バウンティハンター 01
パラレルワールド的なご都合主義が舞台です。
細かいことは気にしないでください。
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太古の昔、人類が文化と文明を築くよりも遥か前には数々の超文明が栄えていた。
そんなおとぎ話や論説が、有識者や学者の間で研究。議論がされている。
時は1800年を過ぎた19世紀初頭。
所は北米大陸。
舞台はボストン。
それは10月の冬に入る前の頃だ。
風は冷たくなり、澄んだ空気は馬や蒸気機関の臭いや音を必要以上に運んでくるようになった。
そして、クァバ・ナァビア・イリアコイはいつものパブで待っていた。
ティータイムはとうに過ぎて夕日が窓から差し込んでいる。
寒さから、本当はバーボンを飲みたい所だが、我慢してエールを飲む。
カウンターの向こうでは、最近流行りだしたカクテルのミキシンググラスをバーテンダーがかき混ぜている。
二杯目を飲み終わろうとしたところで、扉を開けて男が入ってきた。
ありふれたジャケットにハンチング帽を被っている。
顎を覆った立派な髭は珍しくないが、すぐに分かる。
向こうも真っ直ぐこちらに向かって来る。
「バーボンを」そう注文すると隣に座り、顔を寄せてくる。
「居所が分かった。」そう告げると男は出されたショットグラスを飲み干した。
バーテンダーが二杯目を男に注ぎ、水の入ったグラスを置いて離れていく。
一息おいてからクァバは男に話しかけた。
「別の女か?」
「いや、奴には弟が居る。そいつと一緒に南部に行こうとしているらしい。」
「それなら急ぐか。」
男はランベルトという。保釈保証人や賞金稼ぎ等をしているハンターだ。
蓄えた髭と厳つい顔つきに似合わず、繊細できめ細かい仕事をする白人である。
一方のクァバは浅黒く日焼けした肌と、190cmを超える身長。
フィールドジャケットの上からでも一目で分かる逞しく隆々とした筋肉と手足。
くすんだ長い髪は鉛色というより銀色に近く、結っている。
ランベルトは水を半分飲むとクァバに再び顔を寄せる。
「ケンウッド通りのリッチモンドホテルに弟と二人で居る。武装している可能性は低い。3階の部屋で裏口は無い。正面から乗り込む。」
「南部に逃げるつもりなら、あっちの奴らとつながりがあるのか?」
「奴にはその可能性は無いが、弟にはその可能性がある。だから、両方とも生きたまま捕まえたい。」
言い終わるとランベルトはショットグラスを飲み干して立ち上がり、クァバは二人分の代金を払った。
外に繋いでいた馬にそれぞれまたがり、走り出す。ホテルまでは馬で15分もかからない。
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今回の仕事は、ランベルトの所属するギルドが保釈保証人として担当した被告人:コース・イヒャルトという男が逃げたので、捕まえる仕事だ。
コースは酔って傷害事件を起こし逮捕され、拘留中に被害者が病院で死亡して傷害事件から殺人事件に切り替わった。
罪が重くなるのは明らかだった。
コースには女が居た。その女がコースの為に保釈金の担保と手数料を用意して保釈し、せめて裁判まで束の間の時間を過ごそうとした。
だが、コースがバックれたのだ。
女は裏切られ多額の金を失い、女を信用して保釈保証人を担当したギルドは奴を探すこととなった。
そしてランベルトはギルドのメンバーと共に捜索し見つけた。しかも運よく俺たちのテリトリーでだ。
俺とランベルトは別のギルドだが、必要なときは応援として呼ぶことがある。
馬を走らせてホテルの前に着くと馬を繋ぐ。小さいが悪くないホテルだ。黒人とアジア人の使用人が働き、制服も綺麗だ。
奴が行方をくらまして3週間。恐らく弟と合流するために手紙を送り、何処かに身を潜めていたのだろう。
だが、弟と合流してこのホテルにチェックインしたことでランベルトのギルドに情報がリークされたのだ。
俺たちは足早にフロントに向かい、フロントマネージャーの男にIDを見せ、ランベルトがすかさず切り出す。
「このホテルに手配中の男が宿泊しているとの情報ですが間違いありませんか、サー?」
「えぇ、頂いている写真の、この男に間違いないと思います。
同室の男性はご兄弟。ミスター.ディビッドと、ミスター.ベス・トルーマン兄弟と承っています。」
フロントマネージャーはそう言いながら写真と人相書きの手配書を見せて説明した。
「では、こちらで確認と保護を行います。部屋番号と鍵をお貸しください。
また、ホテル内の物品等の破損は全て当ギルドにてお受けしますのでご安心ください、サー。」
ランベルトがそう説明し、書類を一枚手渡すと、フロントマネージャーは直後に鍵をランベルトへ手渡した。
「お部屋は303号室です。」
ランベルトと俺は階段を足早に上がる。ランプの明かりがホテルの中を照らしている。
「なんだってホテルなんか泊まってるのやら。」
「そこまでばれてないと油断してるんだろう。じゃなきゃ偽名で堂々とホテルなんか泊まらないさ。
そもそも罪を犯して、女に金払わして逃げるなんて頭のいい奴はやらないさ。」
俺のボヤキにランベルトが返答する。きっと3週間の潜伏生活の最後に羽を伸ばそうとしたのだろう。
そして、3階に着くと303号室のドアの脇に俺は身を隠し、クラブを手に握る。
ランベルトがこちらを確認するとドアをノックする。
「ミスター.トルーマン。こちら当ホテルのベルマンです。サービスの新聞とコーヒーをお持ちしました。」
「おぉ、気が利くな。抜群なサービスじゃないか。オクラホマのホテルに見習わせたいくらいだ!」
嬉しそうな声を出しながら男の声がドアに近づいてくる。
「だから言ったんだコース。都会の流儀に慣らしておけばこんな事にはならなかったんだ。
もっと紳士的に振る舞って上手くやれば、こういうサービスが当たり前の生活ができたんだ。」
その瞬間、ランベルトは俺に突入の合図をした。俺はすぐさまドアを蹴破り部屋の中に突入する。
ドアの前にいたコースの弟は蹴破った勢いで背中から倒れて一瞬バウンドする。
ベッドにうつ伏せに寝ていた手配犯:コースは驚きのあまり顔だけこちらに向けた。
突入した勢いのまま、ベッドのコースの上に飛び乗りホールドする。
手に持ったクラブは相手の腕に押し当て、動きを封じる。
「いちちちちちいいたいいたいいいたいたいい!!!!!」
コースがわめき始めたので腕を相手の顎に固定し喋れなくさせる。
すると、コースの弟を捕まえたランベルトが部屋の中に入ってくる。
「被告人:コース・イヒャルトと、その弟リック・イヒャルトに間違いないな。
保釈期間超過と逃亡。それとその援助を理由に身柄を拘束し、警察への引き渡しを行う。」
「ムゥーーーーームチーーームーー!!!」
いや、聞いてないなこいつ。




