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喫茶店!-real-

「先ずは私達のパーティ、『夢の国』の小隊長たちと会ってもらうわ。」

「小隊長?」

しがない街にある喫茶店。

その一番端にあるテーブルに座り、僕はカナと二人で向き合っていた。


ユウジは僕にリーダーを任せるということだけ伝えると、レベル上げをしてくると言って出て行ってしまった。


相当焦っているようだったな。

まぁ、経験値全損したところから元の状態まで戻すのはかなり厳しいだろうからその気持ちも分からんでもないが。

僕がユウジの置かれている状況に同情を覚えている間にも、カナと僕の口の間で止めどなく言葉が交わされている。


「私達のパーティはね、100人ほどのメンバーを四つの小隊に分けてそれぞれが別々のフィールドで戦うの。隊ごとに一人リーダーを決めていて、その人を小隊長って呼ぶの。」

「ほう。」


「小隊に分かれる理由は簡単。リスクを犯して全員で大ボスと戦うより、少ない人数で中ボスを確実に倒した方が安全に効率よく経験値を獲得できるからよ。」

「ふむ。」


「私達のパーティメンバーの増やし方は新規層の取り込み。第二陣の中でもまだあまりこのゲームをやり込んでいないプレイヤーを引き入れて、一から育てるの。」

「ふむふむ。」


「だから、パーティ内にもかなりレベル差があるから無理な攻略は行えない。分かる?」

「ああ、分かるよ。」


しかし、

……思ったより効率重視のプレイスタイルなんだな。ユウジとカナは。

てっきり、楽しくプレイしているタイプだと思っていた。


僕がカナの話を聞き、驚いていると、


「それで…小隊長達がそれぞれの小隊を率いて経験値獲得を目指すのなら、隊長と副隊長は何をするんだ?」

僕の口が動く。


ふむ。確かにそこは一番に気なるところだ。何しろこれから僕が演じる役割な訳だからな。


僕がカナの答えを待っていると、


「隊長と副隊長。私とユウジの仕事は主に二つあるの。」

カナがゆっくりと口を開く。


「一つ目は定例会議の仕切り。」


定例会議の仕切り?

「それはつまり?」

「それはつまり……小隊長達からの近況報告を聞いてパーティとしての行動指標を決めるってこと。」


むむむ。分かりにくい……。


「なるほど。簡単に言うと、一小隊としてではなく、大規模パーティ全体としてこれからどのように活動していくかを俺が決めればいいということだな?」

「そういうことっ。隊長は常にパーティ全体の動向を意識していることが大事なの。」


ふーむ。なるほどな。

口とカナの会話を聞いて納得する。


小隊として行動する時の指揮は小隊長がとり、小隊が集まり大規模パーティとして行動する時の指揮は隊長がとるということか。


しかし…。

「そうなると、隊長は普段何をしているんだ?」

「ふふふ。それよ、それ。普段していることが隊長の二つ目の仕事。」

僕の言葉を聞いたカナが何故かハイテンションで答える。


「さっき、私達のパーティは100人程のメンバーを4つに分けるって言ったでしょう?実はね、その100人に含まれない人達がいるのよ。」


ほう。

「新人か?」

「そういうことっ。」


「新人の中にはレベル一桁の人もいるから、小隊に加えられないのよ。そういう人に戦い方を教えたり、レベル上げを手伝ったりするのも隊長の仕事なの。」


なるほどな。

カナの言葉に相槌を打つ。


その様子を見ていたカナが、

「でも、シオンは流石よね。私の言葉足らずで分かりにくい説明でもしっかり理解してくれるし、まだ言っていないことも分かっちゃうんだから。小さい時からそうだけど、相変わらず頭がよく回るわ。」

感慨深げに言ってくる。


ふーむ。そうかなぁ?

そんなこと言われたの初めてだ。なんだか嬉しいなぁ。


僕が若干、いい気分になっていると、突然、

「……ククク……」

カナにも聞こえない程小さな声で口が笑い出す。


な、なんだ?

僕が疑問に思った瞬間、


「グラッチェ。そう言われると嬉しいよカナ。ただね、君の言葉には一つ間違いがあるぜ。」

口が流暢に話し出す。


「な、何?」

突然、口調が変わった僕に驚くカナ。構わず僕の口が言葉を紡ぐ。


「俺は頭がよく回るんじゃないぜ。口がよく回るんだ。実際、頭の方は……ポンコツさ。ふふ。」


「……???」


……。


コラァーーーーーーー!!!

表出ろやい!

****************

「ユウジ、一つ提案があるんだが。」

「おう、なんだシオン?」


現実世界。

僕のアパートから徒歩10分程のところにある喫茶店。

その片隅で僕はユウジと向かい合っていた。


「お前の経験値を手っ取り早く稼ぐ方法なんだがな。」

「ん?何だ?良い方法があるのか?」


「ああ。普通に稼いでいても、とても他のパーティメンバーに追いつくことは不可能だろう。でも実は、かなりの荒業になるが、取って置きの方法があるんだ。」

「なんだ?手っ取り早く経験値を稼げるというなら俺はなんでもやるぞ。言ってくれ。」


「……俺と一緒に魔王を倒さないか?」

「……。」

「……。」

「……は?」


…ですよねぇ。

驚いて固まるユウジ。その反応を見て何度も頷く。


うんうん。分かる。分かるとも。

魔王を倒すなんて無理だと言いたいんだろう?

君のその気持ち、すごく良くわかる。

だが、


「言っておくが、俺はめちゃくちゃ強い。プレイヤー最強と言っても過言でもない。一人でも間違いなく魔王を倒せる。」

僕の口が断言する。


ふむ。

プレイヤー最強という部分を除けば僕も口とほぼ同意見だな。


大陸を統べる魔王。


強いとは言っても、所詮はこのステージのラスボスといった扱い。

レア種族「不死鳥」のスペックや先日手に入れた【堕天の鎧】の性能を鑑みれば、そろそろ倒せるだろう。


自信満々の僕に対して、


「本当に倒せるのか?」

半信半疑といった様子のユウジ。


「まあ、俺に任せとけって。魔王を倒すと言っても、いきなり戦うわけじゃない。そこまで辿り着くまでに何体かボスを倒さなければいけないだろう?その様子を見てればお前も納得するよ。」

「お、おう。まぁ、極度のゲーム好きであるお前がそこまで言うなら信じるが…。いつ攻略するんだ?お前、昼間は俺の代わりを演じるんだろ?」


「ああ、もちろん。だから、魔圏を攻略するのは夜だ。」

「夜?……魔圏は夜になると出現するモンスターのレベルが上がり、夜間の攻略は不可能と言われているんだぞ?」


「ふふ。まぁ、確かに俺としてもできれば昼に攻略したいさ。たが、夜しか時間がないんだ仕方がないだろう?」

「仕方がないって、お前…。」


「なんにせよ一度は一緒に夜の魔圏に繰り出そうぜ。本当に攻略不可能かどうか判断するのはそれからでも遅くない。」

「まあ、確かに危なくなったら逃げればなんとかなるか…。このことはカナには黙っておいたほうがいいな。あいつは無理するとすぐ怒るから。」

「ふむ。それもそうだな。」


未だ釈然としない様子のユウジだが、


取り敢えずは説得成功かな?

後半は肯定的な感じだったし。


僕も攻略のお供ができて、ユウジも経験値を得られるWinWinの関係。


素敵だね。



僕は上機嫌で手元のカップを口元に運ぶと、


う~ん!

やはり、ミルクティーは美味い‼


中身を一気に飲み干した。

****************


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