夢の国
私がシオンやユウジと仲良くなったのは小学校三年生の時。
三人で一緒に兎の飼育係を務めたからだ。それまではただのクラスメイトだった私達が仲良くなったきっかけ。その初日の何気ない会話を私は今でもしっかりと覚えている。
「地球っていうのはさぁ、外見は青くて美しい球体なのに、中身は真っ赤なドロドロ。凶暴なマグマなんだぜ。」
三人で黙々と飼育小屋の床を箒で掃いている時、突然ユウジが語り出した。
「一体なんの話?」
なんの脈絡もなく突然始まった話に私は思わず聞き返していた。
その瞬間、ユウジがニヤリと笑う。まさにその言葉を待っていましたと言わんばかりの笑み。
「外見を綺麗に繕っていても中身はドロドロ。似ているだろう?」
意気揚々と続きを話し出した。
「汚れきった俺たち人間に。」
ドヤ顔だった。
その時のユウジほど清々しいドヤ顔を私は未だに見たことがない。
……は?
ユウジの言葉を聞いた私は呆れて言葉を失っていた。
こいつ、なーに言っちゃってるの?小学生の癖に「俺たち人間に」とか背伸びしすぎなんですけどー。恥ずかしすぎるんですけどー。
これだから年頃の小学生は……。
自分のことを棚に上げ、やれやれと首を横に振る。
しかし、ユウジの言葉を聞き、私とは真逆の反応を示した人物がいた。
「カ、カ、カッケェーーー!」
目を輝かせ、興奮気味に声を上げたのは勿論、飼育係の残り一人、シオンである。
「俺もそういうセリフ言ってみてーーー!」
「ハッハッハ。そうだろう。そうだろう。」
騒ぎ出す男子二人。
……男子しょうもねー!
こんなのがカッコいいと思ってるとか、精神年齢お子ちゃまかよー。
再びやれやれと首を振った私は、
「カナちゃんも一緒にユウジくんからカッコイイ言葉習おうよ。」
満面の笑みで話しかけて来たシオンの頭を、
「黙って早く掃除しなさい。」
パシリと箒の柄で叩いた。
「ギャフン。」
変な声を上げて床にひっくり返るシオンに、
「シ、シオンくん大丈夫か⁉……というか、カナちゃん怖ぇ。」
その様子を見て小屋の隅で震え出すユウジ。
こいつら芸人なの……?
駄目だ、こんな奴らとは絶対に反りが合わない。
コントのようなやり取りを繰り返す二人を横目に、私は黙々と床を掃き続けたのであった。
***************
「ぐぼぉーーーーー!」
紫毛の猫にシオンがあっさりと吹き飛ばされ、地面に突き刺ささるのを私は後方からジト目で見ていた。
あれだけ自信有り気だったのにあっさりと吹き飛ぶ幼馴染。
……。
……ちょっと!何簡単にやられてるのよーーー!
私はシオンへの不満を内心でブチ撒けつつ、
「【紫紺の刃】!」
変わらぬ勢いでこちらに向かってくる紫毛の猫を、紫光を纏わせた長剣で三度斬りつけた。
バリン。
Lv.15しかない紫毛の猫、《パープルキャット》は私が三度斬りつけたことでHPがゼロになったらしく、あっさりと消し飛ぶ。
ふう。取り敢えず、邪魔ものは排除したわ。
あとは巨大熊に見つからないように逃げるだけね。
私がそう思い、巨大熊の様子を伺っていると、
「ふー。やっと頭が抜けた。」
なんとか、自力で地面から頭を引き抜いたシオンが満足気に呟いた。
もう!巨大熊に見つかったら、間違いなく全員やられちゃうっていうのに、どんだけ暢気なのよ……。
私はそんなシオンの元に近づくと、
「あの熊、まだ私たちの存在に気づいていないみたいだわ。バレないうちに逃げましょう。」
小声で提案した。
「ふーむ。確かに新人達を庇いながら戦うのは厳しいな。仕方がない撤退するか。」
シオンが私の提案に渋々と言った感じで頷く。
……いや、新人達がいなくても戦うのは厳しいと思うけど。
と思ったが、敢えて口に出すような真似はしない。
シオンがやたらとビッグマウスなのは今に始まったことじゃない。
私は背後の新人達にも、
「静かに逃げるわよ。」
小さく声を掛けて、撤退の方針を伝えた。
そのまま、巨大熊に背を向けて、5人で広間を出て行こうとするが、
《待て。貴様ら何処へ行くつもりだ?》
重々しい声が背後から掛けられる。
この声は……。
私が恐る恐る背後を振り返ると、
巨大熊がこちらに向かってゆっくりと歩を進めてきていた。
《キンググリズリー》。
思わず見上げてしまうほどに超巨大な二足歩行をする熊。
筋肉隆々の手足に、厚い胸板。鍛え抜かれたアスリートのように引き締まったその体についている顔は、予想に反して、マスコット並みの可愛いさを誇る。
こいつ……なんて威圧感なの。
こんなの相手に勝つなんて絶対無理だわ。
「早く逃げましょう!」
巨大熊の脅威を改めて認識した私が、皆に声を掛け、再び広間の出口に向かおうとするが、
《何処へ行くつもりだと訊いているだろう!》
いつの間にか、巨大熊が広間の出口前に出現していた。
嘘⁉いつの間に⁇
突然、出現した巨大熊に驚いた私が、その場に足を止めて、先程まで巨大熊がいた場所を振り返るが、当然のようにそこには既に何者の影もない。
一瞬で30メートルほど近くを移動したというの?速すぎる。
出口も完全に塞がれてしまったし、どうすればいいの……。
私が新人達を背後に庇いながら、これからどうすればいいか迷っていると、
「カナ!新人達は任せたぞ!」
肩を並べ立っていたシオンが突然、巨大熊に向かって走り出した。
「ちょっと、待って!」
私が慌てて止めようとするが、間に合わない。
私の目に映らないほどの速さに加速したシオンが、
「どりゃっ!」
大ジャンプをし、巨大熊の顔面に飛びついた。
え?何してるの?
驚く私の目の前で、
《な、なんだ貴様!離れんかーーー!》
巨大熊が何度も首を振ってシオンを振り落とそうとする。
しかし、両手両足でしっかりと巨大熊の頭をホールドしたシオンは簡単には振り落とせない。
《こら、離れんか!》
「絶対に離さん!」
突然始まった、シオンと巨大熊の攻防。思わず、その様子に目を奪われていた私だったが、
「おい、カナ!今の内に新人達を連れて逃げろ!こいつを倒す為の応援を外から連れてきてくれ!」
シオンの言葉でハッと我に帰る。
そうだ。折角、シオンが体を張って作ってくれた機会。今の内に新人達を逃がさないと。
そう思った私は、
「ケイタ!リナ!ケイスケ!私の後について来て!」
新人達を連れて、争うシオンと巨大熊の真横を通り過ぎると、そのまま広間の出口を突破した。
背後を振り返らず、祠の出口まで一気に辿り着いた私は、
待っててね、シオン。すぐに応援を連れてくるから。
応援を呼ぶ為に、不甲斐ない街を目指した。
***************
カナ達は無事逃げたか。
僕がそう思った刹那、
「うお⁉」
熊が僕の首元を右手で掴み、一気に顔面から引き離した。
そのまま、思いっきり空中に投げられる。
「どひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
空中でぐるぐると体が回転し、視界が反転するが、
「いよっ。」
体を捻ってなんとかバランスを取り戻した僕は、足から地面に着地することに成功した。
……危ない。かなり力を入れてしがみついていたのにあっさり引き剥がされてしまった。とんでもない馬鹿力だな。
僕が両手をブラブラさせていると、
《貴様!よくもこの私の雄々しい顔に気安く触れてくれたな!》
怒り心頭と言った感じで巨大熊が怒鳴りつけてくる。
ひぃーーー。こぇーー。
僕がそのあまりの迫力に内心でビビりまくっていると、
「くっくっく。ひーひっひっひ。」
突然、僕の口が狂ったように笑い出す。
ぎょぎょっ……何事だ?
いきなりの笑い声に驚いて固まる僕と巨大熊。そんな僕らの様子を意に介さず、僕の口は笑い続ける。
「お前の顔が雄々しいって……そんなマスコットみたいな可愛い顔してよく言うぜ。ギャーハッハッハー!」
《……。》
……。
……そ、そこかぁ。言われてみれば、確かに可愛らしい顔をしているが、そんな笑うほどか?
僕が首を捻っていると、
ブチリ。
巨大熊の方から血管が切れるような物凄い音がした。
……あれ?もしかして、滅茶苦茶怒ってる?
僕がそう思った瞬間、
《貴様、許せん!この私の顔を可愛いらしいなどと言うなぁぁぁぁぁ!》
巨大熊が一気に距離を詰め、右手の爪を叩きつけて来た。
うを⁉危ない!
それをバックステップを踏むことで間一髪避ける。
そこから、さらにバックステップを踏んで距離をとろうとする僕に、
《逃さん!》
ブンッ。ブンッ。ブンッ。
巨大熊が左右の爪を交互に振り回し、追い打ちをかけてくる。
「おっ。よっ。とっ。」
それら全ての技を体を何度も捻ることで搔い潜った僕は、爪を大振りしてできた隙に連続して拳を叩き込んだ。
ズダダダ……。
しかし、巨大熊の体に全くダメージを与えることができない。
巨大熊と僕。スピードで上回っているのは間違いなく僕の方。しかし、攻撃力がなくて、相手を傷つけることができない。
技を当てることができない巨大熊と技を当てることはできるがダメージを与えられない僕。
うーむ。いきなりの膠着状態か。カナが応援を連れてくるまで避け続けるのは流石にだるいよなぁ。
そう思いつつも、僕は敵の技を避け続けた。
避け続けて、
避け続けて、
避け続けた。
そして、避け続けること1時間。
うーん。まだ、応援は来ないのか。
未だ、カナが応援を連れてくる様子はない。
まぁ、このレベルの敵と戦える人々を集めるにはそれなりに時間がかかるか。
そう思い、僕はそれから更に敵の技を避け続けた。
避け続けて、
避け続けて、
避け続けた。
そして、避け続けることまた1時間。
う、うーん。まだ、応援は来ないのか。
未だ、カナが応援を連れてくる様子はない。
ま、まぁ。このレベルの敵と戦える人々を集めるにはそれなりに時間がかかるか……。
しかし、そろそろ来るだろう。
そう思い、僕はそれから更に更に敵の技を避け続けた。
避け続けて、
避け続けて、
避け続けた。
そして、避け続けることまたまた1時間。
……。
「……。」
……。
「……。」
……。
「……いや、遅すぎだろーーーー!!」
僕は繰り出された巨大熊の右爪の一撃を躱し、その懐に飛び込むと、
「どりゃぁーーーーーーー!!!【漆黒の炎】‼」
地面を強く蹴って巨大熊の顔下まで飛び上がり、黒い炎を纏わせた拳で渾身のアッパーを放った。
ズガン。
辺りに鈍い音が響き、
《ぐうぉぉぉぉぉぉぉぉ‼》
巨大熊が後方に大きく吹き飛ぶ。
ズガガガーーーーン。
巨体が物凄い勢いで壁に衝突し、広間内が震えた。
「うーん、よく飛ぶなぁ。ホームラン。」
その様子を見て満足気に呟く僕の口。
……カナが応援を連れてくるのが遅すぎる所為で、【再臨】のステータス上昇が完全に《キンググリズリー》を上回ってしまったじゃないか。
戦闘開始から3時間が経過した頃、僕と巨大熊の力関係は既に逆転していた。
というか、応援を呼ぶのに3時間も掛かるなんて何かトラブルでもあったのかな?
僕が首を傾げつつ、巨大熊の元に近づいていこうとした時だった。
「ユウジーーーーー!!!!応援を連れてきたわよ‼」
広間内に大きな女性の声が木霊する。
カナの声だ。
僕は声を発した人物を一瞬で理解すると共に、
……そういえば、僕はユウジを演じていたんだった。
自らの役割を思い出したのだった。
****************
思ったより遅くなっちゃった。シオン、まだ無事かな……?
私は祠の広間に続く一本道を全力で走っていた。
背後からは『夢の国』の全戦力と、銀色の甲冑を着た100人ほどの集団がついてくる。
《キンググリズリー》。
まさか、あの巨大熊が三星不動明王の一体だったなんて……。
その名前を出しただけで、ほぼ全ての人々から協力を断られた。
『夢の国』のメンバー以外で力を貸すと言ってくれたパーティは唯一つだけ。
銀色の甲冑集団、『虎穴』。
不甲斐ない街を奔走すること2時間超。やっと見つけた協力者。
せっかく応援を呼んできたんだから、
無事でいてよね、シオン!
気がつくと、もう広間までは残り100メートルもなかった。
私はその距離を一気に走破し、広間に飛び込むと精一杯の声で叫んだ。
「ユウジーーーーー!!!!応援を連れてきたわよ‼」
自分の声が広間内に木霊するのが分かる。
肺の中の空気全てを使って声を張り上げた私が、急いで視線を上げると、
「おーい、カナ。遅すぎだぞー。」
広間内には信じられない光景が広がっていた。
……どういう展開???
私だけでなく、続いて広間内に入ってきた『夢の国』と『虎穴』のプレイヤー達も状況を理解できず、固まっている。
絶対的強者である筈の巨大熊、《キンググリズリー》が壁際に倒れていた。
崩れた壁の破片がその巨体の上に山積している。
そして、そこから10メートル程離れた位置に立っているのはユウジに扮したシオン。
明らかに弱者である筈のこちらは、大したダメージを負った様子もなく、ピンピンとしている。
本当に……どういう展開???
私が訳が分からず、目を回していると、
《ぐぬぬ……貴様許さんぞ……。》
倒れていた巨大熊が瓦礫を払い除け、ゆっくりと立ち上がった。
瞳をギラギラと輝かせ、只ならぬ様子だ。
《私にこれだけのダメージを与えたのは貴様が初めてだ。それだけは褒めてやる。だが……同時に私をここまで怒らせたのも貴様が初めてだ!必殺技で葬り去ってやる‼‼‼》
吠えるように言い放った巨大熊が口を大きく開けると、その口元に緑光が集まり始める。
その輝きは時と共に増していき、やがて直視するのが困難なほどになる。
これは……マズイかも。
私がそう思った瞬間、
「お前たち、知ってるか?……地球っていうのはさぁ、外見は青くて美しい球体なのに、中身は真っ赤なドロドロ。凶暴なマグマなんだぜ。」
ユウジに扮したシオンが突然、私達がいる方向を振り返った。
今にも攻撃してきそうな巨大熊を全く気にしていないかのような緩やかな動き。何やら意味深に語りだす。
ちょっ、前見て!前!
というか、こんな時に、
「一体なんの話⁉」
驚く私や、『夢の国』、『虎穴』のメンバーには目もくれず、ニヤリと笑ったシオンが続く言葉を紡ぎ出した。
「外見を綺麗に繕っていても中身はドロドロ。似ているだろう?……焼き立てのクリームパンに。ふふ、俺の大好物だぜ。」
ドヤ顔のシオン。
……。
えーーーー!!!
もしかしてこれ、ユウジの真似⁉
小学生の時のユウジよりショボいんですけど!!!
あんた、小中高と一体、ユウジから何を学んでたのよ!!!
内心で激しく突っ込む私。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、やれやれと何度も首を横に振ったシオンは右手を大きく突き出した。
すると、その手先に巨大熊に負けないほど眩しい緑光が集まり出す。
その様子に私を含め、その場にいるプレイヤー達がどよめく。
これは……一緒だ。
緑光を手先に集めるのはユウジが必殺技を放つ時と全く同じ。
しかし、
……シオンは魔導師じゃない。まさか、ユウジと同じ技を使える筈が……。
「行けー、隊長!やっちまえーーーーーーー!!!!」
背後にいる『夢の国』のメンバーの誰か一人がそう叫んだ瞬間、
シオンの声が広間に木霊した。
「消し飛べ!【翠の息吹】!」
****************
「似ているだろう?……焼き立てのクリームパンに。ふふ、俺の大好物だぜ。」
僕の口が小さく笑っていた。
ハッとする。
まさか、これはユウジの真似か⁉
僕の口……ついにこの領域に至ったのか⁉
この言い回し、正にユウジそのものじゃあないか!
やっと、あの日の憧れに追いついたぞ!
気がつくと、僕は歓喜に震えていた。
体の奥から知らずと力が湧いてくる。
何という全能感……。
訳も分からぬ心境のまま、右手を突き出す。
確か、ユウジの必殺技は木属性の巨大なビームだったかな?
まぁ、それっぽい技を装うか。
【七色の髪飾り】【不死の炎】
二つのスキルを並列で発動し、
手先に集まり出す七色の炎の周りを木属性のエフェクト、目を覆うほどの緑光放つ粒子で覆い隠した。
これで端から見れば完全に木属性の技に見えるだろう。
満足気に頷いた僕は、
あとは、全力で放つだけだな。
技を放てる準備が出来ると同時に目一杯の声で叫んだ。
「消し飛べ。【翠の息吹】!」
***************
「消し飛べ。【翠の息吹】!」
シオンの声が耳に届いた。
直後にその手元を離れた緑光。
まるで生き物の様に波打つと、巨大熊の口元から放たれた緑光をあっさりと飲み込み、私の眼前で祠の3分の1程を吹き飛ばした。
聞いただけで意識が飛びそうなほどの轟音と見ただけで意識が飛びそうなほどの眩光が祠全体に満ち渡る。
そして、次の瞬間には辺りを静寂が包む。
な、何なの今の……。
「す、すごい。これがユウジ隊長の【翠の息吹】。」
「こんな強力な技があったとは……。」
「【翠の息吹】やべー。」
「あの《キンググリズリー》が跡形もない。どんだけ威力あるんだよ。」
静寂を破って騒ぎ出したのは『夢の国』の新人達と『虎穴』のメンバー。
次第に大きくなるその歓声に、崩れかけの広間の中央にいる男が天高く拳を突き上げて応えた。
「見たか!これが『夢の国』隊長、ユウジ様の【翠の息吹】だ‼ 皆、その記憶にしっかりと焼き付けるがいい!」
「【翠の息吹】……。」
「【翠の息吹】。」
「【翠の息吹】!」
「【翠の息吹】!!」
「【翠の息吹】!!!」
「【翠の息吹】!!!!」
「【翠の息吹】!!!!!」
「【翠の息吹】!!!!!!」
「【翠の息吹】!!!!!!!」
「【翠の息吹】!!!!!!!!」
「【翠の息吹】!!!!!!!!!」
広間内に怒号の様に響き渡る【翠の息吹】コール。
何かに取り憑かれた様にその名を叫び続ける人々を横目に、私は内心で激しく突っ込んでいた。
違ーーーーーーーう!
本来、【翠の息吹】ってこんな大規模な技じゃないから!
さっきの技、絶対に別ものだから‼‼
《チリン。魔大地のイレギュラーボス、キンググリズリーが討伐されました。討伐パーティは『夢の国』です。》
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数日後。不甲斐ない街のとある喫茶店にて。
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女1: あの三星不動明王の一体、《キンググリズリー》を討伐した『夢の国』ってどんなパーティなんでしょう?
女2: 噂では、隊長が滅茶苦茶強いらしいよ。
女1: そうなんですか?
女2: ああ。《キンググリズリー》もその隊長が一人で倒しちまったとか。
女1: へー、それは凄いですね。それだけ強い人なら、一度会ってみたいものです。どんな人なんでしょう?
女2: えーと。確か、かなりの高身長とか。
女1: ほう、ほう。
女2:それと、かなり強力な必殺技を有しているとか。
女1: ほう、ほう。
女2: それと……好物はクリームパンとか。
女1:クリームパン?
女2: ええ、クリームパン。
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