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肌の刺さらない翼  作者: もーまっと
■本編
1/45

翼が一羽

 半分お遊びで書いてるので、あしからず。手直ししてません。

 完結してます。詳しくは『あとがき』を、ご覧遊ばせ。

 この前、中学の卒業式が終わったと思ったら、もう入学だ。


 卒業……それははかなくも、夢と希望に満ち溢れ、ちょっぴりセンチに、ちょっぴりこれから起こる新たな門出に胸をワクワクさせて……させて……させ


 ∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽


 野郎どもは、半分は適当におちゃらけながら、半分は卒業の雰囲気に浸り、それでいて気軽い感じで記念撮影なんかをたしなんでいたが、冗談じゃない! なんであんな白い花を胸につけるんだ。縁起でもねぇ~。

 ティッシュで作った安っぽいバラを下級生に付けられる時に『俺はいいよ』と言っても付けようとするから、何度も断ったら、始めは冗談だと思って笑ってたのが、俺の本気度を見抜いてからは『私だけ付けなかったら……』と泣きそうな雰囲気を醸し出し始めたので、年下のレディを泣かせちゃ悪いと『お前だけは特別だからな』と肩をポンと叩きウインクして、俺は甘んじてあの屈辱を味わった…………のが、まるで昨日のことのようだ。

 女子は『絶対に忘れないから!』『私のことも忘れないでね~!』なんてことやってたけど、頭の良い奴や私立に通う奴以外は、この中学から進学するのは八割方ここの高校だ。アホらしい。

 まだ、女子になんか言われないかなー。告白されたらどうしよー。ボタン取られるかな? なんて時代錯誤なソワソワ感を出してた野郎どもの方が、俺にはよっぽど純粋にマヌケだな~と清々しいくらいだった。


 ∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽


 っという訳で──……



 俺は今、昼飯のあと、ずっとこの廊下をトボトボ歩いている。

 

 理由は簡単だ。俺は方向が、人よりも、ほんの少しばかり音痴に生まれついたので、自分のクラスがどこだったか忘れた──から、ちょっくら探してるわけだが……。

 組プレートを見たり、開いた窓から中を覗いて同じクラスの奴はいねがぁと、ジロジロ確認しながら歩いてる。けどクラスの半分も顔が一致してない。まだ覚えてないからだ。


 どうやら俺の新しい組は、一年三組と言うらしい。


 登下校の道のりは、なんとか覚えた。電車通学じゃなくって本当に助かった。

 俺と同中おなちゅうで(地域によってはドーチュウと言う奴も居る)、昔から俺が方向が音痴なことを知ってる阿久津が、家も近かったので毎日一緒に登下校してくれることになった。ありがたーい奴なんだ。


 春休み中(俺はこの期間の正式名称を知らない)阿久津は、高校入学までに覚えろよ。と、チャリで行き来きするという予行練習まで毎朝開いてくれた(お寝坊した日は昼だ!)そのお陰もあって道順はおぼろげながら覚えることが出来た。持つべきものは友だ。宿敵と書かない方の友だ。


 教室までの道のりや、校舎内の道順に関しては只今特訓中だ!

 駐輪から、入口、そこからどう行くか、何度も確認しながら反復してる。まだ入学して数日だから完璧じゃない。やっと這い這いが出来るようになったところか? つかまり立ちのご卒業はまだまだ先だ。


 トイレは教室から近くて俺は一発で覚えた! 教室の移動は同じクラスの奴にコソコソついていけば良い。体育館とプールはデカイから、一目ひとめで分かる! 行きは良いんだが、帰りが怖い。つまり全般的に校舎がゴチャっとしてて分からないのだ。


 ──ふらっと、一度ひとたび校舎の外に出ようものなら、お昼のひと時を格好つけて黄昏れて帰っきた日には大変だ。校舎に入っても、自分がどこを歩いてるのか分からなくなる。


 阿久津が言うには「校舎に入る」と言う俺の考え方がダメらしい「校舎に帰ってきた」と考えるのが正しいんだとか。理由を聞いたら、毎回行きだけしか考えてない感じが方向を音痴にさせてる元凶じゃないかと言う。そんなもんなのか……。いまいち俺には阿久津の喋る言語が理解出来ない。


「おーい!」

「おーぃ! 阿久津ー!」


 いねぇな。そりゃ俺の子守りじゃないんだからな。

 俺はさっきから何回階段を昇り降りしただろうか? ここが何階なのかさえ忘れちまった……。本物の迷子さんだ。

 大きい声を出したけど、返事は無い。相変わらず周りでは、男の生徒と、女の生徒が、立ったり、歩いたり、喋ったりしてる。全く暢気な面をしやがって。気楽なもんだ。


 阿久津とは奇跡的にも俺と同じクラスで助かってる。都合よくそこいらを通りかかってくれないかなー? と、ひと休憩を挟み、俺がウォータークーラーの水を飲んでたら、女が『いつまで飲んでるのよッ?』ってな顔で友人とヒソヒソ俺の噂なんかをしてた。

 噂ってものは尾ひれがつくものだ。だからまた、俺はもう一度立ち上がって挑戦する気を奮い起こした!


「おーい! 阿久津ー!」

「阿久津ー! でーておいでー!」


 もちろん人任せだ! 一人では無理でも、力を合わせれば達成できることだって、世の中にはあるんだ。


 でも──……違う階だったら?


 途端に弱気が顔を覗かせた。階違いなら、何べん叫んでも聞こえないよな……? なんだか少し心配になってきたもの。

 一年三組と言うくらいだ、もしかすると一階か? だよな? 俺としたことが……全く。うっかりさんだったぜ。


 トボトボと俺は一階の靴を履き替える所を横切って、奥の方まで歩いていると、チラリホラリと生徒の姿も見える。まだ大丈夫だ。

 さっきから部屋のプレートを観察しているけど『○○組』というネームよりも『○○室』と書かれた部屋の方がやけに目立つ。ここは、この学校の重要施設なんだろうか。それなら新一年生は金の卵だから、この階の可能性も捨てがたい。

 でも──、こんなとこ通ったっけ? 朝の登校時には、いつも階段を上がってるような気もするんだが、気のせいか?


 うむ──。

 こりゃぁ~違う階だわ~。


 確か、階段を上がった記憶だけは覚えてる。俺の方向音痴という能力も、その記憶だけは消せやしなかった。そこで俺は二階へ上がった。今日の収穫だ!(マイム・マイム・ベッサッソン)

 しかし俺は、いつもと違う階段を登ったので、初めて見た景色に出くわすこととなった。


 窓が開いてて、ふぁさ~と頬を撫でる風が心地良い。

 窓辺にたたずむ女の髪がなびき、スカートが上がる──。いや上がらない──。いや上がる──? 上がらない? 風も悪戯がお好きと見える。

 すると『何を見てんのよ~?』ってな顔で睨まれた。俺のヘッドバンギングに度肝を抜かれたのか? ふん! お前が格好つけて、窓を開けてたたずみつつも『どこか人と違う』ってな憂いに満ちた哀愁を漂わせる自分に酔ってるから、風に悪戯されたんだろう?

 教室側でその女のご友人らしい女がクスクスと笑ってやがる。俺が叱られたことを笑ってるならお門違いだお嬢さん。ただ睨まれただけだ。


 やっとこさ、俺は、前に一度どこかで見た光景に出逢えた。

 どこかは分かってる。学校だ。そして俺のクラスと同じ階だ……ろうか? ろうかと廊下をかけて駄洒落に”いそしんでいる”場合じゃない。俺はよく廊下に迷うから、必ずしも俺のクラスの階だと決めつけるのは早急だ。もしかしたら前に迷った場所を覚えてただけかもしれない。そういう記憶だけは変に覚えてるものだ。いづれにしても……、俺のクラスという言い方は誤解を招くな。俺の物じゃないから。誤解と五階、これもあとで阿久津に教えてやろう。


 ──と、そんな矢先、俺の日頃の勢いが良いのか? 行いが良いのか?


「佐々ささら! お前なに遊んでんだよ? また迷子になったのか?」

 やっとお出ましか阿久津ちゃんよ~。

「こ、ここは何階よ~? で、何年の階だ?」

「お前、自分のクラスを目の前にして、何ふざけてんだよ」

 そう言って阿久津は目の前の教室に、何の躊躇ちゅうちょも、躊躇ためらいもなく(字は同じだが)威風堂々(いふうどうどう)とした風格を見せつつ正々堂々(せいせいどうどう)と正面から入っていった。俺の勘も中々なもんだな、気づかずに自分のクラスまで来れてるんだもの。


「なぁ、午後の授業をフケようぜー」

 と阿久津を誘っても、こいつは全く乗ってくる気配すらない。

「お前は不良かーっ!」

 逆に、真面目かっ! 阿久津ぼっちゃん。

「不良じゃなくても授業くらいバックレんぞ」

 俺がそう言ってやったら、ハァ? という顔で淡々と言いやがる。

「まだ入学したてだろ。どこにそんな早い時期から授業サボってる奴がいるんだよ」

「ここに居るだろ」

「えっ?」

 この、え? という顔になった時の阿久津が、チョー可愛いのだよ。

「お前もうサボったことあるのか? 俺は知らないぞ。そんなの見てないし」

 なんでそう本気に取るかな。阿久津もぉー可愛い奴め。

「いや冗談だ。でも不良はサボってんじゃねーのかな? もう」

「お前は不良でもなんでもないだろう」

 確かに……


 その時──。

 俺がせっかく阿久津を弄って遊んでいたのに、先生の野郎がもう来やがった。午後の授業というのが今から始まるらしい。


「ここの高校は号令は無いのか?」

「号令?」

 隣の席の女に聞いたら、怪訝な顔をされただけだった。


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