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攻略組の行方

******************

人族の国にあるとある喫茶店での一幕

******************

男1:あのさぁ。最近、攻略組の姿を全く見ないんだが、あいつらどこに行ったんだ?


男2:攻略組?攻略組なら皆、「不甲斐ない街」にいるだろ。


男1:不甲斐ない街?どこだそこ?


男2:丁度、妖精圏と魔圏の間にある街さ。攻略組はそこを基点にして魔圏のモンスターを倒しているのさ。幸いそこは戦場にはなっていないみたいだからな。


男1:ん?基点にしてって、モンスターを倒してはいちいちそこまで戻って来るのか?何で一気に攻めてしまわないんだ?


男2:バカか。魔圏はボスが多すぎて一気に進めないんだよ。その上、魔圏にはHPポーションなどの物資を補給出来る場所がないから、いちいち妖精圏まで戻って来なきゃいけないってことさ。まあ、大陸のボスは一度倒せば復活しないのがせめてもの救いだな。


男1:ふうん。それで、魔圏の攻略は今どこまで進んでるんだ?


男2:不甲斐ない街の先にある魔平原、魔荒野のボスはどうやら倒されたらしい。

ただ、その先の3つのフィールドのボスが強すぎて全く進めないのだとか。


男1:3つのフィールドのボス?


男2:ああ。攻略組も全く歯が立たない様子から「三星不動明王」と呼ばれてるらしいぜ。


男1:ふうん。前から思っていたが、攻略を進める事は戦争の勝敗に影響あるのか?


男2:ああ、あるよ。フィールドボスを倒した場所のモンスターは魔王軍の侵攻には加わらないんだ。


男1:へぇ。じゃあ、魔圏のボスを全部倒せば魔王軍は魔王だけになるのかな?


男2:まあ、多分そうだろうな。だが、魔圏のボスを全部倒すなんて到底無理だぞ。それをするくらいなら、プレイヤー全員で魔王を倒した方が早い。


男1:まあ、そうだろうな。それより、最近は敵のレベルが高くて太刀打ち出来ねぇ。攻略組はどうしてるんだ?


男2:さあな。やっぱり、地道にレベリングしかないんじゃないか?


男1:そうだよな。俺たちも駄弁ってないでレベル上げに行くか。


男2:そうだな!

*******************


シンとリルと別れた僕は再び、訝しみの街に戻って来ていた。


訝しみの街は西部劇を彷彿とさせるような街だった。

外観は大陸で最初に寄った街、変わりゆく街に非常によく似ており、すごく活気を感じる。


とりあえず、冒険者ギルドに行くか。


街に戻って来た僕は最初に冒険者ギルドに行く事にした。


最近は相対する敵の殆どが格上で実力不足を感じてばかりだ。

ここら辺で一度、レベリングをしておくのも悪くないだろう。

そして、どうせ敵を倒すのならば冒険者ギルドで依頼を受けた方がモチベーションが上がるというものだ。


ガチャリ。

冒険者ギルドのドアを開け、中に入る。


ギルドの中は相も変わらず、右手に酒場、左手に依頼掲示板、正面に受付カウンターという造りだった。


そう言えば、ギルドの酒場を一度も利用したことがなかったな。

依頼を終えたら利用してみるか。


そう思いつつ、掲示板の方に足を運ぶ。


何かいい依頼ないかなぁ?

掲示板に貼られた依頼書を眺めてゆくと、


ん?なんだこれ?

一つの依頼書に目が止まる。


《シルバースライム討伐の付き添い。

募集人数 1人》


付き添い?依頼主は子供なのか?

しかし…報酬金が少ないな。

依頼書の裏に書かれた報酬金を見て、眉を顰める。


報酬金 312ペニー。


この世界のお金の単位である「ペニー」は現実世界の「円」と殆ど同じ価値である。

つまり、報酬金 312円ということになる。


いや〜。これは相当物好きな人しか受けないだろうな。

ほぼタダ働きみたいなものだ。


……。

よし、受けよう。

僕は依頼書を受付カウンターに持っていくと、依頼を受けた。


***********

「あんたが依頼を受けた人?」

その日の午後、待ち合わせ場所の冒険者ギルド前に行くと、10歳くらいの少年がいた。

散切り頭に軽装の鎧を身に纏っている。


「ああ、そうだよ。俺が依頼を受けた人だ。俺の名前はシオンだ。よろしくな。」

僕が挨拶をする。


「ふうん。僕の名前はキオだよ。今日は街の外の荒野に行ってシルバースライムを倒すからついてきて。まあ、僕は強いから心配要らないんだけどね。母さんが一人で荒野に行っちゃダメって言ったから依頼を出したんだ。」

少年、キオがため息まじりに言う。


ふむ。なるほどな。

母親の言いつけか。

それだったら、依頼料くらい親が出してやれよ……。あんな依頼料じゃあ、誰も依頼を受けないだろう…。

いや、敢えて依頼料を出さなかったのか?誰も依頼を受けないように。

母親としては子供にあまり危険なことをして欲しくないだろうからな。

それだったら、この依頼を受けたのはマズかったかな?

まあ何にせよ、この子を無事に街に返さないとな。

内心で決意を固める。


「なるほどな。そういうことなら、俺は後ろで見守っているから危なくなったらすぐに声を掛けてくれよな。」


僕とキオは連れ立って荒野へと繰り出した。


**************

つ、強い…。

そう言えば、この大陸のNPCは強いんだった。


Lv.50を超える敵を難なく蹴散らすキオの姿を見て、僕は驚愕していた。


まさか、子供でもここまで強いとは。これ、僕がついてくる必要あったか?


《Lv.56 ブルーゴブリン》

青い肌の小人。非常に醜い顔をしている。

凶暴な性格をしたこのモンスターをあっさりと切り刻み、キオが僕の元に戻ってくる。


「どう?僕、結構強いでしょ?」

「うむ。確かに強いな。」

キオと肩を並べ、でこぼこな荒野道を歩く。


「そうでしょ?同年代では僕ほど強い子はいないんだ。だから、本当はモンスターを狩るのも同年代の子たちと行きたいんだけど、倒したい敵のレベルが合わなくて行けないんだ。」

キオが言う。


「そうか。それは強さ故の孤独という奴だな?その気持ち、俺もよく分かるぞ。」

その言葉に僕の口が激しく同意の意を示す。


おいおい、調子に乗ってあんまり変なことを言うなよ…。

「え?兄ちゃんもこの気持ち分かるの?全然、強そうに見えないのに。」

「ふふ。本当に強い奴は強くは見えないものさ。俺は強いよ。誰よりもね。」

「ほえー。すごい自信だねー。」

キオが感心したように言う。


いや、君も相当の自信家だと思うぞ…。

まあ、僕の口が自信過剰なのは否定しないが。

「それなら、兄ちゃんは魔王も倒せるの?」

キオが冗談めかして聞いてくる。


「魔王か。まあ、いずれは倒すさ。俺にとっての魔王はカバにとっての牛肉ステーキみたいなものさ。」

「か、カバにとっての牛肉ステーキ?分かりにくい例えだね。」

「つまり、普段から食べられるものではないから、最高のシチュエーションで頂きたいということさ。」

「カバは基本草食だから牛肉は食べないと思うけど、大丈夫?」

「……え?」


……。

おい、コラ!

え?、じゃないよ。え?、じゃあ。

完全に馬鹿な奴だと思われたじゃないかー。

……ガクリ。



その後も僕とキオは他愛もない話をしつつ、荒野道を歩いていった。





《Lv.65 シルバースライム》

やがて、僕とキオの目の前に目当てのモンスターが現れる。

意思を持った銀色の粘液の塊だ。


ふむ。前に猫族の国で見た奴よりレベルが低いな。


僕はキオとシルバースライムの戦いを一歩引いた場所から静かに見守っていた。


じゃきり。

シルバースライムと向き合ったキオが腰の鞘から剣を抜く。

そして、

「行くぞ!はぁ!」

声をあげてシルバースライムに切りかかった。

ぶにょ。

スライムの体に当たった剣が鈍い音を立てる。

シルバースライムにダメージを負った様子は全くない。

そして今度は、

ドン。

シルバースライムがキオに突進を仕掛け、それをキオが左手で持った小さな盾で難なく受け止めた。


その後また、キオが切りつけ、切りつけられたスライムが突進を仕掛ける。

その突進を盾で受け止めたまたキオが切りつける。


ひたすら同じ事の繰り返しだった。


長い……。

僕が変わり映えのない戦いに飽き始め、欠伸を噛み締めていると、


ボンッ。

遂にシルバースライムのHPがゼロになったらしく、ドロップ素材を残して消滅した。


「やったー!勝ったよ!」

満面の笑みを浮かべたキオが僕の元に走ってくる。

「よかったな、キオ。」

僕がキオを労っていると、


ガサゴソ。

近くの草むらで物音がする。


何だ?

僕とキオが物音のした方に視線を向けると、


《Lv.82 シルバースライム》

先ほどの個体より一回り大きい敵が現れた。


げっ、レベル高い。

「ちょ、レベル高い……。兄ちゃんが倒してよ。」

キオが僕に行ってくる。


ふむ。そうだな。

今までの敵よりかなり強そうだし、ここは僕が戦うべきだろう。

こういう時の為についてきているんだしな。


「OK。ここは俺に任せろ。」

キオの言葉に了解の意を示す。


そして、

「消えろ。【不死の炎】!」

シルバースライムへと突き出した僕の右手から七色の炎が噴き出した。


炎はあっという間にシルバースライムの元へと到達すると、


ジュッ。

小さな音を立て、銀色の粘液を一瞬で蒸発させた。




「す、すげえ……。」

僕の隣でキオが呟く。


すると、

「当然だ。俺の炎は太陽よりも熱いからな。熱さを計ったら1000度を超えるんじゃないか?ハッハッハ。」

僕の口が鼻高々に笑う。




「兄ちゃん…。太陽は表面温度でも5000度を越えるよ……。」


「……。」


……。



****************


「兄ちゃん、今日は付き添いありがとね。」


シルバースライムを倒すという目的を無事に果たした僕とキオは訝しみの街まで戻って来ていた。

既に依頼達成を冒険者ギルドに伝え終え、今はギルドの前にいる。


「なぁに、無事に帰ってこられて何よりだ。」

「うん。」

僕の言葉にキオが頷く。


「それじゃあ、僕はもう行くね。あんまり遅くなると、母さんが心配して大騒ぎするから。」

「ああ。今日は楽しかったぞ。またな。」

「うん。またね。」

そう言うと、キオは僕に背を向け去って行った。


ふむ。僕自身のレベリングには全くならなかったな。

まあ、それなりに楽しかったからいいか。レベリングは次から頑張ろう。

それにしても、10歳ほどの少年があれほどの力を持っているなんて。

やはり、魔王軍に対抗するためにNPCを味方につけるという案は、名案だったな。


キオの背中が見えなくなったところで、踵を返しギルド内に戻る。


さて、無事に依頼を達成できたわけだし、当初決めていた通り、ギルドの酒場で軽く飲むか。

そう思い、酒場の空いてる席に着く。

僕が席に着いたのを目にしたウエイトレスがすかさず注文を取りに来る。


ふむ。よく訓練されているな。

そう思いつつ僕は、酒を注文するために口を開いた。



「酒をくれ。ウォッカをストレートで。」



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