表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BOOK DIVER  作者: 手衣我
8/10

「話は終わったか?」


一服を終えたらしく、そう話す店長からは少しタバコの臭いがした。


「終わったよ、優。それでね、栞お姉ちゃんから提案なんだけど・・・」


アリスちゃんはさっき私が提案した内容を説明する。それを聞いた店長は「へぇ・・・」と一言呟き、じっと私を見つめる。静かに見つめるその揺らぎの無い瞳はまるで作り物のようで美しく感じた。


「なるほど・・・分かった、そいつでいってみようか」


「えっ!?」


すんなりと私の案が採用されてしまい、思わず声を上げてしまう。


「あの、いいんですか?私みたいな素人の意見で」


「素人も玄人ないさ。今この中で君が一番冷静にこの本を見ることができてる。それで理由は充分さ」


ストレートにそう言われたので、少し照れてしまう。


「それじゃあ仕切り直しとするか。悪いが橘さんにはもう少し付き合ってもらうよ」


立ち上がり身支度を始める店長。アリスちゃんも橘さんに声を掛け立ち上がる。

何が始まるのだろうと私も一緒に立ち上がって見守っていると、店長はさっき私が取り外したブックカバーを拾い上げ、そのまま私が提案した単行本5巻にブックカバーをかける。ただそれだけのありふれた行動だったが、その本は何か意味を持つかのようにうっすらと光りだした。

目的のシーンがあるページを開き、間に栞を挟み込むと準備が完了したようで、店長は私に問いかける。


「さて・・・俺達は今から行くが、君はどうする?」


「私も・・・行って良いんでしょうか?」


「君が今回の作戦の立案者さ。その権利がある。君が行きたいというなら止めることはできないさ」


そう言って店長は私の返答を待っている。他の2人をチラっと見ると、アリスちゃんは私が次に何を言うのか分かってみるみたいで、ニコニコと笑顔を向けてくる。橘さんも特に異論はなさそうだ。


ほんの1,2週間前に意を決してアルバイトを始めた私だったが、さらにこんな選択を迫られるとはあの頃の私には想像できなかっただろう。

ただ前と決定的に違うのは不安などは無く、子供の頃によく感じていた純粋な好奇心で胸の中は一杯だった。


「私も行きます!連れていって下さい!」


その言葉を聞いてニッと笑う店長。ポンと私の肩を叩いて、本の中に入る手順を説明し始めた。


「いいか?別に大したことはない。こんな簡単ことは誰にでもできる。そこのちびっ子でもできることだ」


「ちょっと!それ誰のこと!?」


むくれる姿も可愛らしさのせいかあまり迫力がないアリスちゃん。どうやら店長に言われたことが気に障ったのだろうか、まず最初にお手本を見せてくれるらしい。


「じゃあ()()()()のあたしがお手本を見せるから、よ〜く見ててね、お姉ちゃん。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ