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【コミカライズ連載中】幼馴染みで悪魔な騎士は、私のことが大嫌い  作者: 編乃肌
終結編

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 悪魔のことが片付き、精霊姫としての役割も終え、私とレイスは王都の教会へ戻ることになった。女王のお力で転送術を掛けてもらうため、帰りも一瞬だ。



「どうかこの先も、そなた等二人が共に在れるよう。数多の精霊達と、惜しみない祝福が訪れることを祈っているよ。またいつか会おう――――レイス、スーリア」



 深々と頭を下げる私達に、女王はそう告げて微笑んだ。

 ウォルもフェイ君と再会の約束をしていたし、私も叶うならまた、女王とお会い出来たらいいと思う。もちろん、その時はレイスも一緒だ。


 そうして私達は聖鐘の森を後にした。

 無事に教会に着いたら、案の定、私の凄惨な姿を見たロア君には卒倒されかけた。


「ど、どうしたのですか、スーリア様!? 聖鐘の森で一体何が……っ!」

「え、えっとね、話すと色々あるのだけれど……」

「お怪我! お怪我はありませんか!? どこか具合の悪いところは!? すぐに医師を呼んで参ります……!」

「落ち着いてロア君! 怪我とかは無いのよ! 本当よ!」

「お着替えもしなくては……ああ、湯あみの準備も! とにかく安静に……! あれもこれもすぐに用意致します!」


 「あれもこれもどれもしなくていいのよ!」という私の静止は届かず、ロア君はバタバタと教会内を奔走していた。

 レイスでさえ呆気にとられる取り乱しっぷりだった。

 

 なお使徒長様の方は、レイスの様子を一目見て、すべての事情を察したようだ。


「お主達が二人一緒に、無事に帰還を果たせて良かった」


 そう言って、彼は白い髭を揺らして柔和な顔立ちを緩めてくれた。

 降り注ぐ春の陽だまりのような笑みは、どことなくアランおじさまを彷彿とさせて、レイスは素直に心からの礼を述べていた。

 

 ……なんだか早く、レイスとアランおじさまを、ちゃんと会わせてあげたくなってしまったわ。

 精霊姫の護衛騎士として私を迎えに来た時は、悪魔のこともあり、碌におじさまと話せていなかっただろうから。おじさまも、レイスのことは気に掛けていた。

 

 だが、護衛騎士としての役目は全うしても、まだ『特権騎士団所属の騎士』であるレイスが、簡単にその地位を捨て、アルルヴェール領へと帰還するわけにはいかない。


 その辺りのことも、私の与り知らぬところで事は進んでいたようだ。


 聖鐘の森から戻って三日後。

 私とレイスは王城に招かれ、我が国の国王様より、直々に労いと褒美を受けることになったのだが。


 その場でレイスは、「なにか望みはあるか」と王に問われた際、騎士位の返還を求めた。予想だにしていなかった発言に私は面食らった。

 しかしながら、その場に控えていた特権騎士団の騎士団長様にも、国王様にも、使徒長様経由ですでに話は通っていたらしく、穏健で知られる当代の我らが王は、「褒美を与える場で、与えた位を返されたのは初めてだ」と喉を鳴らして可笑しそうに笑った。厳つい渋さが魅力的な騎士団長様は、呆れたように肩を竦めていた。

 なんだか私一人が無駄に驚かされた気がするわ。


 そしてそこからまた話は右往左往し、結果的にレイスは騎士のまま、所属だけが変わることになった。

 悪魔憑きでなくとも、まだ若く十分な実力のあるレイスを手放すことは、騎士団全体の損害となる。そう判断され、有事の際は王都への召集に優先的に応じることを条件に、彼は騎士という位は捨てずに、地方の『警備団』に配属変えになったのである。

 その地方というのが、アルルヴェール領だ。


 ナーフ王国の騎士団の中では、最高峰の地位である『特権騎士団』から、常に空きがあり、華やかな職務とは縁遠いド田舎の『警備団』への配属変えは、傍から見れば左遷もいいところだろう。

 国の主要部にあたる大きな街の警備団ならまだしも、基本的に地方の警備団は騎士位が無くとも所属は可能で、騎士見習い止まりの者や、騎士になりたかったが入団試験に通らず、夢破れた者が大半だ。また騎士位はあっても、歳や怪我を理由に前線を退いた者、問題があり出世は見込めない者、一部のあえてそこを選択した変わり者(奇しくもレイスはこれに当たる)が概ね集まる。


 レイスは元より、悪魔への対策のために騎士団入りを選択しただけで、地位や出世に執着は無い。それよりも、自分の育った地であるアルルヴェール領内を守ることを希望し、使徒長様の働き掛けもあって、彼は我が領の警備団入りとなったのだ。


 だが諸々の手続きもあるようですぐにとはいかず、私は先に一人でアルルヴェール領へと帰る運びとなった。


「どうかお元気で、スーリア様」

「ええ。色々とありがとうね、ロア君」

「こちらこそ……短い間でしたが、世話役としてスーリア様のお側につけたこと、誇りに感じます。また王都に来られる際は、是非この教会にお立ち寄りください」


 「いつでも歓迎致します」と言って、ロア君はちょこんと頭を下げた。

 最後まで良い子だった。ボロ切れと化した精霊姫の衣装についても、ロア君が「問題はありません。僕が何とかします!」と胸を張っていたし、本当に可愛いのに頼りになる、末恐ろしい男の子である。


 この癒しともお別れかと思うと寂しく、ついそのサラサラの金髪を撫でくり回せば、ロア君は「わ、わわっ!」と顔を赤くして慌てていた。

 それを眺めていたレイスは、物凄く苦い顔をしていたけど。「拗ねないでよ」と冗談めかして笑えば、無言で顔を反らされてしまった。

 ……もしかして、本当に拗ねていたのかしら?


 去り際には、あの小鳥の姿をした光の精霊達も見送りに来てくれた。何故か、誘拐事件の現場に居た腕章をつけた使徒さん達も、一緒に総出で。

 あの熱の篭った瞳は、やっぱり勘弁して欲しい。


 馬車に揺られ、何事も無く領内に着けば、母様に父様、お手伝いのミイナに暖かく迎えられ、領主様とリンスが主導で祝会まで挙げられた。 

 とても嬉しく有難かったのだけれど、『スーリア=バレット・精霊姫お疲れ様祝会』という題目はどうかと思うの。約束通り、木苺のパイをたらふく食べたウォルが幸せそうだったから、些末な問題といえばそうなのだけど。

 

 一段落すれば、私はレイスの帰還を待ちつつ、相変わらず領主様の屋敷で、使用人見習いとして働く日常へと戻った。



 

 そして――――何事もなく穏やかに時は流れ、半年後。


 


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