痴漢ごっこだけじゃなくて、シスターごっことかもある。
教室を出て、廊下を歩いていると後ろから声をかけられる。
「たいちゃん、聞いたよ。結局遅刻したって。」
「こんなに良い天気なのに組織の決まりごとに行動を制限されるなんて逆に不自然だと思わないか?」
「寝坊しただけでしょ。」
「うるさいな。大体、お前幼馴染のくせになんで違うクラスなんだよ。幼馴染は同じクラスって相場が決まってるだろーが。」
「わ。でた。たいちゃんって本当自分に都合が良いことばっかり言うよねー。去年一緒だったんだから良いでしょ。」
「まあ、そだな。」
「新しいクラスはどう?可愛い子いた?」
「おー。いたいた。加恋には教えないけどな。」
「大丈夫。私とたいちゃん、オンナの趣味一緒だから見たらわかるよ。」
「めっ!オンナなんて下品な言い方しちゃいけません!」
こいつは、いつからこんななっちゃったんだろ。子供の頃はたいちゃん、たいちゃんってついてきて可愛かったのにな・・・。
「あっ、まゆちゃんからメールだ。」
「また、お前ってやつはよー・・・」
すっ、と俺の耳元に近づいて話す加恋。
こ、こしょばいでしゅ。こしょばい!太一ちゃん、お耳が弱いから!
「あのね、これから電車で痴漢ごっこするんだ。まゆちゃんが、声出しちゃったら負けなの。」
ピシッ!・・・と身体が硬直する俺。
あ、あいつ、もしかして俺の机の中にある”太一の夢ノート”を見やがったな!
彼女が出来たらやりたいことランキング5位の痴漢ごっこをピンポイントで突いてくるなんて!
「加恋!勝手に部屋入るのやめろよな!」
「ん?なんのこと?机が開きっ放しだったことなんて知らないよ?それじゃあ、たいちゃん、またねー。」
「おいっ!ちょっとまて!・・・ったく。しょうがねえ、さっさと帰って愛理んとこ行くか。」
下駄箱に向かって歩いていく。途中ですれ違う友達とまた明日、アディオス、グーテンモルゲン!なんて適当に挨拶なんぞしながら軽快にステップを踏む。
あ、2年B組中年先生だ!
先生ー!田中!田中ですぅ!お疲れ様ですぅ!
今朝方すれ違った小学生達を見習って挨拶する。
「先生、さよーならー!!」
「おい、田中。どこ行くつもりだ。」
「へ?帰りますけど。」
ぐんぐんと近づいてくる中年先生。
え、なになに。怖いんだけど。なになになに?!
「良い度胸だな。軽く注意だけで済まそうと思ったが、お前にもきちんとした指導が必要なようだ。」
「え?え?え?なんのことですか?ちょっと?!」
「私は言ったはずだ。放課後職員室に来なさいと。それをお前は無視して帰るというんだから仕方ないだろう?そんな不良には指導が必要だ。」
ずるずると引きづられていく太一ちゃん。
どなどなどなー。あれ?どうしてこうなった。