喫茶店!
ハロー。
僕は今喫茶店に来ている。もちろんゲーム内の。
ここはプレイヤー同士が情報交換し、攻略に役立てる場だそうだ。
「お客様。ご注文はお決まりですか?」
「コーヒーを。もちろんブラックで!」
やめろ!僕はカフェオレ人間だぞ!苦いの嫌いなんだぞ!
さて、僕が喫茶店に来た理由は勿論、情報収集だ。
決してつまらないテンプレネタをやりに来たわけではない。
喫茶店内は落ち着いたつくりになっており、いくつものある丸テーブルを複数人で囲み話し合えるようになっている。
そして現在も多くの人々が互いに情報を提供しあっており、話し合いは同じテーブル内だけでなく近くのテーブルの人々を巻き込み、かなり大規模なものになっていた。
因みに僕は人との会話に加われないため、広い喫茶店内の一番端のテーブルに一人で腰をおろし、他の人々の会話に耳をそばだてていた。
僕が口を開くとろくなことにならないからね。
さて、そろそろ聞くのに集中しようか。
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女1: そういえば最近PKが増えてるってマジ?
男1: マジマジ。俺の知り合いも何人か被害にあったってさ。
女2: 怖いですね。
男2: 俺もPKされたわ。
男1: マジ?経験値全損?
男2: ああ。ホント最悪。
男3: 犯人の顔は見たのか?
男2: いや、見れなかった。骸骨の仮面つけてて全身黒のローブで隠してた。
男3: それ《不死の人》じゃね?
女1: 《不死の人》?誰それ?
男3: 知らないのかよ。最近、攻略組20人をまとめてPKしたやつだよ。
女1: なにそれ。《不死の人》ってパーティ名なの?
男3: いや、単独犯らしい。どれだけ攻撃を受けても効かなかったとか。
男4 成程、だから《不死の人》か。というか、攻略組そんなにやられて大丈夫なのか?
女2: あの、一つ質問なのですが攻略組ってどんな人のことを言うんですか?
男4: まあ、簡単にいうと最前線で戦ってるやつらのことだな。このゲームは一度死ぬとLv.1からになっちまうからできるだけ危険は冒さないほうがいい。
そんな中で危険の多い未知のフィールドに挑み続けるやつらを攻略組というのさ。
女1: 今一番有名なのは『正義の剣』と『赤の女帝』かな。
男4: 『正義の剣』は既に荒野の先の高原も攻略間近で、『赤の女帝』は森を突破しその先の沼地に挑んでいるとか。
男3: マジか。次元が違うな。
女2: そういえば、ゲームが始まった直後に森を攻略した非公開の人がいましたよね。
男4: あれは流石に運営のミスだろうな。
森はLv.5近くのモンスターが多すぎて、進むに進めない。今でも森でレベリングできるのは本当に一握りだしな。
男3: かといって荒野のモンスターの経験値じゃLv.3からまったく上がらんし、
もう少しレベル間の経験値差を縮めて欲しいもんだな。
女1: 他には『黒炎』『聖騎士』『次元の狭間』とかが有名だよな。
女2: あの……。『悪魔の舌』は有名じゃないんですか?
女1: ん?そんなのいたっけ?
女2: はい。氷山のボスを倒したとか。
男3: ああ、そう言えばそんな通知が来たな。
男1: てか、氷山ってどこだよ!
男4: 俺も知らんな。
女1: へえ。そんなのがいたのか。通知が発信された時、ログインしてなかったのかな。
男2: 『悪魔の舌』ははっきり言ってよく分からんな。
男4: ああ。
女2: そうですねぇ。
女1: なにはともあれ、強いやつはいいよな。私はいまだに荒野でレベリングだ。
女2: 私もです。
男3: 俺のパーティは今日から森にいくぜ!
男4: そうか。
女1: ふうん。
女2: へえ。
男1: ……。
男3: 反応薄ッ‼‼
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「苦いッ!!」
コーヒーを全て飲み終え、テーブルにお代を置いて席から立ちあがる。
ふむ。既に荒野や森の先まで攻略の手が伸びているのか。
なかなかいい情報がきけたな。
僕はかなり満足して、喫茶店を出た。