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野球部だった奴のギャル好きは異常。

 3時限目、各教科の教科書やらプリントが配られる。たんたんと説明する2年B組中年先生。

 さすがにこれ以上目立つわけにもいかず粛々と傾聴する俺。

 何事もなく終了。


 休み時間、また、さなちゃんの手をにぎにぎして過ごそうと右を向くと、脱兎のごとく教室の外へ逃げ出すさなちゃん。おしょんちゃんかな?お代官さまかな?

 トイレ行こう、と女友達に声かけて連れ立たない所が、また、太一ちゃん的にはポイントアップですよ。はい。

 でも、なんで女子ってあんなにトイレ行く度に友達連れてくんだろう?

 廊下で知り合いに見られた時にどっちがおしょんちゃんかお代官さまか分からなくするため?分身の術ってこと?

 それか、俺たち男子が思ってるよりも実は、女子って厳しい世界で暮らしていて、ひとりでお代官さましてると、これ幸いと個室の上からバケツで水ぶっかけられたりするのが日常茶飯事だったりするのか?

 だから、信頼できる相棒を連れて戦地へ赴いているのか。いわばSP的な?私がうっちゃってる間の頭上は貴女に預けるわ!みたいなこと?


 まあ、なんでもいいか。

 しかし、暇だな。周りの人も皆どっかしらに移動してお話ししてらっしゃる。

 仕方ない、後ろの席の田村改めデンプンとでも話そうと思い振り返るとそこには、半チャーの俺を遥かに超える人気者っぷりを発揮するデンプンの姿が。


 おいおい、オリジナルを超えちゃいかんだろうがチミィ!


「まったく、そうは思わないかい?愛理。」

「うぇえっ?!今度はうち?!」


 大袈裟なリアクションが嬉しい左前の席に座るこいつの名は、浜中愛理はまなかあいり

 去年からのクラスメートで、ウマが合うのか妙に仲良くなった。

 ファッションが大好きらしく、見た目はまんまギャルだ。スタイルの良さに反してあどけなさの残る顔立ちが、太一ちゃん的にはしじょーに高ポイントなのだが、ノリが良すぎるのも考えもので、どうしたって異性の友達感が拭えない。


「そうだよ、愛理。俺にはハナっから君しか見えてないのさ。」

「まったく、よく言うし。あんだけ、早苗ちゃんのこと困らせといて。」

「でも良い仕事したっしょ?」

「まーね、純真無垢な少女のセクハラ被害生映像には思わずうちも、じゅるりってな感じだわ。」


 うっしっし、と悪代官よろしく仄暗い喜びを共有。

 愛理とは、こういう価値観が合うから良いわ〜。


「ところでタイチ、今日ヒマ?またウチの服のモデルやってほしいんだけど。」

「んあ、ヒマ。いいよ。」

「良かった!タイチで試すと評判良いんだー。」

「当然。俺は未来の超一流モデル様だぜぃ?」


 こいつは、将来、自分の服飾ブランドを立ち上げるのが夢なのだ。

 といっても、パリだとかミラノだとかで認められるデザイナーになりたいのではないらしい。

 なんでも、お洒落な自分が作ったりコーディネートした服で世のダサい男や女達をカッコ良くするのが使命だと言っていた。ありがたい話である。

 それもあって、よく俺にモデルを頼む。いや、モデルなんてのもおこがましいか。ただの着せ替え人形だ。


「よっ!日本の童貞平均値!お陰様でさくさく作れてちょー助かってまーす!」

「うるへー!誰が日本の童貞平均値だ!」

「童貞ジャパン日本代表?」

「表現の追求をしている訳じゃない。俺は根源を弾劾してるんだ。」


 なんて、馬鹿話をしてたらさなちゃんが戻ってきた。どうやら、俺を避けてたんじゃなくてガチでトイレだったみたい。あー、良かった。


「さなちゃん、うんちたくさん出た?」

「でででっ!出ません!何言ってるのたいちくん!」

「え、じゃあおしっ・・・あ痛ァァ!!!」


 全力のモミジを背中につけられた。春なのに秋です。


「早苗ちゃんだよね?こいつの言う事なんてまともに取り合わなくて平気だよー。」

「は、浜中さん?」

「そ。うちのことは愛理って呼んでー。早苗ちゃんよろしくね。」

「うん!よろしく愛理ちゃん。」


 じんじんする。めっちゃじんじんする。なにこいつ人の背中にモミジ咲かせて俺のさなちゃんと仲良くなってんだよ。


「早速だけど気を悪くしないで聞いてほしいんだけど早苗ちゃんさ、メガ・・・グエッ!ガバボガボ!」

「ストーップ!愛理!それ以上はストップだ!」


 今日はウェーブのかかったロングヘアを後ろで一本に束ねている。その尻尾を引っ張って口を塞いでやった。

 まったく遊びを知らないというのは、こいつの悪い癖だぜ。


 ええ?!ええ?!大丈夫?!大丈夫?!と慌てふためくさなちゃんも大変に乙だが、今はこっちが優先だ。さなちゃんに聞こえないよう話す。


「急になにすんのよ!ウチの頭取れるかと思ったし!」

「馬鹿野郎!さなちゃんに眼鏡のこと指摘しようとしてただろ。」

「え?うん、ちょうどウチのカバンに似合いそうな眼鏡何パターンかあったからフレームあげようかなって・・・。」

「それが大間違いだってんだ、馬鹿野郎!」

「なにがよ!」

「いいか、いわば今はまだ冬だ!このダサさを愛でる冬のサナギなんだよ!お前は季節も考えずなんでもかんでもすぐに孵化させようとし過ぎだ。もっと、皆の中で今のさなちゃんが浸透した春に一気にイメチェンした方が衝撃がデカイだろうが!ホップしてステップしてからのジャンプだろうが!」

「そ、そっか。確かにもっと泳がせた方がうちのコーディネートの衝撃も大きいか。」


 うむ、わかったならば良し。つーか、愛理めっちゃいい匂いしたな。もっと嗅いどけば良かった。


「大丈夫?愛理ちゃん、なにか言いかけてなかった?メガ?なんとかって。」

「ん?あ、ああ!大丈夫大丈夫!いや、えーっと、その、メガシャキ!メガシャキ飲んだ事あるかな?って聞きたかったんだ!」

「へ?メガシャキ?飲んだことないよー。でも、愛理ちゃんそんな遅くまでなにかを頑張ってるんだ。すごいね。」


 出た!さなちゃんのえへへスマイル!こうかはばつぐんだ!愛理は、自分のついたちっぽけな嘘による罪悪感に押し潰されそうだ!


「でも、あんまり無理しすぎちゃだめだよー。愛理ちゃん。」


 えへへスマイルからの両手つなぎコンボ!いいな!愛理いいな!うらやましい!俺も両手ぎゅっとさなちゃんに包まれたい!そんで手汗を感じたい!ああ、貝になりたい。貝になりたい!

 決めた!決めたぞ!


 俺は、将来さなちゃんのじっとりした両手に籠る蒸し貝になる!

 隣で俺がそんな決意を固めたこともつゆ知らず、どうやら仲良くなったらしい愛理とさなちゃん。

 とりあえず、愛理の両手の上に被さるさなちゃんの両手の上から俺も両手を被せようとした所でチャイムが鳴った。


 ああん、神様のいけず。

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