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因果はもつれ、絡み合う3

 夜の港に停泊している交易船を前に、三つの勢力が睨み合っていた。

 一つはこの交易船を預かる船員達だ。寝起きを叩き起こされて不機嫌そうな者や、酒臭い息を吐き出す赤ら顔の者達が、何十人も肩をいからせて立ち塞がっている。


 二つ目の勢力は追捕使であった。こちらは数人しかおらず、どことなく及び腰になっているのが見て取れる。それでも使命感か他の理由からかは分からないが、第三の勢力と船の間に割って入り、ここから先は通すまいとしている。


 その追捕使達に道を塞がれている第三の勢力は、御庭番衆のセイゲツである。おどおどとした態度ながら、一歩も引くことなく船員達やお目付け役の追捕使達と対峙していた。


 つまり、正確には三勢力の睨み合いというより、セイゲツ一人対その他全員という構図であった。それでも、徐々に内圧を高めつつあるセイゲツの発する精霊の気配によって、一見無謀なこの対峙はセイゲツの側に天秤を傾けようとしていた。


「そこをどいてもらえませんかぁ」


 セイゲツの発したお願いとも命令とも取れる一言に、立ち塞がっている者達が震えざわめく。

 そんな中、震える両足を叱咤して声を張り上げたのは、セイゲツの真正面に立つ追捕使達であった。


「セイゲツ殿、いくらなんでも横暴が過ぎます。御庭番衆の名が泣きますよ」

「そうですかぁ。わたくしはむしろ、これ以上ないくらい御庭番衆らしい振る舞いだと思いますよぉ」

「そんな馬鹿な!?」

「あなた方は御庭番衆のことを誤解しているんじゃないですかぁ。わたくし達は清廉潔白な完璧人間なんかじゃありませんよぉ。そんな規格外は、うちの副班長だけで間に合ってますぅ。むしろ、目的を果たすためならば、どんな汚れた手段でも迷わず使う生粋の外道ですのでぇ」


 怯える気配を纏ったまま、自らを貶める様な事すらさらりと言ってのけるセイゲツ。あまりに異様なその在り様に、その場にいる者達は知らず知らずのうちにゴクッと唾を飲みこんでいた。いつの間に噴き出したのか、冷や汗が止まらない額を袖で拭う。


「というわけで、これ以上わたくしの前に立つのであれば、容赦なく排除致しますよぉ。命の惜しい方は、さっさと逃げちゃってくださいねぇ」


 ビクつきながら物騒な最後通告を発すると、セイゲツはゆっくりと鉄扇を構えた。その背後に浮かび上がった揺らめく水の霊像が、告げられた言葉が真実であると何よりも雄弁に物語っている。


 船員も追捕使も、まるで魅入られたように一歩も動けず、セイゲツが港の水面から汲み出した水が刃の形状を取り、徐々にその体積を増していくのを凝視することしかできない。

 十分な量の水を確保したセイゲツがおもむろに鉄扇を振り下ろすと、道幅一杯に広がるほどの巨大な水刃が躊躇なく放たれ――


「待たれよっ、セイゲツ殿ッ!」


 立ち塞がる肉の壁が上下二つに泣き別れるその寸前、割り込むように放たれた制止の呼びかけによって、薄皮一枚で踏み止まった。


「あー、もう追いついちゃいましたかぁ」


 残念そうに呟いて振り返る。セイゲツが視線を外した瞬間、水の刃は瞬時に形を崩すと、大量の水となって船員や追捕使に降り注いだ。


 彼等は揃って肌を刺す冷たさに正気を取り戻すと、今まさに死にかけていたことに気付いてヘナヘナと腰を抜かす。

 そんな情けない連中のことなどさっさと意識から外し、セイゲツは大量殺人を寸前で食い止めた功労者に視線を向けた。


「ガクシン隊長ですかぁ。まあ、わたくしを止めるつもりならば、他に選択肢はありませんからねぇ」


 その呟きには一切の驕りは無い。

 第二階梯の霊紋持ちであるセイゲツを真っ向から敵に回して抑え込もうとするのであれば、必然、第二階梯の霊紋持ちをぶつける必要がある。そして、東都において公に認められた第二階梯の霊紋使いはただ一人、ガクシンのみというだけの話だ。


 一方のガクシンは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


「セイゲツ殿、この場は引いてもらえませんか。査察が必要なのであれば、後日必ずその場を用意すると、ルントウ所司代は確約されています」

「無理ですよぉ、ここまで来て見逃すだなんてぇ。ガクシン隊長だって根底は現場の方ですからぁ、所司代の提案を受け入れるなんて無理だとわかっているのではぁ?」


 そう言われてはぐうの音も出ず、ガクシンは唇を噛みしめることしか出来なかった。

 セイゲツの言葉を誰よりも理解しているのは、他ならぬガクシンなのだ。それでも職務を遂行すべく、酷く重く感じる足を一歩踏み出す。


「セイゲツ殿、せめてこの交易船を怪しいと睨んだ根拠だけでも教えて頂きたい」

「根拠ですかぁ……七割、いや八割は女の勘ですかねぇ」


 セイゲツがぶっちゃけた数字に、腰を抜かしていた者達の表情が引き攣る。女の勘で殺されかけたとあれば、その反応も仕方あるまい。

 その返答に対して、ガクシンは特段の反応を見せることなく、すかさず次の問いを放った。


「では、残り二割は?」

「この船が入港した際、真っ黒な犬の入った檻を見たという情報を耳にしたからですぅ」

「犬、ですか?」


 なぜ犬が根拠になるのか分からない、といった表情で首をかしげるガクシン。さもありなんとセイゲツは頷いた。


「今朝、ガクシン隊長に拳法家カイエンの話を伺った際、カイエンが仔犬を連れていないか訪ねた事は憶えていらっしゃいますかぁ?」

「ああ、言われてみればそのような話がありましたね」

「それがどうしても引っ掛かっていたんですよぉ。情報を集めれば集めるほど、紅巾党とカイエンが衝突した原因がその仔犬だと分かってきましてぇ。でも、たかが犬一頭程度で、紅巾党が街中で事件を起こすのはあまりに不自然ですぅ。そうは思いませんかぁ?」

「それは……確かに……」


 紅巾党関連の案件は御庭番衆の専任案件だったため把握していなかったが、改めて言葉にされると確かに異常な理由と言えた。正直、カイエンについては行動が読めないので、犬一頭が原因で暴れたとしても納得はできるのだが、紅巾党まで出張ってくるとなると話は変わる。


 紅巾党が血眼になって求めたという仔犬。そこから導かれる単純な回答は、


「その仔犬が特別な存在だと睨んでいるわけですか」

「仮説ですけどねぇ。でも、確かめる価値のある仮説だとは思っていますよぉ。そして、この港で荷物の運搬を請け負っている人足の方から、紅巾党が追っている仔犬とよく似た犬の入った檻が、この船の荷の中にあったという話を聞いたんですぅ」


 そしてセイゲツは、この交易船が紅巾党に関わっていると睨み、電撃的な査察を強行しようと画策したというわけであった。

 一応の根拠はあるようだが、はっきり言って見切り捜査もいいところである。ガクシンがそう指摘すると、セイゲツはきょとんとした表情で問い返して来た。


「だから、八割は勘だって言いましたよねぇ? それに、確証が無いから直接調べて確認するんですよぉ」


 何を当然といった風のセイゲツの言葉に、ガクシンはようやく理解する。セイゲツにとっては、紅巾党を捕まえることだけが目的であり、それ以外の要素は些事に過ぎないのだと。


 東都にとって不都合かどうかなど関係無い。目的のためならば、その他一切を犠牲にしても顧みることは無い。なるほど、セイゲツが自身を指して外道と呼ぶのも頷けるというものだ。


 そしてそれは同時に、ガクシンとは決して相容れないという宣言でもあった。


「セイゲツ殿、申し訳ないが貴殿の査察を容認することはできない。ルントウ所司代の命令もあるが、この東都を守る一人の追捕使として、他者を踏みつけにするそのやり方は否定させて頂く」


 背負っていた大槌を抜き放ち、その先端をピタリと向けてガクシンは告げる。対するセイゲツは、両の瞳から涙を溢れさせた。


「そんなぁ、ガクシン隊長ならきっと理解してくれると信じていたのに……」

「皇国へ向けるあなたの忠義の篤さは疑いようが無い。その点に関しては尊敬すら覚えますよ。しかし、私にとってこの東都は、あなたにとっての皇国と同等以上に守るべき場所なのです。あなたのやり方が東都の未来に禍根を残しかねない以上、その危険を取り除くのが私の役目だ」


 相手の目を真正面から見据え、毅然とした態度で言い放つ。

 どこまでも正々堂々を貫くガクシンの宣戦布告と共に、夜の東都に霊紋持ち同士の戦いの華が咲き乱れた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 典型的な付喪霊持ちであるガクシンの戦い方は、非常にシンプルだ。

 接近して叩き潰す。言葉にすればそれだけでしかない。

 追捕使の隊長と御庭番衆の激突という、通常ではまず考えられないカードであってもそれは変わらなかった。


 先手必勝とばかりに、ガクシンは大上段に振り上げた大槌を叩きつける。

 それに対し、防御にまわったセイゲツは水球を生み出して迎撃する。カイエンの拳撃を防いだ時と異なるのは、あの時は無数に生み出されていた水球が今回は一つのみで、代わりにそのサイズが十倍はあろうかというほど巨大だったことである。

 強力な攻撃に対しては、防御も一点に集中させるというわけだ。

 霊紋持ちの誇る矛と盾が衝突し、衝撃の余波が逃げ遅れた一般人を薙ぎ倒す。


「ぬんっ!!」

「うわわぁ!?」


 果たして、槌と水の激突はガクシンに軍配が上がった。

 振り下ろされた大槌を水球が受け止めたのはほんの一瞬だけで、勢いと質量に任せた鉄塊はあっさりと水の防御を突破してしまったのだ。


 とはいえセイゲツも、ロザン皇国にその名を轟かせる御庭番衆である。水球が持ちこたえた一瞬の隙に、ガクシンの間合いの外へと素早く離脱していた。結果として、振り下ろされた大槌が地面に大穴を穿つと、粉砕された水球の成れの果てが降り注ぎ、あっという間にちょっとした小池が誕生することとなった。


「うーん、やっぱり力勝負だと分が悪いですよねぇ……」


 頬に手を当て、肩を落としながら悲し気に呟くセイゲツ。だがこれは、予想通りの結果でもあった。

 元素霊と付喪霊の霊紋持ち同士が真っ向からぶつかり合った場合、付喪霊に分があるのは基本中の基本である。

 それなのにわざわざ初手で力比べを選択したのは、搦め手を放つ隙が無かったことに加えて、ガクシンの力量を見定めることが目的であった。


「分かっていたことではあるんですけど、やっぱり強いですね、ガクシン隊長はぁ……」


 彼女がこれまで積み上げてきた戦闘経験に照らしてみても、間違いなく上位に入る腕前だ。気を抜けばやられる、どころか、まともな戦闘であれば間違いなく相手の方が一枚上手である。


 ならばまともに戦わなければいい。セイゲツの宿す水の精霊は典型的な元素霊だ。間接攻撃と搦め手ならば、逆にセイゲツの方が一枚上手だと自信を持って断言できる。

 そしてなにより、東都という土地がセイゲツの大きな味方であった。


 追撃をかけようとするガクシンの気配を敏感に察し、セイゲツは迷わず運河に向かって身を躍らせた。

 無論、目測を誤ったわけではない。ガクシンからは攻撃できず、セイゲツからは攻撃できる場所。そこへ陣取るための一手である。


「おい、何だ、アレはっ?」


 真っ先に異変に気付いたのは、固唾を飲んで超人同士の戦いを見守っていた交易船の船員だった。

 夜闇の中、セイゲツが飛び込んだあたりの水面で何かが蠢いたのだ。


 慌てて指向性の高い照明光を向ける。

 まさにそのタイミングで、水面が一気に盛り上がった。

 まるで蛇が鎌首をもたげるように、大量の水が人々の視線の高さを越えて立ち上がる。

 波のような一時的な現象ではなく、水そのものが意思を持って立ち上がったかのようだ。


 そして何よりも驚くべきは、水の大蛇とも呼ぶべき存在の上に、運河へ身を投げたはずのセイゲツが全身を明滅させながら凛と立っていることだった。

 これも霊紋の成せる技だ。水霊を宿すセイゲツにとって、水の上に立つなど造作も無い。それどころか運河の水を直接操作することで、自身の霊紋だけでは生み出せないような大量の水を操ることすら可能としていた。


「なるほど、セイゲツ殿の宿しているのは水霊でしたね。あなたがこの街に派遣された理由に得心がいきましたよ」


 周囲が騒然とする中、ただ一人冷静さを保っている人物――ガクシンの声が足元から響く。

 視線を向けてみれば、驚き、困惑し、恐怖する者達の中にあって、ガクシンだけが静かにセイゲツを見据えていた。その双眸からは、内に秘められた燃え盛る熱意が、気迫となって放出される。


「確かにセイゲツ殿は、この街と相性が良いようだ。それだけ大量の水を制御する能力は、正直に言って驚嘆させられます」


 しかし、とガクシンは大槌を握る手に力を込める。

 全開で稼働する霊紋が光を強め、ガクシンの身体が真昼の太陽のように輝く。


「だからと言って諦めるほど、私は物分かりが良くは無い!」


 ガクシンが吠え、水の大蛇に向かって吶喊する。対してセイゲツが鉄扇を振るえば、水の大蛇は全身の鱗を逆立たせたかと思うと、発条仕掛けのようにそれを射出した。


 正確にはそれらは鱗ではない。鱗の形に圧縮された水だ。水とはいえ、高速で射出されれば人体に風穴を開ける程度は造作も無い。加えて面で制圧するように放たれた鱗には隙間が無く、ガクシンが身を躱すのは絶望的かに思われた。


 しかし、ガクシンは慌てず騒がず、両手に構えた大槌を高速で振るう。その速度は目で追うことすら困難なほどだ。

 振るわれた大槌は迫りくる鱗の雨を薙ぎ払い、打ち払い、消し飛ばす。


 通常、大槌のような重量物を振り回せば、その慣性に引きずられてしまい、切り返す際には大なり小なりの遅れが生じる。しかし、槌の精霊を宿すガクシンは、己に対してのみ大槌の重量をゼロに軽減することを可能としていた。それゆえ切り返しには一切の停滞が無く、迎撃網に隙間を生じさせることはない。


 その結果、数百どころか数千は放たれたであろう鱗の雨がおさまった時、そこには傷一つないガクシンの姿があった。


「まさか、あれを防ぎきるなんてぇ……」


 さすがのセイゲツも、予想外の光景に目を丸くしてしまう。

 攻撃の手が緩んだその機を逃さず、ガクシンは目の前の大蛇の胴体に向け、全力で大槌を打ち込んだ。筆舌に尽くしがたい衝撃が水で構成された身体の中を駆け巡り、一拍置いて内側から破裂し砕け散る。


 周囲から歓声が上がるが、ガクシンはそれに惑わされることなく、ただひたすらにセイゲツの動きだけを追っていた。

 そのおかげか、形状を保てず崩壊していく大蛇の頭の上から退避せんとする影を見咎める。そうと認識した瞬間、ガクシンは地を蹴りセイゲツへと躍りかかった。


 しかし、敵もさるもの。ガクシンが迫ってくることを察知したのか、いち早く運河の上へ退避してしまう。

 水霊を宿していない身では、水面を足場とすることは不可能だ。ガクシンの攻撃範囲が大槌の届くところまでと考えれば、運河の上はセイゲツにのみ許された安全地帯と言える。


 だが、ガクシンはそんなセイゲツの思惑などお構いなしに、運河の中ほどに立つセイゲツに向かって踏み切った。


「嘘でしょぉ!?」


 まさか自分から死地に飛び込んでくるとは思わず、思わず素っ頓狂な声を上げてしまうセイゲツ。あまりに意表を突かれたためか、驚愕のあまり回避を忘れて見入ってしまう。


 そんなセイゲツへと迫るガクシンの攻撃は、外した後の事など微塵も考えていないと言わんばかりの全力の一撃だ。生半可な防御など薄紙一枚程度の役にも立たないと、セイゲツの生存本能が全力で警鐘を鳴らす。

 そのおかげか、大槌が直撃する寸前になってようやくセイゲツは我に返った。


「間に、あってぇ……」


 もはや身を躱すことは不可能に近いが、それでも咄嗟に技を放つ。防御や迎撃をしてくるのであれば、それごと食い破るまでとガクシンは大槌を振り下ろし――見事に空を切った。


 そのカラクリを、ガクシンはしかと見届けていた。あの瞬間、回避しても間に合わず、防御では抜かれてしまうと察したセイゲツは、迷うことなく自分自身を攻撃したのだ。

 運河の中から放たれた高圧水流によって、セイゲツは小さくないダメージを負いながらも、致命傷に至るであろうガクシンの攻撃を回避してのけたのである。


 さらにセイゲツは、ガクシンが運河に着水した瞬間を狙って攻撃せんと身構える。

 だが、次の瞬間、そこに居合わせた者達が目撃したのは、理不尽なまでの力技だった。


 どぱんっ!!


 破裂音が鼓膜に響く。空振りしたはずのガクシンの大槌が、勢いを失うことなく水面に叩き付けられたのだ。

 その威力は水面にすら直径十メートル近い大穴を穿ち、眼前に河底が露出する。ガクシンはその河底に軽やかに着地すると、押しのけた水が穴を埋めるより早く跳躍し、無事に地上へと帰還してみせた。


 常人では目で追うことすら困難、そして理解の及ばぬ駆け引きを演じ、両者は地上と運河から睨み合った。

 凝縮された精霊の気配が中間地点でせめぎ合い、目には見えぬ火花を散らし合う。

 密度を増す緊張感がいよいよ飽和状態に達し、弾けそうになったその時である。


 ずんっ!


 夜闇の中から巨大な何かが舞い降りた。

 闇に溶け込むような黒々としたその乱入者は、睨み合うセイゲツとガクシンのちょうど中間にあった交易船の甲板に着地する。


 爛々と輝く両の眼、しなやかでありながら強靭さを感じさせる四肢、流れる毛並みは深い艶を放つ漆黒。

 口の端から僅かに牙を垣間見せ、威嚇するように低く唸るその姿は、一見すれば犬か狼のようにも見えるが、尻尾も含めれば五メテルにも達しようかという巨体が、その可能性を否定する。

 明らかにただの獣ではありえないその威容。当てはまる可能性は一つしかない。


「まさか……霊獣だと!?」


 誰かが思わず漏らした呟きを肯定するかのように、巨獣の咆哮が響き渡った。

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