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奏-かなで-  作者: りさ
1/1

に:SIDE 奏

裕は、私より15歳も年上であり、私の恋人。


仕事は、本を書いている…らしい。


なんでも、20歳の時にすごい賞を貰って以来、飛ぶように裕の本が売れて映画化された作品が4本もあるらしい。


ま、私には関係ないけど。



裕は、扉の所で佇む私に気がつき、おはようと言った。


私は笑った。



裕も笑った。



裕の笑顔はとても上品だから、私はいつも見とれてしまう。



「奏、今日はなにもないの?」毎朝同じ質問をする。


そして、私は毎朝同じ返事をする。



「ないの。」



裕はソファーから立ち上がると、私の頭を撫でた。


裕の優しい目が私を捕らえる。



「今日も本、書くんでしょ?」



私は裕の仕事の時間が大嫌いだから、いつもだだをこねる。



「奏のためにね。」



裕は抱きしめる。


私より20センチも上から、優しく。


何より、この瞬間が悲しいのなんて知りもしないで……


「今日は来るの?」



裕は、私の髪を撫でた。

ん?とだけ言って、適当にごまかしている。



「来るんでしょ?嶋田さん。」



裕はくすっと笑って私から離れ、タバコに火をつけた。



「奏は嫌いなの?」



私は首だけで返事した。だって、裕のタバコ吸う時の手が綺麗で大好きだから…。



「悪い人ではないんだけどね。」



白い煙りが空気に熔けてゆく。


そもそも、嶋田さんとは、裕の担当さんで裕をいち早く見つけた…言わば、産みの親みたいなものらしくて、締め切りでもないのによく家にくる人。

やけにスタイルがよくて頭の良い、美人な人。


そして私の天敵。


絶対、この人は裕を狙っている。



「さっ!朝ごはんでも食べようか?……って言っても、もう昼か。」



裕は白くて綺麗な腕を天井に伸ばす。



「お腹空かない。」



「え?だめだよ奏。ご飯は栄養なんだから。」



「知ってるよ。」



裕はくすりと笑う。


なんで、こんな無愛想な言い方に笑うのかわからなかった。


でも、裕が笑ったのが嬉しくて、私も笑った。



裕が流していたボリュームの小さいラジオが、お昼を告げた。


「外に行くの?」



私は暑さに負けてクーラーの下に移動した。



「外がいいの?」



裕はタバコを灰皿に押し付けて、ふぅっと煙りを吐き出した。



「裕は?」



裕は、そうだね…、と言って窓の側に立った。


裕は大きい。

私も小さい方ではないはずなのに、裕と並ぶとまるでチビに見える。


そのうえ、裕はスタイルがいい。


以前、モデルをやらないか?と言われたらしい…

イヤミな話し。



「1時には嶋田さんが来るから、コンビニにでも行く?」



裕は、にっと笑った後で、奏のコンビニ、と付け足した。


裕はやたらと私の働くコンビニに行きたがる。

当然、自分があの『越前裕』であること、そして私の彼氏である事を隠して…

みんなには[叔父さん]と言ってある。



「…嶋田さんになんか買うの?」



裕は首を横に振って、行こう、と足早に玄関に向かった。

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