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犬族の国

「あなたもプレイヤーですよね?僕と一緒にこの大陸を救いましょう!」


この街で冒険者ギルドを利用することができなくなった僕は他の街へと移動するため、東門を目指していた。

その途中で一人のプレイヤーに声を掛けられる。


「いや、結構だ。俺はソロで気楽にゲームを楽しみたいからな。悪いが他を当たってくれ。」

そう言うと、話しかけてきた男の横をすり抜ける。


「ま、待ってください。」

しかし、男が再び僕の前にまわりこみ、進路をふさぐ。

そして、

「この大陸には時間がないんです!お願いですから僕の話を聞いてください!」

必死の形相で言ってくる。


ふーむ。話を聞かないと道を空けてくれなさそうだな。

僕は特別急いでいるわけでもないし、少しくらい話を聞いてもいいかな?

この男が新情報を持っている可能性もあるし、聞いて損はないだろう。


「OK。君の熱意には負けたよ。話を聞こう。」

「本当ですか!?ありがとうございます!それでは早速ですが、僕の話を聞いてください!」

僕が同意すると同時に、男が物凄い勢いで話し出す。


「少し前にNPCの方に聞いた話なんですが、この大陸に魔王がいることはご存知ですよね?」

「まあ、それくらいは……。」

「それなら、魔王が何を目的に他の種族へ戦争を仕掛けているのか知ってますか?」


ん?目的?

魔王に目的があるのか?


「いや、知らんな。」

「やはりそうですか。実は僕も先ほどまで知らなかったんです。魔王の最終目的は当然、他種族の滅亡ですが、その前段階として今現在、魔王は結界水晶というものを狙っているらしいんです。」


結界水晶?新しいワードだな。


「結界水晶とはなんだ?」

「はい。結界水晶とは結界を維持するための核みたいなものです。結界とは人族の国、妖精圏、獣圏に一定以上の実力をもたないモンスターを近づけなくするものです。戦闘員の数で魔王軍に圧倒的に劣っている各国が何とか戦線を維持できているのはこれのおかげです。もし、三つある結界水晶の一つが破壊されればその周辺の地域は間違いなく魔王軍に蹂躙されるでしょう。」


「なるほどな。それで、この大陸に時間がないというのは?」

「はい。実は猫族の国にある結界水晶が破壊されそうらしいのです!もし、そうなれば獣圏一帯を覆う結界が消滅してしまいます!」


ふーむ。なるほどな。

このステージでは魔王を倒すだけでなく、結界水晶も守らなければならないということか。

前から思っていたがこのゲームはプレイヤー全体で協力することを前提として作られているようだな。

しかし、僕の仕入れた情報では猫族の国はまだ戦争に参戦していないはずだが。

そんなにヤバいのか?

僕が尋ねてみると、


「いえ。猫族の国はまだ巻き込まれていません。しかし、隣国の犬族の国が既に陥落寸前だとか。」


ふむ。なるほど。

猫族の国は国境を犬族の国、鳥族の国、猿族の国、馬族の国の4つの国に囲まれている。

そのうちの一つである犬族の国が陥落寸前ならば戦禍に巻き込まれるのも時間の問題かもな。下手したら、もう巻き込まれているということもあり得る。


まだ大陸に来たばかりだというのに、序盤からかなり厳しい状況だな。

とりあえず、見過ごすことは出来ない。助けるとしよう。


「お前の言いたいことは分かった。確かに時間がないようだ。協力して犬族の国を救おう。」

「はい!お願いします。あっ、僕の名前はセイギと言います。」

「俺はシオンだ。」

互いに名乗り合う。


セイギは平凡な見た目の男だった。

茶髪に茶目で、全体的に堀の薄い顔立ち。鼻が少し大きいということ以外これといった特徴がない。

種族は……カラスかな?

耳に黒い羽根のイヤリングをしている。

少なくとも鳥族であることは間違いがないだろう。


まあ、ここは鳥族の国だからね。

僕が鳥族の国に来てしばらくして分かったことだがこの国にいるプレイヤーは皆、鳥族だと思われる。

今まですれ違ったプレイヤーの全てがそうだったのだからほぼ間違いないだろう。

そこで僕の推測だが、転移門を通ったものは皆、自分の種族と同じ種族の元に転移させられるのだと思う。

それなら、僕がフェニックスの元に転移させられた理由も、ドワーフであるギルバートの姿が見当たらなかった理由も納得出来る。



「犬族の国までパパッと飛んで行きますか。」

僕が言うと、


「え?」

セイギが驚いたような顔をする。


ん?なんか変なこと言った?


「シオンさんって鳥族じゃないですよね?飛行スキル持ってるんですか?」



あー。完全に忘れてた。

僕の見た目は鳥族じゃなかったんだった。

イヤリングをしていないし、まさか鳥族とは思わないだろう。

しかも、よく考えると【七色の羽根】はあまり人前では使うべきではないな。

レア種族だということが簡単にバレてしまう。


仕方がない。ごまかそう。


「もちろん持っているさ。見ていろ。」

そう言うと、


【七色の羽根】!【七色の髪飾り】!


二つのスキルを同時に発動させ、翼を炎のエフェクトで覆い隠す。

僕の背中から、真っ赤に燃え上がる3対の翼が出現した。


これで、羽根が七色なのはバレないだろう。

逆に派手になった気がしないでもないが…。

まあ、いいか。

言い訳をするのは僕の仕事ではないからね。


「うわあ。凄い翼ですね。シオンさんってなんの種族なんですか?」


ムム。いきなりこの質問が来たか。

3対の翼をもった生物とかいるのか?

昆虫族にならいそうだが、どう見ても僕は昆虫族ではないぞ。

どうする?僕の口。


「俺は……裸族だ!」

「……。」

……。




えーーーーーーーー!!


まっ、まさか、冗談で乗り切るつもりか…。

それにしても、つまらなすぎだろ!


僕が内心、かなり焦っていると、


「くっくくく、ふはは。ぷぎゃあああああっはっはー。面白い!シオンさん面白過ぎですー!!」

セイギが狂ったように笑い出した。


あれ?よくわからんがウケてるぞ。


「そうだろう。そうだろう。実は今の冗談は俺的にもかなり自信があったんだ。あーはっはっは。」

何故か僕の口も笑い出す。


自信?あのギャグにか?


「ホント、裸族ってらぞくって。くくく、うははは、ひーひー!」

「バカ、思いださせるな。また笑えてくるだあああははははは。ひーひーーー!」

「あひゃあひゃあああ。」

「ぷぎいいいいいいいいいい。」

……。

……。


いや、何にも面白くねーよ!!

頭湧いてんのか!?




僕は心の中で激しくツッコんだ。

***************



「遅かったか……。」

「これは思ったよりまずい状況ですね……。」


犬族の国の首都の上空から眺める光景は悲惨なものだった。

ほとんどの建物が原型を留めておらず、街中のいたるところにモンスターの姿が見える。


《Lv.82 スケルトンソルジャー》


《Lv.90 スケルトンナイト》


《Lv.101 スケルトンキング》



敵のレベルが高いな……。

これはプレイヤーが介入できるような戦いではなさそうだ。

難易度設定どうなってるんだよ!

僕が運営に若干呆れていると、


「シオンさん、見てください!あそこに人がいます!」

隣のセイギが街の一か所を指さす。


そこは広場だった。街の中心に位置し、多くのモンスターが群がっている。

その中心で一人の男がモンスター達に囲まれていた。


プレイヤーか?あれだけの数に囲まれていては逃げ出すことは困難だろう。

というか、よくあれだけの数を相手取って戦っていられるな。

どんだけ強いんだよ……。


「俺がモンスター達を蹴散らす。その間にセイギはあの男を連れて上空に逃げてくれ。」

「はい。分かりました。」

セイギと短く言葉を交わすと、僕は広場に向かって一気に急降下した。

そして、


【不死の炎】


男に群がっているモンスターに向かって七色の炎を放った。

炎に触れたモンスター達が一瞬で灰になる。


相変わらず凄い威力だな。


僕が自分の技の威力に感心している間に、セイギがモンスター達が消滅して空いたスペースに降り立つ。そして、急いで男を抱え上げると再び舞い上がった


よし。救出成功だ。さっさと逃げよう。

あっという間に男を救出した僕たちは、周囲で最も背の高い建物の上まで移動した。


「いやあ、危なかった。本当に助かったよ。ありがとう。」

屋根の上に足を下ろすと、助けた男が礼を言ってきた。


「なに、大したことではない。困っている人がいたら助ける、当たり前のことさ。フフッ。」

「シオンさんの言う通りです!正義は弱き者を見捨てません!」

僕の口とセイギが応える。


いや、この男は弱くないだろ。Lv.100付近のモンスターを数十体同時に相手どって戦っていたのだから、むしろ強すぎだろ。


「はは、弱き者か。そう言われるのは新鮮だね。いつもは強い強いと言われてばかりだからね。悪い気はしないよ。」

男が何故か楽しそうに笑う。

そして、

「ああ。自己紹介が遅れたね。俺は《光の守護者》の副隊長、カムイだ。」

さわやかに名を名乗った。


ほう。最強パーティと言われる《光の守護者》の副隊長か。

それなら、先ほどの異常な強さも納得だな。

そう思いつつ、改めてカムイの方を見る。


カムイは爽やかなという言葉がぴったりと当てはまる男だった。

髪は短髪で濃い青。瞳は薄い水色で、整った顔立ちからは人の好さそうな印象を受ける。

実に女にもてそうな奴だ。


「俺の名前はシオンだ。よろしくな。」

「ああ。よろしく。」

僕も名を名乗り握手を交わす。


「それで、どうして一人で戦っていたんだ?」

僕の口が尋ねる。


「他のプレイヤーや犬族の国の人々を逃がそうと思ってモンスターと戦っていたんだが、気がついたら囲まれてしまってね。逃げられなくなってしまったんだよ。」

「なるほどな。それにしてもお前強かったな。」

「ふふ。そうかい?君の炎の方がすごかったけどね。あれはいったいなんだい?」

「あれは……企業秘密だ。」

僕とカムイが二人で話していると、


「カムイさん!先ほどは弱いなどと失礼しました!あなたほどの人の強さを見極められないなんて、僕は戦士失格です。」

セイギが突然、猛烈な勢いで頭を下げ始めた。


「はは。そんなにしなくても俺は気にしていないよ。それに戦士失格って…これはゲームなんだけど……。」

カムイがセイギの熱意に若干引き気味に答える。


前から思っていたが、セイギは「弱き者は見捨てない」とか「戦士失格」とか、かっこいい言葉を使いたいだけだよな。特になんも考えてないだろ。


というか、もしかしてカムイって結構有名?

僕が疑問に思って尋ねてみると、


「え!?何言ってるんですかシオンさん!五強星の一人じゃないですか。」

セイギが驚いたように言う。


……ん?五強星?何それ?


「五強星ってなんだ?」

「え……。」

僕の言葉にセイギが絶句した。


そんなに有名なのか…?知識不足でなんだか申し訳ないな。


「ごほん。いいですか、シオンさん。五強星とは現在、最も強いと言われる五人のプレイヤーを指す言葉で、カムイさんはその内の一人なのです。つまりはカムイさんは怪物的強さを誇るということですね。」

セイギが説明してくれる。


ふむ。なるほどな。

カムイは最強の一角ということか。それなら有名で当たり前だな。

僕が納得していると、


「はは。俺はそれほど大した存在じゃないよ。それに本当の怪物は俺達、五強星ではなく五凶星の方さ。」

カムイが笑いながら言う。

「五凶星?」

知らない言葉に僕が思わずオウム返しにすると、

「ああ。五凶星というのはね、最も危険な犯罪者プレイヤー五人を指す言葉さ。」

カムイが説明してくれる。


犯罪者プレイヤーか……。一人しか思いつかんな。


「それは《不死の人》とかか?」

僕の口が質問する。

「いいや、《不死の人》は五凶星には入っていないよ。奴は最近、目立った活動をしていないからね。一部では返り討ちに合い、経験値を全損したという噂もあるくらいだ。」

「ほう、それは知らなかったな。それなら、五凶星にはどんな奴がいるんだ?」

「五凶星は、《蒼穹の王》《居ない人》《沼の主》《霞む命》《黒の魔神》の五人だよ。」


……誰だそいつら?一人も聞いたことがないぞ。

僕は首を傾げる。


マズいな。最新の情報を全く知らない。これからはもう少し情報にも気を配らないといけないな。

僕が反省をしていると、


「そんなことより、魔王軍はどうなったんですか?」

セイギがカムイに尋ねる。


そうそう、それを一番に聞かなければいけなかったんだ。

その言葉を聞き、僕もカムイの言葉に耳を傾ける。


すると、

「ああ。魔王軍ならとっくに猫族の国に攻め込んだよ。俺はかなり長い時間一人で戦っていたからね。」

カムイがさらりと答えた。


「……。」

「……。」


「「え!?」」


僕とセイギの声がシンクロする。


とっくに攻め込んだって……。

猫族の国まだ滅んでないよな?




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