プロローグ
「はぁ・・・」
私、「本 栞」は悩んでいた。このままでいいのかと。
この溜息も何度目だろうか?
時計の針を見続けるのにも飽き、やり残していた課題も片付け、レジカウンター下で隠れて読んでいた小説も読み終えてしまい、完全にやることが無くなってしまったのだ。
「はぁ~~~・・・」
別に今の状況に不満がある訳でも無い。アルバイトにしては珍しく、お客がいない間の自由行動は認められているし、品出しなどの肉体労働もほとんど無く、やることと言えば、こうしてお客が来るのを待つだけである。
それでいて時給は2000円と破格の値段な理由だから、このバイト先を見つけた私はきっと幸運なのだろう。
だけど人間というのは慣れる生き物であって、バイトを始めて1週間には『退屈』という名の毒がすっかりと体全体に回ってしまっていたのだ。
そう・・・この店には―――
絶望的に客が来ないのだ
春から高校生になり、色々と先立つものが必要になってくる季節。例に漏れず私もお金が必要だった。
名は体を表すと言うように、本が好きだった私はお小遣いのほぼ全てを漫画・小説・絵本などにあてていた。
そんな私は小さい頃には司書さんや本屋さんなんて夢を持っていた。だけど現実は厳しく、司書は就職するには狭き門で、書店は電子書籍や通販の波に飲まれて瀕死の状況。
もちろん高校生にもなって夢を見続ける程、子供でもない。だけど完全に大人というわけでもない私は、何とも言えない気持ちのまま毎日を過ごしていた。
そんな時に見かけたのが、この書店『見返し堂』。
外観は私の年代ではほとんど見なくなった昭和というものだろうか?
店の入り口近くに小さなレジカウンター。
中にはあまり広くない空間にたくさんの本棚と本。
奥にはおそらく生活空間に繋がる?ドアがあるだけだった。
そして店の片隅にはもう何年も貼り替えられていないだろう、『アルバイト募集中』というそっけない言葉が書かれている日に焼けた貼り紙があった。
(怪しい・・・)
第一印象は誰だってそう思う。私だってそう思う。
こんな貼り紙を真に受けて、アポも無しに「アルバイトの面接に来ました」という人がどれだけいるだろうか?
そんな人はどうかしているのだろう。
だけど、先の見えない将来への不安と、どうしようもない現在への反抗心と、思い出から発生した好奇心でどうかしていた私は言ってしまった。
「アルバイトの面接に来ました」