296話 《火炎竜》戦・前編
《火炎竜》が、後ろ脚を前に出し、近づいた。
先ほどの爆死した人を見ていたのだろう、対峙している《探訪者》たちの多くが、暴発の恐れのある《暗器悪鬼》の黒球を投げつける。
その投げ方は、それぞれ工夫されていた。
長い紐のついた大きな巾着袋にいれていたり、膠で何個かを一つにまとめて手持ち用の投石器を使ったり、陶器の壷に金属片と共に入れていたりだ。
そんな様々な形の爆発物が、《火炎竜》へと三方から投げつけられた。
翼、顔、首元に当たって爆発し、光と爆風が発生する。
この場で全て使い切る気なのだろう、次々と黒球は投げられ、爆発の煙で《火炎竜》が霞んで見える。
しかし《火炎竜》は痛快すら感じていない顔で、煙から抜け出るようにさらに一歩前に進んだ。
そして、近くにいた巾着袋を投げたばかりの人間種の男性へ、大口を開けてから首を伸ばす。
「食われてたまる――」
投げ終わった体勢から反転し、慌てて走り出した。
だが、《火炎竜》の首が伸びてくるほうが早い。
一瞬でその男は、野菜を切ったときと似たような音と共に、上半身を丸々齧り取られて死亡した。
だが、その食べられる数秒の時間で、他の《探訪者》たちの攻撃準備が整え終えることができた。
「ここからが本番よぉ。いくぜ、ヤロウども!」
「「「おう!」」」
ビュグジーは彼の仲間たちと共に、《火炎竜》へと突進する。
「ヴィディオトー」
《火炎竜》はそんな言葉と共に、口から炎を吐きかけた。
避ける間もなく、ビュグジーたちは黄赤い炎に飲み込まれる。
跡形もなく燃え尽きるかと思いきや、彼らは炎を割って出てきて、《火炎竜》の腹元まで突き進むことに成功した。
「いまだ、全力で武器を振りやがれ!」
「「「おおおう!」」」
ビュグジーが率先して剣を振るい、仲間たちがそれに追従して攻撃する。
サムライの仲間でもあるだけあり、一撃一撃で鱗を切り裂き、その下の皮膚に刃を届かせている。
だが、皮膚が分厚いのか、多少剣や槍が入っただけでは、血すら出てこなかった。
それでもお構いなしに連続攻撃をしていく姿に、他の《探訪者》たちがいきり立つ。
「続くぞ!」
「オレらだって、やってやろうじゃねぇか!」
「「「「行く!」」」」「「「やったるぜー!」」」
コンガルドとバゥニゲラの掛け声で、彼らと仲間である頑侠族三人と獣人七名が《火炎竜》へ走り始める。
竜の前面はビュグジーたちが陣取っているので、彼らは左右に別れて、側面を狙うようだ。
そんな中、出遅れた人物が一人。
見習い騎士のディスケルだ。
「くっ、やはり即応するのは難しい」
ビュグジーたちに組み込まれている筈だったのに、号令に反応できずに置いていかれてしまったのだ。
すると、彼の横に先ほど弾き飛ばされたサムライが、元気な様子で走って戻ってきた。
「ぼんやりしている暇は、ないで御座りまするよ」
そう一言告げて、ディスケルの腰を掴むと、ビュグジーたちがいる場所へと一緒に走り始めた。
「う、うお!? ま、まえ、前を見よ!」
物凄い速さで運ばれながら、ディスケルはサムライに注意を促した。
なにせ、ビュグジーたちと分断するように、《火炎竜》が翼で仕切りを作ってあったのだ。
しかも、攻撃範囲内に入ったのだろう、翼が動きだし二人を弾こうとしてくる。
「どうやら、以前に翼を一部斬ったことを恨まれているようで御座りまするな。となったもので、お主だけはビュグジーたちの下へといくで御座りまする」
「え、ど、どうぁわああああああ!?」
サムライはディスケルに脚払いをかけ、腰を掴んでいた左手で地面を転がすように彼を投げる。
すると、迫ってくる《火炎竜》の翼の下を潜り抜けていった。
一方で、サムライは長巻で防御体勢を取ると、自分から後ろへと跳んで威力を殺しながら、翼に弾き飛ばされる。
サムライが宙を飛んでいる間に、頑侠族と獣人の組、そしてディスケルが《火炎竜》の元に到着した。
「ぬうあああ!」
「『爪よ尖れ(アンゴ・アクリギス)』!」
コンガルドは自慢の長身と膂力を生かした動作で棍棒を振るい、左後ろ脚を打ち据える。
バゥニゲラは両手の爪に魔術の光を灯らせて、右後ろ脚に攻撃する。
「おら、目を回してねぇで、さっさと攻撃しろ!」
「わ、分かっておるわ!!」
そして、ビュグジーに引っ張り起こされたディスケルが、他の面々と共に《火炎竜》の腹元へ切りつける。
彼らの攻撃は、ビュグジーたちよりも劣るのだろう、数発に一回程度しか赤い鱗を貫通できていない。
その分だけ数多く攻撃するつもりなのだろう、体力切れなど考えもしない動きで、《火炎竜》を攻撃していく。
だが、《火炎竜》とて黙ってやられているばかりではない。
「……レルミジュコ」
呟くと、右前脚の鉤爪をビュグジーたちへ振るい。
それと共に左後ろ脚を上げ、足元に群がる頑侠族たちへと踏み下ろした。
「散開しろぉ!」
「退避!」
注意していたビュグジーとコンガルドが号令し、彼らの仲間たちは攻撃の手を止めて、退避行動に移る。
それでも、ビュグジーたちの仲間が二名、頑侠族が一名、攻撃に掠り怪我を負った。
「大丈夫かぁ!?」
「腕がちょっと傷ついただけで、影響ないっすよ!」
ビュグジーたちの方は軽症だったようで、直ぐに攻撃に戻る。
だが、コンガルドの仲間は中々の重症だ。
「足を潰されたか、退避しろ」
「頼みます」
足首から先をひき肉にされた一人が、傷口を革帯で縛ってから、鈍器を杖代わりにして退避していく。
《火炎竜》はその男に顔を向け、口を開く。
喉の奥に炎の光が見えた瞬間、その顔にぱらぱらと矢や投石が降ってきた。
煩わしそうに口を閉じて、《火炎竜》が顔を投げてきた人たちへむける。
「近づく度胸がねえなら、前線で戦っているやつらの援護ぐらいはしてみせろ!」
「けど、投げるばっかり気にしてちゃ駄目よ。ほら、怖いオオトカゲがこっちを見ているわよー」
コッピルとアルンコは、寄せ集めの《探訪者》十五を全員同じ場所に配置し直し、嫌がらせのような攻撃をさせている。
《火炎竜》は目を細めると、彼らの方に口を開けなおし、炎を吐き出した。
「おら、盾の後ろに隠れろ!」
「素早くやれば、大した炎じゃないわ!」
コッピルとアルンコが指示し、防火処理してある大盾を持った人たちが壁になる。
大盾は《火炎竜》の炎を防ぎ、その後ろにいる人たちに、少しの火傷すら負わせることはなかった。
「見てのとおりよ、神の尖兵さまったって、対処法が分かればいけんだよ!」
「けど、自身がない最初のうちは、ちまちま嫌がらせをすればいいわ。なにも突撃すれば良いのとは違うものね」
しきりにコッピルとアルンコが声をかけて、周囲の《探訪者》たちを励ましている。
どうやら、恐怖が薄れる遠くから攻撃させ、それを褒めたりすることで自信を付けさせようとしているようだ。
こうして時間が少し経った頃、仲間が所持していた黒球の暴発で倒れていたメルポたちが起き上がり、再集結を果たしていた。
「予備戦力は、まだ必要ないようですからね。いまのうちに、怪我の手当てをしておきましょう」
メルポの控えめな声音の指示に彼の仲間は従い、爆発と飛び散った破片で負った傷に、軟膏や包帯を巻いていく。
そうしながらも、前線で戦うビュグジーたちの様子を見て、いつでも援護に走れるように見ている。
全員がそれぞれの役割を真っ当しようとしている間、テグスたちは《透身隠套》の効果で姿を消しながら、その様子をつぶさに観察していた。
なにも、怖気づいて戦いに参加していない、というわけではない。
「みんな、《火炎竜》の前兆動作は覚えた?」
「わふっ。覚えたです」
「レアデールさんの訓練のお蔭かな~。なんとなく攻撃の予兆が分かるようになったの~」
そう、戦う際の安全を確保するため、レアデールに教えてもらった予兆を読み取ることに、全力を傾けていたのだ。
一通り、《火炎竜》の攻撃が出揃ったと見て、ここからテグスたちは攻撃に参加しようとする。
だが、アンヘイラが待ったをかける。
「私たち後衛組は前線に立っても厳しいものがありそうですよ、テグスたち前衛組みはいいでしょうけれど」
「その通りでございますね。あのような巨体でございますと、《鈹銅縛鎖》で雁字搦めにするというわけにも参りませんでしょうし」
「せ、精霊魔法でも、動きを止めるのは、難しいかなと」
ウパルとアンジィーも疑問の声を上げる。
すると、テグスは分かっていると頷いた。
「だから、ここからは二手に別れるよ。僕とハウリナ、ティッカリは、人数の少ない頑侠族が戦っている左後ろ脚に近づいて、全力攻撃で可能な限り痛手を負わせる。だからアンヘイラたちは、これをもって少し遠くで起動させて置いておいて。それで、この外套で姿を消しながら、嫌がらせのように攻撃して」
テグスが手渡したのは、《護森御笛》を組み込んだ魔道具――獣人のような耳の良い種族や動物にしか聞こえない騒音を出すカラクリだ。
それを受け取って、アンヘイラは納得顔になる。
「なるほど、嫌がらせをするわけですね、《火炎竜》に」
「け、けど。《火炎竜》って、耳が良いんですか?」
そんなアンジィーの疑問に、ハウリナが胸を張って答える。
「竜、耳いいです。寝てないときに階段を下りると、反応するの、この耳で聞いたです」
頭の上の獣耳を動かしながらの説明に、全員が一応納得した。
「じゃあ、効果が切れているから、《蛮勇因丸》を服用してから行動開始ね」
全員が一粒ずつ飲み下し、二手に分かれて移動し始める。
テグス、ハウリナ、ティッカリの三人は、こそこそと暴れる《火炎竜》の左後ろ脚へ移動。
アンヘイラたちはこの広間の出入り口付近に、あの魔道具を置きにいく。
そして、アンヘイラが魔道具を起動し、人間種の耳では聞こえない騒音が広間へと鳴らされる。
「なんだ、この酷い音は……」
「やけに大きな、静かな呼子の音ですね」
「ティオジーナソノ。キエトロヴァスラカウーゾデチウソノ」
コンガルドとその仲間たち、そして《火炎竜》が五月蝿そうな顔をした。
特に、五十二層という静かな場所に長年いた《火炎竜》は、この音が我慢ならないのか、原因を探るように周囲に顔を向けている。
やがて、音の原因がアンヘイラが置いたあの魔道具だと突き止めたのだろう、大口を開けて炎を吐きかけようとする。
そこに、《透身隠套》で姿を消したままの、アンヘイラとアンジィーが矢を放った。
虚空から突然現れたような、赤い鏃を持つ矢が、竜の口の中へ飛び込んだ。
「ギィアアアアアアアアア!」
予想外の攻撃だったのだろう、《火炎竜》が戦闘が始まって初めて、悲鳴らしい悲鳴を上げた。
しかし、矢の鏃のような小さい刃物では、魚の小骨が突き刺さった程度にしか感じないのだろう。
直ぐに恥じるように口を閉じ、まるで原因が魔道具にあるかのように、《火炎竜》は睨む。
すると、口を閉じたまま顔を上に向け、足元や腹元を攻撃され続けているにも関わらず、しばし静止する。
そして口の端から炎が漏れ出てきたかと思うと、顔を魔道具に向けながら炎を吐き出した。
どうやら、口の中を遠距離攻撃されないようにする、炎の吐き方のようだ。
魔道具は炎に巻かれ、あっさりと燃え尽きてしまう。
人間種には聞こえない音が消えたのだろう、《火炎竜》が満足そうに鼻息を出す。
この魔道具に気を取られ動きが止まっている間に、テグス、ハウリナ、ティッカリは左後ろ脚に近づいていた。
「『衝撃よ打ち砕け(フラーポ・フラカシタ)』。あおおおおおおおおおん!」
まずはハウリナが、震撃の魔術を込めた黒紅棍を力の限りに打ちつけた。
魔術なしでも赤鱗を叩き割れる技量をもつハウリナだ、魔術をかければむろん破壊力が上がる。
黒紅棍に打たれた鱗が破砕し、一直線状に皮膚がむき出しになった。
「『刃よ鋭くなれ(キリンゴ・アクラオ)』」
次にテグスが、鋭刃の魔術を塞牙大剣にかけ、むき出しになった部分へ斬りつける。
守る鱗を失っていたことと、ただでさえ切れ味の鋭い刃が魔術でさらに切れ味を増し、剣身が深々と肉を斬り入っていく。
しかし、分厚い筋肉を斬り裂いていくと、剣を降った勢いが殺され始める。
やがて骨まで達しはしたものの、巨体を支える硬さと柔軟さを併せ持ちながら柱のように太い骨を、両断することは敵わなかった。
振り返しでもう一度斬りつけるが、同じ結果に終わる。
しかし、二度角度を変えて斬ったことで肉をそぎ落とし、骨を血まみれの剥き出しにすることに成功した。
「最後の仕上げなの~。とや~~~~~~~~~」
ティッカリは右の壊抉大盾の二本杭を展開すると、力の限りにその骨をぶっ叩いた。
まるで、空から人間大の雹が降って地面に落ちたかのような音がした。
すると、ティッカリの膂力と、《不可能否可能屋》製の杭の硬さと突破力によって、柱のように太い骨に二つの大穴を開けることに成功する。
この三人の攻撃は流石に利いたのだろう、《火炎竜》が大きな悲鳴を上げる。
「クルロドォラアアアアア!?」
そして、恨みのこもった目を、左後ろ脚を攻撃していた頑侠族へ向ける。
しかし彼らも、テグスたちが姿を消しているせいで、なぜいきなり《火炎竜》が傷つき骨に大穴が開いたか理解できていない様子だ。
そんな心情はお構いなしに、《火炎竜》は口を開けて炎を吐きかけようとしてくる。
混乱からか、頑侠族たちは防火処理された大盾で身を守ることを、忘れているようだ。
テグスは直ぐに判断を下す。
「ティッカリ、前で炎を受け止めて。ハウリナ、この無駄にでかい人たちを転ばせて。僕は盾を奪って、壁になるから!」
「わかったの~」
「わかったです!」
時間がないので、テグスは荒っぽい手段をとった。
そのお蔭で、防御が間に合った。
《火炎竜》が吐いた炎は、ティッカリが掲げた壊抉大盾と彼女の鎧、そしてテグスが頑侠族から奪った大盾で完全に防ぐことができた。
しかしそのせいで、前面に立っていたティッカリの《透身隠套》の頭巾と裾が燃えてしまい、身を消す効果が失われてしまう。
「どこから出てきた?」
ティッカリが突然現れたように見えたのだろう、コンガルドがそんな疑問の声を漏らす。
テグスは大盾を返却しながら答えようとして、視線が自分にも盾にも向いてないことを悟ると、頭巾を下ろして身を消す効果を停止させた。
「そんな疑問は後にしてください。左足はもう使い物にできなくしたんですから、他のところの応援に行かないと」
「……うむ。その通り。いくぞ!」
コンガルドはテグスに驚きの目を向けていたが、大盾を受け取ると頑侠族の仲間と共に、ビュグジーたちの方へと走っていく。
そしてテグスたちも、直ぐに走りだし、《火炎竜》の脚が届かない範囲へと逃げる。
「ネィスケルプ!」
《火炎竜》は痛手を与えたテグスとティッカリ――ハウリナは消えていて見えない――を逃すものかと、巨木のように大きな尻尾が持ち上げられ、振り下ろされた。
事前に十分に警戒していたテグスたちは、予兆をいち早く察知し、尻尾の当たらない場所へ退避済みだ。
しかし避けても、地面を打った尻尾の威力に、足元が揺れる。
こけそうになるが、三人とも踏ん張って堪え、逃げ続けた。
すると、逃げている先に、地面が揺れて倒れ込む足先を怪我した頑侠族を一人発見する。
そのときテグスに、ちょっとした閃きがやってきた。
「ティッカリ、あの人を助け起こして、安全な場所まで移動するよ。僕は《癒し水》を使う準備をする」
「わかったの~」
ティッカリが彼を拾い上げてから移動し、《火炎竜》の吐く炎以外は攻撃の届かない場所まで退避する。
そしてテグスは、《癒し水》がどの程度の傷に効くかの実験に、その頑侠族に潰れた足に半量かけると、無理矢理残りを飲ませる。
「んぐっ!? な、なにをする!?」
「これをかけたり、飲んだりすると、怪我が治るはずなんだ。どう、効いてきた?」
真剣に尋ねるテグスに、頑侠族の男は押し黙り、自分の潰れた足を見る。
「痛みは、大分消えたな。それと、なにか潰れた場所が動き、直そうとしている気もする」
「ふむふむ。とりあえず、痛み止めには使えそうかな」
直ぐに潰れた足が元通りになるわけではないと分かり、テグスは満足そうに頷いた。
そして、不思議そうな顔をしている頑侠族の男に、笑顔で提案する。
「それで、もう一つ頼みたいことがあるんですけど。その前に、鍛冶魔法は使えますか?」
「あ、ああ。頑侠族だからな、武器の修復ぐらいはできる。なにか直して欲しいものでもあるのか?」
頑侠族であっても鍛冶魔法が使えないティッカリが、少し気まずそうに横を向く。
その姿を横目で見ながらも指摘せずに、テグスは男に耳打ちする。
すると、男は驚いたような顔をした後で、納得したように頷き、決意を込めた目をした。
「引き受けよう。たかが足の一本が駄目になった程度で、戦線離脱するのは惜しいと思っていたところだ」
「じゃあお願いします。じゃあ、この外套を着て移動してください。ハウリナ、ティッカリと《透身隠套》を交換してあげて」
「分かったです」
ハウリナの《透身隠套》を羽織るティッカリに、テグスは先ほど頑侠族の男にした作戦を伝える。
「相変わらず、面白いことを考えるの~。けど、わかったの~。やってみちゃうの~」
そうして、ティッカリと彼女に支えられた頑侠族の男は、《透身隠套》の効果を使い姿を消す。
しかし、《火炎竜》に痛打を与えたときに返り血がついたのだろう、さほど大きくはない血痕が空中に浮いて移動している姿が見えた。
「さて、二人の準備が整うまで時間があるから。僕らもビュグジーさんたちのように《火炎竜》に攻撃しにいかないとね」
「わふっ。どこ、叩きにいくです?」
どうしようかと、テグスが《火炎竜》の姿を見る。
そうしていると、サムライがいつの間にかに横にやってきていた。
「戦いに向かうつもりで御座りましたら、某と同道してはもらえぬで御座りましょうか?」
「別に構いませんけど、どこにですか?」
「あそこへ、で御座いまする」
サムライが指差したのは、《火炎竜》の尻尾。
「あの長く太い尻尾は今後の戦いに邪魔になる気がするで御座りまする故、早いうちに叩き斬っておきたいので御座りまする」
その懸念には同意できるので、テグスはハウリナに視線を向ける。
ハウリナが頷き返してきたので、サムライと共にあの尻尾の切断を試みることに決めたのだった。
《火炎竜》が喋った事の意訳したまとめです。
本文の雰囲気を大事にする人は、読まない事を推奨します。
「馬鹿め」
「チクチクと、痒いことよ」
「やかましいこの音は、なんなのだ?」
「口の中がチクッとしたー!?」
「足が痛いー!?」
「逃しはせん!」




