きずられ、呼応するかのように高まっていく。

 その集中力はすさまじく、外野から飛んできた「外の人間が全員カイエン君と同じ思考だと思われるだなんて、どっちにとっても迷惑な話ね」という聞こえよがしな呟きも耳をすり抜けていってしまう。


 今この瞬間、理屈ではなく本能が、カイエンとの激突が不可避だと叫んでいるのだ。

 両者の放つ霊紋の圧力が、物質化しそうな程に密度を増していく。次の一合で決着がつくという確信が、抑えきれぬ興奮となって砂上船中に伝播する。霧散しかけていた緊張感が瞬時に凝縮し、甲板の盛り上がりは最高潮に達しようとしていた。


 だがしかし、決着の時は訪れなかった。

 いきなり重々しく生々しい音が聞こえて来たかと思うと、船体が軋みをあげ、砂上船が大きく傾いたのである。


「うおっ、何だってんだ!?」


 咄嗟に足元の甲板に貫手を叩き込み、貫通させた甲板に捕まることで体勢を保持するカイエン。

 踏ん張りきれずに転がって来たヘイを片手で掬い上げると、後を追ってきたリンカも好都合とばかりにカイエンに掴まった。


 そんな彼等の眼前に、この状況を作った原因が姿を現す。ソレは砂の中から飛び出してくると、高々と数メテルは跳び上がり、滑らかな鱗に覆われた流線形の巨躯を見せつけた。

 ガパリと開いた咢に無数の歯が乱立する様は、この生き物が捕食する側であることをいやが応にも理解させる。

 その生き物は空中で大きく身をくねらせたかと思うと、重力に従って砂中に没した。


「砂鮫だっ!! 群れで来たぞ!!」


 さすがは専門家というべきか。甲板の端で砂海を覗き込んだ一人の砂鮫狩りが、よく通る声で警告を発すると、砂鮫狩り達は小指の先ほども浮足立つことなくそれぞれの持ち場へと戻っていった。


「カイエン、決着は預ける。今は砂鮫共の相手が先決」


 決闘の際よりも更に険しい顔つきでダ=ジィルは告げる。有無を言わせぬ物言いで一方的に言い放つと、くるりと敵手へ背を向けた。

 霊紋持ちである以前に、彼は砂鮫狩りなのだ。名誉や決闘よりも砂鮫を優先させるのは、息をするよりも当たり前の話である。


「慌てるな。これしきの攻撃ではこの船は沈まない。船から振り落とされないように注意、鼻面を出した奴から銛で――」


 てきぱきと指示を出していたダ=ジィルの声がふと止まる。

 その理由は彼の視線の先にあった。

 砂上船の甲板の所々に繋ぎ留めてある、様々な物資を収めた木箱。通常は牽引索等で固定されているのだが、先程跳び上がった砂鮫のヒレがかすめていたらしく、破損した固定具からするりと抜け出してしまう。木箱はいまだに大きく傾斜している甲板の上を加速しながら滑り、ちょっとした段差に引っ掛かったかと思うと、その場に勢いよく中身をぶちまけた。

 だが、真に驚くべきはその中身であった。


「きゃあああっ!!」

「ダ=シィフ!?」


 悲鳴と共に木箱の中から、まだ幼い一人の少女が投げ出される。

 目鼻立ちがダ=ジィルと似通っており、彼との血縁関係を伺わせる。事実、少女――ダ=シィフはダ=ジィルの妹であった。この船に乗っているはずのない妹が、突如出現すると同時に投げ出されるというショッキングな光景に、ダ=ジィルの声が悲鳴の色を帯びる。

 大事な妹が修羅場真っ最中の只中に放り出される瞬間を目撃しては、さすがのダ=ジィルも理解が追いつかず放心してしまうのも無理はない。


 しかし無情にも、事態は足を止めた者を置き去りにして転がり続ける。投げ出されたダ=シィフは満足に受け身も取れぬまま、傾いた甲板の上からも放り出されてしまったのだ。

 落下する先は言うまでもなく、獰猛な砂鮫の群れがひしめく砂の海だ。そこに落ちた者の辿る末路など、どう考えても一つしかありえない。


 無惨な光景を思い浮かべてしまい、ダ=ジィルの四肢が恐怖に硬直する。

 その瞬間、ダ=ジィルのすぐ脇を一陣の風が駆け抜けた。

 風の正体はカイエンだ。ダ=シィフが放り出された瞬間、抱えていたヘイを甲板に降ろすと、両手を甲板につけて片膝を立てた奇妙な構えを取っていたのである。


「九鬼顕獄拳、迅鬼の型」


 カイエンが編み出した我流拳法である九鬼顕獄拳。その中でも最速を誇る迅鬼の型でもってロケットスタートを決めたカイエンは、混乱のあまり立ち尽くすダ=ジィルの傍らを一息に駆け抜けると、霊紋持ちの動体視力ですら捉えるのが困難な突進速度そのままに、砂上船の上からその身を躍らせた。


 落下していく少女に空中で追いついたカイエンは、ダ=シィフの片手を掴むと身をよじって方向を修正し、力任せに甲板目掛けて放り投げる。

 後を追って甲板の縁に顔を覗かせたリンカが少女を抱きとめるのを確認すると、カイエンは満足げな笑みを浮かべ、そのまま砂海へと落下した。


 勢いよく巻き上げた砂柱の中、カイエンは集中力を研ぎ澄ます。獲物が落下したことを感知したらしく、砂上船への体当たりを繰り返していた砂鮫達が目標をカイエンに変えたことが、突き刺さってくる殺気によって手に取るように分かる。

 水中と違い、視界がまるできかないのが厄介だが、泣き言を言っても始まらない。これも修行とばかりに、カイエンは全身の霊紋を活性化させると、喰らいつこうとする砂鮫達の気配に注意を払った。

 迂闊に手足の届く間合いに入った瞬間、反転攻勢に出る気満々である。


 と、その時だ。

 カイエンを上下左右に振り回していた砂海の砂が、ぴたりとその動きを止める。

 疑問に思う暇も無く、今度は足元の砂が固まったかと思うと、カイエンを乗せたまま上昇を開始し、ひときわ高い位置へと彼を送り届けたではないか。


「ぺっぺっ、何が起きたんだ、一体?」


 不可思議な体験に目を白黒させたカイエンであったが、砂上船の甲板まで送り届けられれば、そこで待っていた答えに納得させられる。


 眩い程に霊紋を輝かせたダ=ジィルの背後に浮かぶ、さらさらと流れ落ちる砂で構成された人型の幻影。第二階梯の霊紋持ちが能力を発揮する際に、宿した精霊の幻が浮かび上がる、霊像という現象だ。

 その姿から察するに、ダ=ジィルが宿しているのは砂の精霊に違いあるまい。そして本当に砂霊を宿しているのであれば、砂海に落ちたカイエンを掬い上げることなど造作もない。


「カイエン、妹を救ってくれたこと感謝する」


 カイエンが甲板に降り立つと、ダ=ジィルは噛み締めるように礼を言う。あの瞬間、最悪の想像に囚われてしまったダ=ジィルでは、ダ=シィフが砂海に落下しても咄嗟に対応できなかったことだろう。そうなれば、最悪の想像は最悪の現実となっていたはずだ。


 しかし、決闘の相手だったはずのカイエンが我が身を顧みずに身代わりになってくれたことで、無力な少女を砂鮫の餌に供するという結果は回避され、カイエン自身も正気に戻ったダ=ジィルの能力で回収することがかなった。


 一方、直前まで拳を交えていた相手に感謝の意を表されたカイエンは、ダ=ジィルの御礼の言葉などまるで聞いておらず、その瞳には隠し切れぬ興奮の色を溶かし込んでいた。


「砂を操れるのか。便利だな! もしかして、砂海の上も歩けたりするのか!?」


 予想以上の食い付きっぷりに、ダ=ジィルはやや気圧されるものの、すぐに気を取り直し、


「できる。だが、その話は後だ。今は砂鮫共を片付けさせてくれ」

「おうよ。そういう話なら俺も手伝うぜ」


 霊紋持ち二人が参戦すれば、群れといえども砂鮫に勝ち目はない。

 数分後には、砂上船は勝ち鬨で満たされたのだった。

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