氷山で
到着!
はい、突然ですが今僕は西門にきています。理由は簡単。進む場所が分からなくなったからだ。因みに今まで僕が使っていた門は東門だ。他にも北門、南門がある。
東門の先には荒野と森があった。きっとその先にもフィールドがあるのだろうが、森の奥まで行っても進む道が分からなかった。他のプレイヤーを参考にしようにもいまだ僕以外に森を攻略したプレイヤーはいないらしい。
ということで、手っ取り早く新フィールドに行くには別の門から出ればいいという結論に至った。
実際、βテストのときは東門の森までしか攻略できず、他の門は存在すらしなかったということなのでそもそも正しい攻略の順番なんて誰にもわからない。
ふむ、誰もいない。
西門過疎りすぎだろ!
門をくぐると左手に氷山、右手に火山があった。
東門を参考にするなら左手のほうが簡単だな。
うん。氷山にしよ。
しかし、歩き出してすぐに後悔した。痛覚設定を0にしているおかげで寒さは何とか堪えられる。だが、とにかく足場が悪い。雪に足をとられてうまく進めない。
しばらく移動すると氷山で初めての敵に遭遇した。体調3メートルほどの人型のシルエット。しかし、肌の色は水色で頭からは二本の角、背中からは一対の羽が生えている。
《Lv.46 フロストデーモン》
「やばい。このフィールド外れだわ。」
奇遇だな、僕も同意見だ。
フロストデーモンと視線が合った瞬間、敵の姿がぶれる。
気が付いた時には目の前に敵の姿があった。氷を纏った拳をとっさに刀で防ごうとするが、
「なに!」
気が付いた時には刀が宙に舞い、氷に覆われた拳が腹部にめり込んでいた。
体が後方に吹き飛ぶ。
「あれええええええええええぇぇぇ。」
ドサッ。
落ちた場所は氷山のふもとだった。すぐ横に刀も転がっている。
「ちくしょう。あの野郎絶対許さん。ひき肉にしてやる。」
数分後。
先ほどのフロストデーモンを再び視界におさめていた。
「ぐ、今度は先ほどのようにはいかんぞ!」
フロストデーモンと視線が合った。その瞬間、敵の姿がぶれる。
気が付いた時には目の前に敵の姿があった。氷を纏った足蹴りをとっさに刀で防ごうとするが、
「あれ?」
気が付いた時には刀が宙に舞い、氷に覆われた足が顔面にめり込んでいた。
体が後方に吹き飛ぶ。
「あれええええええええええぇぇぇ。」
ドサッ。
落ちた場所はまたも氷山のふもとだった。すぐ横に刀も転がっている。
ぐぬぬ。このままでは勝てないな。
しょうがない、振り分けPtをすべてDEXに振るか。かろうじて動きは見えたけど、防げないんじゃしょうがないしな。
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Lv.10 振り分けPt 0
HP : -
MP : 0《固定》(+0)
ATK:1《固定》
DEF:1《固定》
AGI :51
DEX:85
スキル:【吸収】【不死の炎】【再臨】
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これでよし。確かにレベルは遥かに低いが、本来6項目に振るべきものを2項目に集中させているんだ。少しは渡り合えるだろう。
そして三たびフロストデーモンの前に立つ。今回は刀は抜かない。代わりに黒い革手袋をはめる。
「来いよ青肌野郎。サンドバックにしてやる。」
僕の口が言い放った。
「ぐぅ。」
「ハッ」
「よっ!」
「ブハッ」
そして現在僕は絶賛サンドバックにされ中である。因みに今僕が相手にしているのはフロストデーモン1体ではない。20体以上のモンスターに囲まれてタコ殴りにされている。
氷山に登り始めてすでに5時間経過しているが、いまだに山頂にたどり着けない。
【再臨】の効果で既に一対一どころか二対一でも氷山のモンスターに勝てるほどにステータスは上昇しているのだが、いかんせん敵が多い。この氷山のフィールドは山頂に近づくほどに敵が多くなり、視界にはっきりと山頂を捉えた今、見渡す限り敵、敵、敵である。
「いい加減にしろ貴様ら!これ以上やるというならもうようしゃぶうううううううううううううううぅぅぅぅ。」
それからさらに二時間かけて僕はついに山頂にたどり着いた。
そこにはとんでもなく巨大なドラゴンがいた。
生物というより、氷の彫刻みたいだ。
《Lv.52 フロストドラゴン》
そいつの長い尻尾を見た瞬間僕は悟った。あれはまずい。あの尻尾の一撃をもろに受けたらまた下までおとされてしまう。
またこの山を登るのは勘弁だ。
『オロカナニンゲンヨ、イマスグココヲタチサルガヨイ。サモナケレバシヲクレテヤル!』
ドラゴンってしゃべれるのかよ!まあ、どちらにせよ戦うことに変わりはないのだが。
「頭が高いぞトカゲ野郎!死ぬのはお前のほうだ。」
そう言いながら刀を抜き放つ。
ドラゴンをトカゲ呼ばわりとはさすが僕の口だ。
「まずはこっちから行くぜ!」
そういいながら右手に持っている刀をドラゴンにむかって投てきする。
『ガァッ』
ドラゴンが爪で刀を叩き落とす。
その隙に僕は敵の懐に飛び込む。これで万が一にも尻尾の攻撃を喰らう可能性はなくなった。
僕を串刺しにしようとして繰り出された右爪の一撃を左手一本でうけとめ、その爪をへし折る。
そう、氷山のモンスターの敵意を七時間にもわたり、一身に浴びていたため、【再臨】の効果で僕のステータスはすさまじく跳ね上がっていた。
「ふん。ドラゴン様の爪切り代わりにはなったかな。」
慌てて身を引こうとしたドラゴンの左手を引っ張り、逆に引き寄せる。その勢いのまま腹に膝蹴りを喰らわす。
「さらに一発!」
「さらにもう一発!」
「さらにさらにもう一発!」
「さらにさらにさらにもう一発‼」
五連発の蹴りを喰らって、フロストドラゴンがたまらず翼で空中に逃げる。
『グギイィィ、ユルサン、ユルサンゾ!カトウセイブツのブンザイデ‼』
「いまだに自分のほうが下だと認められないとは、見苦しいな。」
『キエロ、ゴミガーーー‼』
怒号と共にフロストドラゴンの口から絶対零度のブレスが吐き出される。
「消し飛べ、【不死の炎】‼」
頭上に掲げた僕の右手から七色の炎がとき放たれる。
七色の炎と絶対零度のブレスが交わったのは一瞬。次の瞬間には絶対零度のブレスはかき消され、七色の炎がフロストドラゴンを焼き尽くしていた。
『グギャアアアアアアアアアアアア!』
炎が消えた後にはフロストドラゴンが残した素材だけが落ちていた。
毎回、ボス戦あっけなさすぎだな。
「まったく。弱いやつほどギャーギャーとうるさいと言うのは本当だな。」
僕の口が吐き捨てる。
いやいや、戦闘中のおまえ饒舌すぎだろ‼
どの口で言ってんだよ!この口か、この口かーーー‼
……。
僕が素材を拾い、アイテムボックスに突っ込んでいると、
ポーン。
《称号【一匹狼】を手に入れました。これにより一人でもパーティを名乗れるようになりました。》
ふむ。特に使い道はなさそうだな。
チリン。
《氷山のフィールドボスの初討伐者となりました。フィールドボスの初討伐者が出たことは全プレーヤーに通知されます。討伐者として名前を公開しますか?》
「パーティとして名前を公開する。パーティ名は『悪魔の舌』だ。」
ん?
《かしこまりました。それでは討伐パーティ『悪魔の舌』で通知されます。》
んんん?
「了解だ。」
んんんんんんん??????