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BOOK DIVER  作者: 手衣我
5/10

店の中へ不法侵入、もといお邪魔すると予想通り薄暗い空間が広がっていた。

スマホの明かりを頼りに周りを見渡すと、入り口近くにキッチン、奥には茶の間と2階へ続く階段が確認でき、そのどちらにも人の気配が感じられなかった。


(早く終わらせて帰ろう・・・)


家具や雑貨に触れ、動いてしまえば住人に余計な気を使わせてしまうと思った私は、それはもう慎重な足捌きで部屋を進んでいく。

何とか部屋の奥の扉にたどり着き、さらにその先のレジカウンターでお目当てのプリントを見つけた。


(あぁ、これでやっと帰れる)


作戦を完遂し、やって来た道のりを戻る。このまま無事に帰れば、ちょっとした冒険で終わっていただろう。

だけど、行く時と同じように慎重に歩いてきたつもりだったが、目的の物を見つけて安堵し、どこかで油断していたのだろう。茶の間に中央に鎮座するちゃぶ台に思い切り足をぶつけてしまう。


鋭い痛みに声を上げそうになりながらも、何とかちゃぶ台を元の位置に戻し終えると、1冊の本が畳の上に落ちているのが目に入った。足をぶつけた際にちゃぶ台の上から落ちたのだろう。


(・・・何だろ、この本?)


普通であれば、気にせず元の場所に戻すだけなのだが、私は妙にその本が気になった。

ブックカバーがかけられた、その本はさっきのスマホの明かりに反応したかのように、薄暗い中ぼんやりと輝いていたからだ。

ペラペラとめくって中身を確認する。本の中身は恋愛漫画だった。


(あ、これ懐かしいなぁ)


数年前に大手漫画雑誌に連載され、人気のあった漫画だったので、もちろん私も結末まで読んだことがある。内容は主人公の女の子と男の子達とのラブコメディで、ベタな内容だけど魅力的なキャラ達だったので、あるキャラには熱狂的なファンができるほどであった。


(でも、ラストは結構批判があったんだよね)


恋愛漫画の宿命で異世界とかでもない限り、ラストは1人の男の子と結ばれなければならない。

問題はその時結ばれたキャラが、人気投票ではあまり奮わなかったキャラだったのだ。


(その辺は作者の匙加減だし、一応メインキャラだったから問題は無いと私は思うけど・・・)


ついつい懐かしさに浸り、暗がりの中ページを読み進めてしまうが、何故かしっくり来ない。記憶の中の内容と目の前にある漫画の内容が一致しないのだ。

本当ならこの場面は主人公の女の子と結ばれるはずの男の子の2人きりのシーンのはずだけど、この漫画では2人はすれ違っている。


「あれ?こんな内容だっけ?」


思わず口に出てしまうが、登場する人物の絵のタッチなどに違和感は全くない。


やっぱり自分の記憶違いだろうか?

それとも、かなり絵が上手いファンが作者に似せて書いた作品?


そう思い表紙の巻数や作者を確認しようとブックカバーを取ると目の前にカッという光が見え、思わず本を落としそうになる。

次の瞬間、私の目の前には非現実的な光景が広がっていた。

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