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9話 魔術を覚えましょう

 テグスはその後、移動と攻略を含めて三日で《小一迷宮》と《小二迷宮》を制覇した。

 移動優先で進んだそれぞれの迷宮内で出会った《魔物》の多くは、《小四迷宮》に出てきたものが相手だったので簡単に倒せた。

 それぞれの《迷宮主》は、二つの長い角を持つ雄の《ニ角甲虫》と、大人になって体格が大きくなり牙も伸びた《空腹猪》を相手にした。

 雄の《ニ角甲虫》は二本の角を使った牽制と、体を裏返しても角で即座に起き上がるので、テグスは思わぬ苦戦した。それでも短剣で足を切り飛ばし、動きが鈍ったところで胴体の体節の隙間を狙って刺し貫き、どうにかこうにか倒した。

 それに比べたら《空腹猪》は楽で。壁を背にして戦い、突進してきたのを横っ飛びで避け、壁に頭を打ち付けてよろめいている所を、ブスリと短剣で首元を一刺しで終了。

 その他の倒した魔物はというと。素材としても食材としても大した物は無かったので、倒したら魔石化しておいた。少し大きな砂粒程度の大きさなので、安い上に重量で量っての買取りなのであまり良い値段が付かなかった。

 《技能の神ティニクス》の像があるご褒美の間も、大した武器が無かったので交換していない。

 苔むした神像を磨いて綺麗にしても、見逃された武器は出てこなかった。

 それでもテグスは、《小三迷宮》の時は運が良かっただけだと、その結果に納得している。

 そんな今日、テグスは『一』『ニ』『三』『四』と彫金された《鉄証》を首に掛け、空が薄暗い程の朝早くに《小三迷宮》の《探訪者ギルド》支部へとやってきた。


「テグスか。どうだ調子は」

「上々ですよ、テマレノさん。四まで攻略しましたし」


 受付に座っていた壮年の男――テマレノに近寄り、テグスは首に下がっている《鉄証》を掲げて見せる。

 それを見たテマレノは、感心したような呟きを漏らす。


「ほぅ、頑張っているようだな。で今日はこれから《小五》に行くのか? それとも行った事のある《小七》か?」

「次に行くのは《小五》で、攻略したら《小六》に。《小七》は最後にしたんだ」

「そりゃまた何でだ。仮証で優遇された時とはいえ、一応は《小七》に行ったんだろ?」

「それは仮証の時の条件が、最下層の到達だったからね。だから本当に『行った』だけだし」

「あん? ああ、《小七》は珍しく、第一層が最下層扱いの迷宮だったか」

「孤児の中じゃ有名だよ。行っただけで認可の一つが貰えるって。だから先ず《小七》に行って一つもらって、次に《小一》から《小四》までの、どれかの二つの最下層に行く。そうして《中迷宮》の許可を取るのが普通だったよ」

「そうだったか。じゃあ《小五》に行って来い」


 世間話が一段落着いたので、テマレノはテグスから視線を外し、読みかけの何かの紙に視線を落としている。

 それに慌てたのはテグスだった。


「ちょっと待ってよ、テマレノさん。今日は世間話だけじゃなくて、ちゃんとした用があって来たんだから」

「あん? この短期間で四つも《小迷宮》を攻略しているヤツが、こんな朝っぱらに攻略済みの迷宮の支店に何用だってんだ?」

「ほら、あの本。魔術と魔法が載っているって本を見に来たの!」

「ん、そうか。ホラよ、目の届く範囲で読めよ」


 呆気なくテマレノはテグスに二冊の本を手渡すと、読み物に視線を戻してしまった。

 テグスはそんなテマレノの仕草に怒る様子も見せず、受付の直ぐ近くにあった予備の椅子の上に座る。

 背負子を下ろして自分のまたの間で挟んで確保し、受け取った本に視線を落とす。

 最初に開いたのは魔術の方の本だ。


「えーっと、なになに。魔術とは人間が弱い魔法を手軽に使えるようにした術で――」


 最初の数頁は、魔術の成り立ちとその苦労話が含まれた歴史だったので、テグスは斜め読みして飛ばす。


「――そんな成り立ちで生まれた魔術を、実際に使ってみましょう。先ずは安全な『飲料水』の魔術です。指に体にある魔力を集め、それを唇に当て水を想像し『水よ滴れアコヴィ・ファリ』と、魔法語で唱えます?」


 体にある魔力って何だと思いながらも、テグスは指に何かの力を集めれば良いのかと楽観し、人差し指を見つめて指に筋力とは別種の力が込められていくのを想像しながら、ムムムっと声を出す。

 そんな様子を横目で見ていたテマレノが微笑ましそうに苦笑しているが、テグスは真剣に指に魔力を込めようとし続ける。

 そしてほんのりと、何かの力が人差し指に集まったと感じたテグスは、それを口元に当てる。


「『水よ滴れアコヴィ・ファリ』!」

 

 するとほんの数滴の水が指先から生じ、当てた口元へと入った。

 それをぺろりと舌で舐め取って、初めて自分が生み出した水の触感と味を覚えたところで、つい忘れてしまった事を思い出した。


「そうだ、水を想像しなきゃいけないんだったっけ」


 失敗失敗と口で小さな言葉に出してから、また同じ様に指先に魔力を込めていく。

 先ほどよりは簡単に、人差し指に魔力らしい力が込められたので、今度は水を想像しながら呪文を唱える。


「『水よ滴れアコヴィ・ファリ』――うわブッ、ゴホェ!」


 想像したのが、逆さまにした水桶から零れ落ちる水だったためか、指先から結構な量の水が飛び出した。

 それを口で受け止め切れなかったテグスは、気管に水が入ってしまい、盛大に咽込んだ。

 あおりを一番受けたのは、テグスの近くに在った魔術の本だった。


「ああッ、お前。それ貴重な写本なんだぞ、濡らすなよ!」


 盛大に顔を塗らして咳き込むテグスを心配する前に、テマレノは貸し出した本の心配をしている。

 そんな薄情な言動に、テグスは咳き込みながらも睨みつけつつ、口に入れたのとは反対の手で本を安全圏へ避難させた。


「げほげほッ。こんなに水が出るだなんて、本に書いてなかった、げほッ!」

「おいおい、魔術をこんな威力で発動させる馬鹿がいるかよ。どれだけ魔力を込めたんだお前は」

「知らないよ。本に書かれている通りにしただけだよ」


 もう一度指に魔力を溜め、今度はコップ半分ほど入った水をイメージして、口の直ぐ近くに指を持ってくる。


「『水よ滴れアコヴィ・ファリ』――あわっ、ゴクゴク……」


 コップ一杯分以上の水が出てきて、慌ててテグスはその水を飲み続ける。

 喉の渇きどころか、お腹が水腹になるのではと思うほどの水を飲んだところで、漸くテグスの指から水が止まった。


「ゲフッ。もう今日は水飲まなくても良いかも」

「……おい。お前は支部内で魔術と魔法の勉強するなよ。なんか危なっかしいからな」

「ええぇ~、だってこの支部内でしか本貸してくれないでしょ。どうやって魔法や魔術を覚えれば良いのさ!」

「必要だと思う部分だけ書いて写せ。そして支部で迷惑を掛けるな」

「じゃあ紙とペン貸してください」

「二つで鉄貨十枚な」

「ええ、お金取るの!?」

「当たり前だ、ペンとインクならまだしも、紙は植物製でも動物の皮製でも《雑踏区》じゃ高級品だぞ」

「うぅ……はい、鉄貨十枚」


 本と同じ大きさの紙と使い古しのペンとインクで、《迷宮主》の赤魔石と同じ値段かと、テグスは妙な世知辛さを感じてしまった。

 その後にテグスは可能な限り小さな字で、魔術の本の迷宮攻略に必要だと思われるものの呪文を、紙の両面がぎっちり埋まるまで書き綴った。




「さて《小三迷宮》です」


 と誰に呟くまでも無く、第一層の端の端までやってきたテグスは、ここで魔術の練習をする事に決めた。

 なにせここに居るのは、動きの遅いジェリムだけなので、撃退するのが容易だからだ。

 それにここに来るまでの途中で、水石狙いの子供がチラホラ居たが、こんな奥まった所まで来る事は早々無い。

 なので誰も人が居ないので、魔術の勉強には打って付けの場所だ。

 それでも誰かや何かが来た時に、直ぐ動けるように背負子は背負ったままである。


「さて先ずは、灯りを得る魔術だね。ムムム……『明かりよ灯れヘラエ・ファジオ』。って、わわわ!?」


 想像しやすい火の魔術の中から、明るい火を灯す呪文を選んだ。

 指先に魔力を集中させつつ、頭の中で思い浮かべるのは、油灯ランプやランタンの明かりだ。

 呪文を唱えたら、テグスの指先から松明の炎かと思うほど大きな火が出て、危うく前髪が燃えるところだった。

 ブンブンと手を振って、テグスは指先の火を消そうとする。

 本来なら手を振る必要も無く、術者の意識で消す事が出来るのだが、初心者のテグスはそんな事は知らない。

 しかし火を消そうとする意識が上手く作用して、指先から盛大に燃える火が消えた。


「ふぅ、危なかった……次は暑い日でも大丈夫な、そよ風を生み出す魔術。ムムム……『そよ風よ吹けゼフィロ・ブロヴィ』」


 手全体から出すと良い、と書き写した紙には書いてあったので、テグスは掌に魔力が集まるように集中する。

 そして掌全体に、魔力らしき力が集まったのを確認してから、その手を壁の方へ向けつつ、そよ風の魔術の呪文を唱える。

 すると掌から突風かと思う程の風が吹き出し壁に当たり、それが四方に散って地面の砂埃を巻き上げる。


「げほげほ。うわ、目に、目に入った~~……」


 砂埃が入って目に異物感が凄いので、テグスは背負子から皮袋の水筒を取り出し、その水で目に掛けて洗った。

 大まかに目に入った砂が取れたテグスは、調子を確かめる様に目をパチパチさせる。


「まだ水はあるけど、もう半分も無いか……えーっと、『水よ滴れアコヴィ・ファリ』」


 どうせ一層にしか行かないからと、水筒の中身を補充してこなかった。

 テグスはその水筒の軽さを確かめて、ふと思いついた様に指を飲み口に入れて、飲料水を生み出す魔術を唱えた。

 すると水筒は入ってきた水の勢いにあっという間に満杯になり、入りきらなかったのが飲み口から零れ落ちる。

 それを勿体無いと、指を口に咥えて未だ出る水を飲み干していく。


「ぷはッ。さて次は、地面に穴を掘る魔術――は迷宮では使えないのか」


 使用上の注意点として書き出した中には、何故か迷宮の壁や床には魔術が作用しないというものがあった。

 それならしょうがないと、この魔術を試すのを諦め、更に火や水に風が出る魔術も後回しにして、その次に行く事にした。


「ここまでが日常生活編かつ初心者用で、ここからが中級者向けで《探訪者》なら必須な魔術なんだけど。今までのは難なく使えたし、大丈夫だよね」


 楽観的に自分の状況を捉えて、テグスは次の魔術の項目を見ていく。


「次は、身体の機能や筋力を一時的に上げる『身体強化』の術です。コツは身体全体に魔力を行き渡らせてから使うか、体の一部に集めて使用します――か、なるほどね」


 今までの事を考えて、全体的に強化するのは危険だと判断したテグスは、右腕だけに『身体強化』を掛ける事にした。

 まず右腕に魔力を十分に伝える。

 そして呪文を唱える前に想像するのは、ムキムキな筋肉が自分の右腕に付いた姿。


「では。『身体よ頑強であれカルノ・フォルト』」


 一度息を吸い、呪文を唱えて魔術を発動させる。

 だが今までの火や水に風といった、目に見えるような変化はテグスの右手には現れなかった。

 失敗かなと思いつつ、念のためにと付近にあった掌大の石を右手で取る。いや、取ろうとした。

 テグスが石に手を触れ、何時もの調子で指に力を入れた瞬間、まるでその石が砂を固めたものであったかのように、手の中でバラバラに砕けてしまった。

 ぽかんとその様子を見ていたテグスは、恐る恐る左手で近くの石を掴む。

 今度は確りと石を掴む事に成功し、テグスはホッと溜め息を吐き出す。


「さっきのは特別に脆い石だった――訳じゃ無いよね~」


 左手で上空に投げ上げた石を、右手で掴んだ途端に先ほどと同じ光景になってしまった。

 それにガックリと肩を落として落胆すると、魔術の呪文と説明文を書き写した紙を左手で引き寄せる。


「こんなの危なくて使えないよ。えーっと、魔術を消す方法は……その魔術を消すように頭の中で思い描く事ね」


 じっと右手を見続けつつ。


「これが自分の右手。コレが自分の右手……」

 

 とブツブツと独り言を呟いて、自分のありのままの右手の姿を思い描く。

 十分かなと、近くの石を握って確かめ、それがまた粉砕してしまったので、また独り言を呟く。

 都合四回そんな事を繰り返し、ようやく右手で石を持つ事が出来たので、テグスは安心感から溜め息を吐き出す。


「ふぃ~……魔術って危険すぎるでしょ。これでこの威力なら、魔法になったらどんな威力になることやら」


 しかし《魔物》への攻撃方法としては十分使用に耐えるので、テグスは再度身体強化の魔術を試していく。

 右腕にもう一回、左手にも、両足、お腹、背中へと替えていき、最後に全身の強化へ。

 一度右腕に掛けて止めた経験があるからか、それ以後は容易く魔術の効果を止める事に成功する。

 もっとも強化の度合いが強すぎるのは同じで。

 両足に掛けて一歩前に出ようとして壁に激突しかけたり、掛けた腹を試しに拳で殴りその硬さに手が痺れたりと、使い所が難しい魔術だとテグスは感じていた。


「ふぅ、次は『索敵』か。えっと、静かな水面に立つ波紋を思い描き、魔力を身体全体で出しながら呪文を唱えるんだね」


 全身に身体強化の魔法を掛けた経験で、テグスは身体全体へ魔力を行き渡らせる事は呆気なく出来る様に成っていた。

 なのでほんのちょっとそれを身体の外に出すだけで、身体からの魔力放出が出来る様に成った。


「『動体を察知パルピ・ベスタ』」


 身体から放出された魔力が透明な波の形になり、テグスを中心に水平の放射状に放たれた。

 それは迷宮の壁を透過し、さらにその奥へと突き進む。


「ふ~ん、これが索敵の魔術か。これはちゃんと使えるね」


 その波が何かを捉えた様に揺らぐ場所があるのが、何故かテグスには分かった。

 恐らくこの一層目の隅から隅までの感知を終えた索敵魔術からは、かなりの数の動く物の反応が返って来た。

 しかしテグスはその結果に、少々納得の行かない気分になった。


「これじゃあ、相手が人か《魔物》か分からないよ?」


 索敵魔術を使用した時、テグスはその反応が何を感知しても大体同じな事に気が付いた。

 これでは《魔物》を相手しようと迷宮を進んでも、他の《探訪者》に当たってしまう可能性がある。


「でも《魔物》だけを探知するような魔術は無かったし。これが普通なのかな?」


 テグスは今までの魔術とは違い、索敵魔術の使い易さに、その問題点を棚上げした。

 そして次の魔術に取り掛かる。今度のは『隠形』の魔術だ。

 索敵魔術が身体の外へと魔力を伝えるのに対して、隠形魔術は身体の周りに纏わせた魔力を緩衝体と換えて、周りからの認識を阻害する魔術だと書き写した紙に書いてあった。

 コツとしては、身体の周りに硝子があり、周りはそれで自分を認識できないと想像すると書かれていた。

 テグスは硝子は色の着いた物しか見た事が無かったので、冬場に水瓶に張った薄氷を想像しながら、身体に魔力を纏わせる。


「『存在を薄くエコヂスタ・ラバト』……」


 テグスは隠形の魔術という事で、雰囲気作りから呪文を声を小さくして唱えた。

 しかしテグス自身には、その魔術が確りと機能しているのか良く分からない。

 なにせ手足を見下ろしても、別に身体が透けて見えるわけではなく。

 かといって、テグス以外にこの場所に居る人など居ないので、気軽に尋ねる事も出来ない。


「うーん、まあ良いか。次に行こう次に。ってここからは上級編だね」


 身体の周りにある氷を割るのを脳内で想像し、隠形魔術を消したテグスは、上級編と銘打たれた部分を読み進める。


「えーっと。ここでは新しい魔術ではなく、呪文を唱えずに魔術を使う方法を書き記す。って呪文必要ないの?」


 疑問に思いながらも読み進めて行くと、『無詠唱』と名付けられたこの技法は、幾つかの短所があることが分かった。

 その中でも重要そうなものは三つ。

 先ず、魔術の威力が落ちるらしい。

 次に、魔力をより多く使うらしい。

 最後に、想像力が呪文を唱える時より必要で、発動しない人のほうが多いらしい。


「まあ、なんでも物は試しだよね」


 出来る様になった魔術から、安全で明確に違いの分かる索敵魔術を選び、無詠唱で使用してみる事にした。

 呪文を唱えるときと同じ様に魔力を使い、同じ様な光景を思い浮かべるが、魔術が発動する素振りは無い。


「たしか魔力を多く使うらしいし、もっと詳しい絵で想像しないと……」


 今度は魔力をもう少し多めに使い、はっきりと穏やかな水面に生まれた高い波紋が伝播する想像をする。

 すると索敵魔術が発動し、テグスの身体から離れた魔力の波が、迷宮内を水平に進んでいく。

 しかし呪文を唱えた時より進行速度は遅く、更には半分程の範囲までしか届かなかった。


「もうニ、三回、試してみよう」


 想像する絵は同じままに、魔力を使う量を多くしてみたり少なくしてみたりして、無詠唱で最低限に必要な魔力を探っていく。

 最終的に分かったのは、当初の三分の一程度の魔力でも発動したが範囲は狭くなり、四分の一程度になると発動しなくなった。


「……もしかして魔力を使いすぎたから、灯りの魔術とかがあんな事になったとか?」


 物は試しと、最初の三分の一ほどの魔力を指先に集め、灯りの魔術を使用してみた。

 松明の炎のようだった火の光は、ランタンの火よりもやや大きい程度で落ち着いている。


「だったら魔力を使いすぎるとどうなるか、書いといてくれないと!」


 不親切だと、手元にはない魔術の本に対して愚痴を言いつつ、今までの魔術を少なくした魔力でお浚いしつつ、読み飛ばした魔術も練習する。

 結果として紙に書き写した魔術で、更に『乾燥』『清潔』『冷却』『鋭刃』は全て出来る様になった。

 更に無詠唱で魔術を色々と試していて、テグスは気が付いた事があった。


「皆から足が速いって言われてたけど、これって無詠唱で足を強化してたからみたいだ」


 そうテグスが思ったのは、何もイメージしなくてもすんなりと足を強化できた事と、走り出した感触が同じだったためだ。

 それは兎も角として、この魔術の感触からすると、『穴掘り』と『隆起』の魔術も迷宮以外では使用出来そうだと、テグスは予想する。

 早速迷宮から出て、適当な場所を探して魔術の練習をしようと思った所で、ふと書き写した紙の最後の一文を思い出した。

 紙を見て確認すると、そこにはただ簡素な勧誘の文字があった。


『最後まで出来たり出来なかったりしても、《人間種》は次に魔法を学ぶ事をお勧めします』


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