第3話、塔での出会い
遅くなりました!
お気に入り件数2になりました。ありがとうございます。
受験生って大変です。
不定期ですが、よろしくお願いします!
「ふぁ~。」
「あっ、おはよう。お姉ちゃん。いまご飯作ってるからね。」
「えっ、もう朝?」
「そうだけど。今、7時30分だよ。」
(あちゃ~。寝落ちか。ん?なんか違うな。)
「お姉ちゃん。きっと、ログアウトのときの眠気のまま寝ちゃったんだよ。」
「そっか~。」
「夜、見に行ったらすでに爆睡してたから。できたよ。」
「うん、いただきます。」
「召し上がれ~。」
「美味し、さすが九葉。」
「それほどでも、あっ、そういえば霖さんから電話来てたよ。」
「オッケー。後で掛け直しとくよ。」
二人で朝食を取ったあと霖に電話を掛ける。
「もしもし。零夏だけど。」
「おはよう零夏。朝早くに悪いね。」
「嫌々だけどね。」
「何でっ? じゃなくて。」
「で、何の用事?」
「ほら、昨日、8時に集合って言ってたじゃん。」
「うん。」
「私から言ったんだけど、ごめん。行けなくなっちゃって。」
「リアルの用事?ゲーム内での人付き合い?」
「えっと・・・・・。」
「人付き合いね。わかったよ。じゃあまた今度ね。」
「うん。それじゃ。って何気に人の心を読むなっ!電話越しで。」
「霖は分かりやすいから。」
「単純ってこと?結構傷つ・・・。」
プツンッ ピーピーピー
(鬱陶しくなってきた。)
プルルルルル、プルルルルル
「はい、笹川です。」
「零夏~。いきなり切るなんてひどいよ~。」
「ごめん、鬱陶しくなった。」
「それ謝る気ないよね。」
「何で謝る必要がある?」
「そこは謝ろうよ。」
「他に用事があるの?」
「ないよっ。何となく掛けました。」
プツンッ ピーピーピー
プルルルルル、プルルルルル
「はい、笹川です。」
「だからっいきなり電話を切らないでって。」
「何も用事ないならいいでしょ。」
「うん。でも、別れの挨拶くらいしようよ。」
「ハイハイ。じゃあね、もうわたしの携帯に掛けてくんな。」
「ちょっ待って、それっておかしく・・・。」
プツンッ
「はぁー。」
「ため息ついたら幸せが逃げちゃうよ。」
「この程度で逃げる幸せなら願い下げだよ。」
「そんなこと言わないの。」
プルルルルル プルルルルル
「あれっ私に電話?はい、笹川です。」
「九葉ちゃん。あのお姉ちゃん説得してよ。」
「霖さん。わざわざ私に掛けてきたんですか。」
「もちろん、零夏はもう聞く耳持たないから。」
「それって霖さんが悪かったり。あっ、お姉ちゃん!」
九葉から携帯を取り上げる。
「ない。私は悪くない。」
「へぇー、悪くないんだ。自覚ないの?」
「えっ?いつのまに、妹ちゃん助けてよー。」
「じゃあ、またね。ゲーム内なら話してあげるよ。」
ピッ ピーピーピー
「霖さん大切にしなよ。」
「こんなことするのも霖だけだよ。面白いから。」
「昔から、そうだしね。でも、なんの用事だったの?」
「今日集まるの行けなくなったって。」
「忘れてた。ごめん、私も行けないよ。」
「良いの。わたしも行けなかったし。」
「なら、今日も別行動だね。もう8時か。約束あるから、先にWWO始めとくね。」
「うん。じゃあ。」
(わたしもそろそろ入るかな。)
部屋に戻り、ナーブリーダーを装着して起動する。
「ウェポンワールドオンライン。リンクスタート。」
「ふぁ~。」
「大きなあくびね。」
「ふぇ?わっ、レノさん。早いね。」
「この辺りの情報を集めてたのよ。もうちょっとするつもりだったんだけど。」
「それじゃ、探索でもしてみる?」
「出現モンスターは、〔アンデットソルジャー〕。適正ステータスランクはCよ。いくら武器があり得なくても、きついわよ。」
「さっきので経験値が上がってて、今は、あれじゃなくてもC-なんだけど。」
「装備ありの私より上なんて。卑怯ね。」
「卑怯って言われても。」
「私は、D++。ちょっと頑張ればなんとかなるわね。もし囲まれたら、あなたの弓で全部吹っ飛ばせばいいしね。」
「そうだね。行こう。」
二人揃って安全地帯を抜ける。
「どこに向かうの?」
「城塞都市って言うからには、城か塔があるでしょ。」
「あれだね。」
都市の中心部に高くそびえる塔を指差す。
「そうね。勝てるかしら。」
「なんとかなるよ。ほらお出ましだ。」
建物の影から三体のアンデットソルジャーが出てきた。
「気を付けて、二階から狙われてるわ。」
「嘘っ。」
上を見上げると弓で狙われていた。
「アンデットアーチャーね。」
「僕が、上の弓兵を倒すよ。兵士よろしく。」
「それでいいと思う。作戦開始。」
言うか否や、ソルジャーに向かって走り込んでいった。一体目に右手のパンチを入れる。
(よしっ。僕も。)
弦を引き絞り矢を放つ。
ドゴッ カラカラカラッ
矢を当てただけで崩れていった。
(これはいける。)
ヒュンヒュンヒュンッ
ドゴッバキッパキッ ガラガラガラ
三体連続で倒していく。
「やるわね。」
「レノには負けるよ。」
レノは二体目も楽々蹴り倒し、三体目に右ストレートを打ち込んでいた。
「すぐ終わらせるね。」
ドゴッガンッミシミシッバキッ
(うわぁ、テレビだったら、放送禁止かかりそう。)
「ふぅ。なかなか手強かったわね。」
「そうは見えなかったけど、お疲れさま。」
「これでも疲れてるのよ。実際、剣とか当たるの怖いしね。」
「それは、分かる気がする。相手の矢が飛んできたら、当たらないって分かっても避けようとしちゃって。」
「それが普通なんだけどね。」
「じゃあ、敵もいないし進もうか。」
その後も、次々と出てくるソルジャーやアーチャーを倒しながら、塔の門まで来た。
「これを上るの?エレベーターあるかしら。」
「無いと思うよ。」
「言ってみただけよ。行くわよ。」
「ちょっと。」
レノが門に触れると自動的に開いていく。
「ほら行くわよ。」
「危ないっ!」
入ろうとしたレノに上から矢が飛んでくる。
「スキル:オーラシールド。」
レノの周りに光の赤いドームができる。
カキンッカキンッカキンッ
「大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。」
「さっきのは?」
「モンクのスキル、オーラガードよ。三秒だけ遠距離の攻撃を完全に遮るのよ。最終手段なんだけど。」
「最終手段?」
「SP全消費、リキャストまで30分よ。最終手段と呼ばずして何て呼ぶの?」
「確かに、そうだね。」
「使っちゃったのも事実だし、少しの間うまく戦えないと思うから。よろしくね。」
(うわぁ、最後にハートがついてそうだ。)
「良いよ。任された。でも、自らトラップに突っ込まないようにね。」
「ちっ、善処するわ。」
「オッケー、進むよ。」
それから、古典的なトラップに引っ掛かりながらも塔の半分くらいまで登ってきた。目の前には巨大な扉がそびえている。
「やっと半分ってところね。」
「誰かさんのせいでね。」
「何よ。」
「どこかのお嬢さんが一つ一つわざわざトラップに引っ掛かってくれたお陰で、確実に倍くらいの時間が掛かってますから。」
「君って、ほんとに嫌味しか言えないのかしら。」
「その代わりにレノと一緒にいた時間が長くなったけど。」
レノはかぁっと頬を赤く染める。
「どうかした?」
「な、何もないわよ。」
「ふーん、何もないの。」
「ほんとにずるいよ、君って。」
「よく言われるよ。特に女子に。」
「くっ。落ち着け、私。それにしてもこの扉は、何かしら?」
「雰囲気、よくあるのはボスの部屋でアイテムに制限が掛かる、的なところだよね。」
「そんな、某VRMMOじゃあるまいし。」
「一応それも考慮しとこう。実際あるかもしれないし。」
「そうね、考慮に入れとくぐらいなら。」
「開くよ。」
「うんっ。」
ギギッ ゴォーッ バタンッ
「入るよ。」
レノは力強く頷く。
「GO!」
タタタタッ カチャッ
中に駆け込みすぐに武器を構える。
(・・・・・?)
「何も起きないわね。」
「あれは何?」
ホールのような広い部屋の真ん中に薄紫に光る正八面体のクリスタルが浮いている。
「きっとあれよ、あの某ジブリ映画に出てた。」
「持ってたら飛べるようになるあれか。」
ガクッ
「何でこけたの?」
「ボケに乗ってどうするの。ツッコミなさいよ。」
「今の、ボケだったの?」
「確かにキレもないし面白くもないわよ。」
「ハイハイ。で、あれは?」
「転送石よ。最後に立ち寄った街に転送してくれるの。」
「そんな便利なものがあるのか。じゃあ、帰ろっか。」
「駄目よ。まだこの面のボスを倒してないわ。」
「倒す気だったの?」
「もちろん倒さないと。ボスドロップだってレアなものばかりだそうよ。」
「じゃあ進む?」
「うんっ。」
ギギッ ゴォーッ バタンッ
反対側の扉を開くとフィールドの雰囲気が変わった。
「なんかお城みたい。」
「うん。ここでもモンスター出るのかな?」
「たぶん出るわ。今までよりずっと強いのが。」
「気を引き締めないとね。」
螺旋階段を上ると目の前にまっすぐな廊下に出る。その真ん中に全身甲冑の騎士が立っている。
「あれは?」
「中ボス的なものだと思うわ。」
騎士から声が聞こえてきた。
「我はトラゴニア王国、近衛騎士団騎士団長、トライス。ここより先は王族のみ通ることが許される。今すぐ立ち去れ。」
「トラゴニア王国ってゲーム内で三百年前に滅んだ王国よ。」
「だから古代城塞都市か。」
「で、きっとその王様がこのフィールドのボスよ。」
「じゃあ、ボス戦をするには・・・。」
「ここを通らないといけないようね。」
「すみません。僕たち、トラゴニア王に謁見するためにきたんですけど。」
「許されぬ。私は、誰もここを通すな、と命令を受けている。」
「ただ会いたいだけなんですけど。ご病気か何かですか?」
「知らぬ。早く去れ。去らぬなら武力によって排除するのみよ。」
シャキンッと腰の剣を抜く。
「待ってください。僕たちは闘うつもりはありません。」
「いや、いっそ戦いましょう。倒したら堂々と通れるわ。」
「去らぬか。貴様らに恨みはないが命令には逆らえぬ。覚悟!」
ヒュンッ ザスッ
振り下ろした剣が床に刺さる。
「戦闘体制!」
左手を前に伸ばし右手で矢筒から矢を抜く。
ウィンッ
黒い弓を構える。
「来るわよっ。」
「うん。」
ヒュンッ 横なぎに剣が襲ってくる。動けずにかすってしまう。
「うっ。」
「ちょっと。避けなさいよ。回避ぐらいしなさい!」
「この弓装備してたら動けないんだよ!」
「なら、一回装備解除しなさいよ。死んだらどうするの。」
「ごめん、戦い方変えるよ。」
レノにこそっと耳打ちする。レノは、頷くと距離をとった。僕は両手で上段に構える動作をする。
ウィンッ
「ちょっと、何でそんなの持ってるのよ。」
走りながらも叫んでくる。
「いやちょっと。」
僕の両手には重さ無視の攻撃力重視の大剣が握られている。
(この距離なら当たる!)
「とりゃぁぁぁぁぁっ!」
ヒュンッ カンッ
振り下ろした大剣は、トライスの剣に受けられてしまった。
「その程度で王に謁見しようとしていたのか。」
「今だっ!」
「えりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
レノが真後ろから鎧の薄い首辺りに蹴りこむ。
「甘いわっ。」
裏をかいたはずがトライスは、レノに目も暮れずに蹴りを左腕で受け止めた。
「嘘っ!なーんて。」
「何!」
僕はすでに大剣を離し、堕天使の破壊弓を構えていた。
「スキル、絶焔の矢、輪廻の矢、永遠の矢、誘導の矢、ウィークシュート発動。レノっ、避けろっ!」
「うんっ。」
「謀ったなぁ!」
「その通り、その剣には相手の移動障害がかかるようになってる。降伏するならこの矢は放さないで上げるよ。」
「早く降伏しなさい。私たちだって貴方を攻撃したくはないのよ。」
「仕方があるまい。分かった、降伏しよう。武器も渡す。」
「じゃあ、王の間まで案内してくれますか?」
「分かった、案内しよう。」
トライスは、鎧を脱ぐといかにもな青年が出てきた。
「自己紹介がまだだったな。」
「何を言ってるの?貴方はトライスよね。」
「ええ、確かに。」
「で、貴方は近衛騎士団長だよな?」
「まだ、説明不足なんです。改めて。私は、トライス。近衛騎士団の団長であり、この国の第一皇子でもあります。」
(・・・・・・・・?)
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」」
次の話は、もう半分くらいできてますのでちょっとははやく投稿できると思います。
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