鍛冶屋再び!! 後に山
到着!
はい。今僕は鍛冶屋の前に来ております。
氷山を攻略し、レベルも上がってきたので、そろそろ初期装備の刀もかえ時だろうということで鍛冶屋にきたのだが。
入りにくい……。
前に来た時の僕の印象は最悪だっただろうしな。
唐突だが、ここで現在の僕のステータスを確認しておこう。
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Lv.28 振り分けPt 0
HP : -
MP : 0《固定》(+0)
ATK:1《固定》
DEF:1《固定》
AGI :62
DEX:110
スキル:【吸収】【不死の炎】【再臨】【絶対零度】
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氷山での戦闘を経てかなりレベルがあがった。ポイントの振り分けはDEX中心でAGIにも少し振ってある。
そして、新しく【絶対零度】のスキルを覚えた。
このゲームではレベルアップボーナスのほかにボスを倒すと稀にスキルを得ることができるらしい。得られるかどうかは種族とスキルの相性で決まるとか。不死鳥はたまたま【絶対零度】を覚えられる種族だったってことだね。
【絶対零度】 スキル発動中のすべてのアクションに氷属性を付与する。
このスキルがどれほど使えるかははっきり言ってわからんね。とりあえず一回使ってみて判断するしかない。まあ、今は街中だから使えないけど。
ステータスについて変わったとこはこれくらいだ。
さて、いつまでもくよくよとしているわけにもいかない。
嫌なことはとっとと済ませてしまおう。
僕は思い切って鍛冶屋の扉をあけた。
「いらっしゃい。」
奥から野太い声がきこえてくる。僕が扉をくぐると、相変わらずいかついドワーフの店主がそこにいた。
「俺の持ってきた素材で武器を作って欲しいんだが。」
ふむ。滑り出しは問題ないな。このまま無難にいこう。
「よし。素材を見せてみろ。」
「OK!!!」
ふむ。何だか無駄にテンションが高い気がするがまあいいだろう。
僕はアイテムボックスからフロストドラゴンの素材をとりだして、店主に渡した。
「ん?見たことがない素材だな。これは何の素材だ?」
「あはーん。よく聞いてくれた。それはフロストドラゴンの素材さっ。」
「フロストドラゴン?」
「氷山FIELDのボスのことさ!」
「氷山?もしやお前、『悪魔の舌』とかいうやつらの一員か?」
「あちゃー。やはりバレテしまったか!確かに俺は『悪魔の舌』の一員さ。だが、このことは他言無用で頼むよ。俺達は正体不明の謎のパンティー…、じゃなくて謎のパーティとして活動したいからね。」
「ああ。わかった。」
まあ、パーティといっても僕一人なんだけどね。というか、僕の口も正体不明路線でいくつもりだったのか。考えが一致して助かったな。口調はかなりアレだが。
「武器の形状はどうする?」
「刀にしてクレオパトラ!」
「そうか、作成に一日かかる。それでもかまわないか?」
「かまわナイトカヌー!」
「そうか、じゃあ明日の昼頃に取りに来てくれ。」
「……分かった。」
鍛冶屋の店主恐るべし。相手にされなさすぎて僕の口がおとなしくなったぞ。
さて、これからどうしようか。
鍛冶屋を後にした僕が今後の行先を考えていると、
チリン。
《高原のフィールドボスの初討伐者が現れました。討伐パーティは「正義の剣」です。》
お、高原のボスが倒されたのか。
そういえば、攻略間近って言ってたな。まあ、僕は行ったことすらないんだけど。
チリン。
ん?まだ何かあるのか?
《プレーヤーによって新たに「安らぎの街」が発見されました。》
ほお。これは興味があるな。はなしの流れ的に新しい街を発見したのは『正義の剣』だろうな。
ということは、安らぎの街は高原の先にあるということか。
ふむ。どうしようか。本当は今すぐ新しい街を目指したいところだが、明日の昼に武器を受け取らないといけないからな…。
よし、決めた。
今日はこの街の周辺の東門、西門以外のフィールドを攻略しよう。
新しい街を目指すのは明日武器を受け取ってからだ。
よし、そうと決まれば急がねば!
ということで、現在僕は南門に来ていた。
ふむ。誰もいない。
南門過疎ってるわー。
東門以外は今のところほとんど使われてないみたいだからなあ。
さて、門をくぐるとお決まりの二択である。
左手に山、右手に砂漠。
山かな。砂漠は氷山と一緒で歩きづらいだろうしね。
よし、そうと決まれば攻略開始!
山は木が生い茂っていて、視界が悪いフィールドだった。
なんだか森に似てるな。
山を登り始めてしばらくすると、木の茂みから黒い影が飛び出してきた。
《Lv.25 マウントフォックス》
姿を現したのは体長2メートルはあるだろう金色の毛並みの狐だった。
お、格下だ。
森のモンスターは氷山のモンスターに比べたら弱そうだな。
よし、一つ実験をしてみよう。
「いくぞ。【絶対零度】!!」
僕は叫んだ。
……。
うん。
気が付けば世界が雪景色に覆われていた。目の前の敵も完全に固まっている。
固まった敵に刀で切りつけてみると、簡単に砕け散った。
ふむ。どういうことだ。【絶対零度】の効果は自分のアクションに氷属性を付与するというものだったはず。なぜ、辺り一面雪景色なんだ…?
ん?
まさか、声か?
僕の叫ぶという行動に氷属性が付与されたのか?
たまげたなぁ。
これじゃあ、フロストドラゴンのブレスそのものじゃないか。
その後も僕は山の敵を利用して【絶対零度】の実験を繰り返した。そのおかげでだんだんとスキルの特性が分かってきた。
まず、この技は同格以上の敵に全く効かない。自分以上の強者との戦闘時にはただのエフェクトに成り下がる。無駄に環境を歪めて迷惑なだけだ。
その一方で自分より格下の相手には絶対の力を持つ。冷気が僅かに敵に触れただけでも固まってしまうほどだ。
この力、はっきり言って超便利だ。しばらくはこの力で道中楽をできるだろう。
だが、一つだけ問題がある、
「ぐぼぼおおおおおおおおお!」
僕は敵の攻撃を受けて近くの木に叩きつけられた。
「ち、畜生。手も足も出ねえ。」
そう、この力による最大の問題は道中の雑魚敵との戦闘時間が極端に短いため、ボス到達時に【再臨】によるステータス上昇があまり行われていないことだ。
僕はいま山のフィールドボスと戦っている。
《Lv.32 マウントカメレオン》
山の主はただひたすら巨大なカメレオンだった。
長い舌を僕に巻き付けては投げる。巻き付けては投げる、ということをひたすら繰り返してくる。
そう、格上の相手に全く歯が立たず、僕は完全におもちゃにされていた。
「この間抜け面が!いつまでも思い通りになるとおもあああああああああ
やめてえええええぇぇぇ!もう投げないでええええええええええぇぇぇ!」
バキッ。
「……。」
チリン。
《山のフィールドボスの初討伐者となりました。フィールドボスの初討伐者が出たことは全プレーヤーに通知されます。討伐者として名前を公開しますか?》
「パーティとしての公開だ。パーティ名は『悪魔の舌』だ。」
《かしこまりました。それでは討伐パーティ『悪魔の舌』で通知されます。》
戦い始めて2時間。
ついにマウントカメレオンが力尽きた。
「なかなかハードな戦いだったぜ。」
はあ。結局時間がかかるんだよなあ。
まあ、戦闘時間短縮について今考えても仕方がないか。
今回は【絶対零度】の特性が分かっただけでも良しとしよう。
攻略も終わったし街に帰るか。明日は新しい街に行くぞ。
気持ちを切り替え、僕は街に向かってゆっくりと歩き出した。
因みに今回の戦闘で僕は【変身】のスキルを得た。
【変身】 自分の外形を僅かに変更できる。
ふふ、どこかで役に立ちそうなスキルだ。