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攻撃 (2)

 更に数日が経ったが、何者かの攻撃は相変わらず続いていた。一つ救いなのは、被害者が一人も出ていない事だ。パトロールは強化しているが、その裏をかく様に毎日被害は拡大して行くのだった。


「どうなっているんだ。俺達だけで無く、警察も多く巡回しているって言うのに」


「民間の方達もパトロールしておりますのに、私も今夜から加わりましょうか?」


「いや、流輝には何かあった時の為に、残っていて欲しい」


「そうで御座いますか、畏まりました」


「じゃあ。私の護衛外してくれて良いわ」


 すかさず瑞希が口を挟む。


「それとこれとは別だよ、瑞希」


 とは言ったものの人手が足り無いのも事実だった。隣の町にも被害は拡大している。


「じゃあ…葵ちゃんに護衛を頼もうかな」


「えっ? どうして葵ちゃん? 葵ちゃんは普通の女の子でしょう?」


 あっ、しまった。葵ちゃんがウルフ族だって事を瑞希は知らないんだった。


「でも……強いから…ねっ?」


「確かに。葵ちゃんは強いけど……」


 ねっそうしよう。とミラルドは携帯を取り出し葵に電話を掛ける。


「と言う訳で、葵ちゃんお願い出来るかな」


『はい。宜しいですわ』


「それともう一つ。銀牙にもパトロールに参加して貰えないかな」


『解りましたわ。参加させます』


「有難う。助かるよ」



「よし、これで安心だ。葵ちゃん引き受けてくれたよ」


 携帯をしまいながらそう言うミラルドに「大袈裟じゃ無い?」と瑞希は言う。そんな事無いよ。大事な事だよとミラルドに言われ、あっ……有難う。と、はにかみながら瑞希はお礼を言った。






「瑞希ちゃんの護衛は解けたかな」


 桜ヶ丘学園前に立つ樹の上から見張っていると、銀牙と葵と瑞希が出て来た。葵の家の車が静かに停車し三人を乗せて走り去った。


「………」


 二人が護衛に就いたの? はぁ、中々一人に成らないな……。どうするか……。早く襲わないと黒樹が煩いよな‥。今度は新都市で騒ぎを起こしてみるか。


「よし。……新都市に移動するか……」


 涼は、ヨッコラショと立ち上がり、林の中へ消えて行った。




 次の日のニュースで、ミラルド達は新都市の事件を知る事と成った。それから毎日破壊は繰り返されている様だ。調査の為にウルフ族の半数を新都市に送り込まなければならなく成った。


「涼もまだ見付かって無いって言うのに。どうなってるんだ」


「本当で御座いますね。凶族の者が騒ぎを起こしているのでしょうか」


「そうかも知れ無いな。十分気を付ける様に皆に伝えておこう」


「はい。そうで御座いますね」




 涼は、真夜中に新都市で騒ぎを起こした後、日が上ると桜ヶ丘に戻って来ていた。今は夕暮れ時。


「さて、瑞希ちゃんは一人に成ったかな~」


 屋根の上から瑞希の家を覗いていると、冴子が慌ただしく家を出て行くのが見えた。



「おっ? 冴子さんが出掛けたと言う事は瑞希ちゃん一人?」


 涼は注意深く辺りを見回す。ウルフ族も葵ちゃんもいない様だ。


 ピンポーン。はーい。と言う声の後に、ガチャガチャと錠の開く音がする。「よう!」と涼は軽く右手を挙げる。


「あっ、涼さん! 皆捜してるんですよ! どこに……」


 興奮気味な瑞希の言葉をまぁまぁと遮り、瑞希ちゃん落ち着いて! と家の中に押し入った。上がっても良い? 涼はニコニコしながらそう言う。うっ、うん。どうぞと涼をリビングに通した。


「涼さん、どこに行ってたんですか? 美咲さんもミラルドさんももの凄く心配して、皆で捜してるんですよ!!」


 瑞希は凄い剣幕で捲し立てる。


「ゴメンネ~瑞希ちゃん、心配かけて~」


 と両手を合わせる涼を見て、徐々に落ち着きを取り戻した。瑞希は、…私じゃ無くて美咲さんに言って下さい。と尻すぼみ気味に言った。


 お茶煎れて来ます。と台所に立ち珈琲を淹れる。はいどうぞと涼の前にカップを置いた。「有難う。」とカップを持ち上げる涼に


「何か雰囲気が違うと思ったら、涼さんメガネして無いんだ」


 と、瑞希が指摘する。


「あぁ……これは……」


 ウルフ族に戻ってから視力が良く成ったから、この前美咲を抱いた時に外してそのままだったな……「コンタクトだよ」とニッコッと笑う。


「処で瑞希ちゃん、実はさ…」


 本題に入ろうとした時に、バタバタと玄関から音がした。驚いてそちらを向くと、リビングのドアを興奮気味に開ける葵の姿があった。


「外から、涼さんの姿が見えましたので……。ハッ、美咲さんに連絡しなければ」


 と慌てて携帯を取り出す。涼はチッと舌打ちし、葵から携帯を取り上げた。


「何をなさるんですか、涼さん!」


「あっ、えっと…。悪いな」


 と、涼は二人に催眠をかけ瑞希の家を後にした。念のため涼は年配の男に変化して歩いた。何度かウルフ族らしき人とすれ違った。はぁー、次はいつ瑞希ちゃんと二人になれるかな……。はぁー、美咲に会いたい……。歩きながら涼はハッと立ち止まった。


「……さっき、瑞希ちゃんを襲えたんじゃ……」


 はぁ~~~~と頭を抱える涼だった。










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