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銀牙

敵 登場です!



人物紹介


流輝 ミラルドの秘書。

身長 180㎝ スレンダー。

髪 黒色 短髪。

瞳 茶色。

性格 物腰が柔らかで 人が良い。 時々 暴走します。



杉本瑞希 高校二年生。

身長 160㎝ 中肉中背。

髪 茶色。肩の長さ。癖毛

瞳 茶色。

性格 明るく、何処にでも居る普通の子。

総樹(樹の神)に 一目置かれる。

ウルフ族の 鍵と成る女の子。


 5階建てのアパート。最上階、 東向きの角部屋。夕方四時、 銀牙(ぎんが)はベッドの中で目覚めた。

「あ~。寝足りねぇ~」

 ベッド脇のカーテンを開ける。

「雨か…うっとうしいな。」

 銀牙は、ベッドから抜け出し素肌に何も(まと)わず シャワー室に向かった。蛇口をひねり、頭から湯をかぶる。

「ん~、気持ち良い~」

 ひとしきりシャワーを浴びた後、無造作に身体の水気を拭き取り頭をタオルで拭きながら、携帯を取り出し電話する。銀がはまだ何も着ていない。


「あっケイコちゃん? 俺、(きば)だけど、今日お店来られる?」

 『牙』とは、銀牙が働くホストクラブでの源氏名である。

「マジ? 同伴してくれるの?」

「うん、うん。じゃあ、ファミレスの前で、六時だね。食事してから……。うん、じゃあ後で。」

 電話を切って「よっしゃー」と左手の拳を、天井に向かって突き上げた。


 小麦色に焼けた、引き締まった身体の上にシャツを羽織る。左右の耳にはピアスが五個、頭上は短髪、後ろは長め、茶色の中に銀色がまだらに混ざっている。ブランドのスーツと靴で身を固め、五時半にアパートを後にした。


 銀牙はウルフ族の分家の者だ。五百年前に戦死した者達の復讐を、心に誓った。当主を捜し出し、その命と紋章を奪う為にこの街にやって来た。

 ウルフ族は、愛した人間と一生を共に過ごす為に、永遠の命を与える事が出来る。しかし、相手が誰でも良い訳ではなく。ウルフ族でしか分からない、適合者でなければならない。

 儀式はごく簡単なもので、愛する人の首筋に自分の牙を食い込ませ、体液を少量注入するだけで。適合者ならば 永遠の命。そうで無ければ、中毒症状が出て痙攣を起こし、最悪の場合死に至る。

 銀牙は、人間の愛情を手っ取り早く手に入れる為に、ホストクラブで働いていた。酒を飲んで女の相手をするだけで、金を稼げて妖力も手に入る。生き易い世の中になった。

 昔は生きて行くのが難しかった。あの頃は何でもやった。でも、結局は夜の仕事が 一番やり易かった。俺にはこんな場所が似合ってるって事だよな。

 とは言え、 偽物の愛情は持続性が無く、不安定でパワーに欠ける。早く本物の愛を手に入れないと。先輩ウルフの話しでは、本物の愛情を手に入れると妖力のパワーが違うらしい。身体中に漲って来る感じって云うか、溢れ出るって云うか、全く違うらしい。俺も早くそんな体験をしてみたい。


 ――――――適合者――――――


 やっぱり、これを探す方が先かな。ウルフ族当主を探し出したとしても、俺が弱かったら紋章も命も奪えないもんな……

 よし、決めた。女を探そう。女!!


「ケイコちゃん今日泊まってく?」

「ええ、良いわよ」

「よっしゃ~、じゃあ一緒に出ような!」

 二人は早目に店をでて、銀牙の家へ帰って行った。

 朝目覚めてみると、ケイコはもう出掛けた後だった。

『夕べは楽しかった。又誘ってね』と、携帯にメールが入っている。

 何でも、どこかの社長秘書をしていて金には不自由しないらしい。でも、仕事が忙しく出会いが無いので、たまにこうしてホスト達を金で買っているのだった。

 色んな女がいる。

 ……この世は金が全てだな。

 俺は、女なんて妖力を生み出す為のただの道具にすぎない。ずっと、そう思って生きて来た。これからもその考えは変わらない。

 大人の女には、ホストクラブや繁華街で会えるけど、そうだな。まずは、高校にでも行ってみるか。


 銀牙は、身仕度を整えてアパートを出た。取りあえず、西に向かって歩いて行く。ずっと登り坂が続く。この先に、高校って有るのかな? 頂上付近は緑が多くて、公園っぽいけど……

 坂を上がりきり、少し平たんな道が続く。右手に『桜ヶ丘学園』というプレートが見えた。

 うーん、高校かな? しばらく様子を見ていると、次々と学生達が登校して来た。おっ、可愛い子多いな。男もいる。共学か、よし! と、品定めしていると、学生たちに変な目で見られた。そして不審者と間違えられ、教師に引きずられて、学園内に連行された。


 事務室で「お前は誰だ」「身分証を見せなさい」とわめかれたが、めんどくさいので、教師たち全員に暗示を掛けて、学園長室の場所を訊いた。ついでに案内もさせる。こういう時にウルフ族は便利だ。記憶を操作させたりできるからな……

 ノックもせずに部屋に入り、驚いている学園長に向かい両手をかざす。妖術を使い、自分を転入させる様に操った。

 いつもは青年の姿をしているので、もっと若く変化する。

 学園長に用意させた制服に着替える。鏡の前でポーズを決めた。「どう?」と訊くと「お似合いで御座います」と、操られた学園長が誉めた。

 「俺をこの学園に編入させろ」と言うと「分かりました」と、学園長が二年の教室に銀牙を連れて来た。


 教室に入り、自己紹介しニコッと微笑む。女の子達の黄色い声援が飛び交った。やっぱ俺って、人間に馴染むの上手いね~、天才的! さてと。女、女、誰から行こうかな~♪




 瑞希の通う高校は、街から見上げた所の高台に建っており。幼稚園から大学までの一貫教育で、部活動にも力を入れている。



 瑞希のクラスに転入生がやって来た。

 名前は、山本銀牙。

 茶色い髪を短めに切り。だらしなく着た制服の胸がはだけていて、動く度にチラリと小麦色に焼けた裸が見え隠れする。

 見た目はちょっとワイルド。少し笑った口元には八重歯のような、牙のような……?

 格好良さから、クラスの女の子達には大人気だった。頭も良く、スポーツも何でもこなす。見た目のワイルドさとは裏腹に、物腰が柔らかで笑顔を絶やさない。そのお陰で、男女問わずすぐに沢山の友達が出来たようだ。


 山本銀牙は いつも女の子達に取り囲まれて、「彼女居るの?」「誕生日いつ?」「何処から転校して来たの?」と、毎日質問攻めに合っている。でも瑞希には全く興味が無かった。ワイルドでちょっとは格好良いけど、断然ミラルドさんの方が魅力的だ!!




 この学校に入って一週間が過ぎた。近寄って来る全ての女子の瞳を覗いてるけど、適合者ってなかなかいないものだな~。後1ヶ月、この学校に通って適合者が見つからなかったら、他の学校に行ってみるか。それにしても、このクラスには俺に興味を示さない女が二人もいる。有り得ない。皆、俺を好きになる筈なのに。フェロモンも目一杯振り撒いているのに。俺になびかないなんて、本当に有り得ない。

 男嫌い、とか?

 ここには若い教師もいるから、そっちも確認しておくか。ちょうど前から女教師がやって来た。細い体で肩にかかるストレートの黒髪。赤のブラウスに黒いカーディガン、それに黒のタイトスカート。なんつうか知的で色っぽいな。ん? ……あの先生……もしかして ケイコちゃん? うっそ、マジで? 社長秘書だって言ってたのに~。

 この前、エッチしたばっかじゃん。気まずいな……ホストの俺とは気付かないだろうけど……

 と思いながら、女教師とすれ違う。

「ちょっと君」

 呼び止められてしまった。

「……ハッ、ハイッ」

 緊張する。

「あなた、どこかで会った事あるかしら……、もしかして、お兄さん、いる?」

「いっ、いえ 一人っ子です……」

「そう……まっ、良いわ。それより、制服はもう少しきちんと身に着けなさい!」

 と、女教師は、一番上のボタンを留め、ネクタイも きつくしめ直してくれた。

「よし、これで良いわ」

 でも本当に似てるわね。と言いながら女教師は歩いて行った。その後ろ姿を見送っていると、クラスの男子達が寄って来た。


「良いな~銀牙。ケイコ先生に ネクタイしめてもらって!」

「俺達の憧れの先生なんだぞ! この~っ、羨ましい奴め!!」

 と、銀牙は思いっきり首を絞められる。笑いながら「よせよー」と抵抗すると容易くその腕は外れた。人間の力なんて、大した物では無い。


 午後四時。銀牙の携帯の着信が鳴った。表示を見てみると、ケイコちゃんからだった。

「え゛っ、ケイコちゃん……」

「あっ、ケイコちゃん……どうしたの?」

『牙君 ……えっと……あなた、弟っている?』

「いや、いないけど、それがどうかした?」

『今日、似た人を見かけたから……』

「俺に、似てるの?」

『ええ……』

「この世には、自分に似た人が三人いるって云うじゃん。きっとそれだよ!」

『そうね、考え過ぎね……。ねぇ……又、お店に行って良いかしら』

「あぁ良いよ。じゃあ、金曜日にしようよ、ゆっくり泊まれるだろ?」

『ええ、じゃあ金曜日に。又連絡するわ』

 と言って電話は切れた。

 あ~、びっくりした~。まさか、校内からホストに電話かよ、度胸あんな~ケイコちゃん。関心する。

 俺は、店の客に手を出したりはしない。でも、ケイコちゃんは金をくれるから 相手をした。金持ちだと思っていたのに、教師だったとは。女って生き物は、全く分からない。


 金曜の夜。

 この日は、直接来店して貰った。店が終わった後、又二人で銀牙のアパートへ 帰る。二人で、シャワーを浴びてベッドに入った。

 次の日、のんびりとベッドの中で目を覚ます。今日は 土曜だ。ゆっくり出来る。学校に通っていると、朝が早くて凄くきつい。身が保たない。ケイコも、ゆっくりと目を覚ました。小さく伸びをする。軽く唇を交わし「飯でも食いに行くか?」の問いにケイコは小さく頷いた。

 身仕度を済ませ、二人で近くのファミレスに入った。席に着いて、モーニングセットを注文する。

 ケイコちゃんって 真面目でキツそうに見えるけど、夜は激しいんだよね~。でも、適合者じゃ無い。残念……と、ケイコの顔をじっと見つめる。

「何、どうしたの?」

 と訊かれ、

「いや、何でも無い」

 と 答えた。


 店を出て そのまま別れ、アパートへ帰った。

「あ~~~、もう一度寝よう……」

 と銀牙はベッドに倒れ込み、眠りに着いた。


 それから一週間が過ぎた頃、ケイコから電話が掛かって来た。

『もしもし、牙……』

「ん? ケイコちゃんどうしたの? 何か、あった?」

『うん……。私、この街を離れる事になったの……』

「えっ、何で。社長秘書も辞めちゃうの?」

『ええ……親にお見合い進められて……とても、断れる雰囲気じゃ無くて……』

「そうか、色々大変なんだな」

 人間も……

『私、あなたの事、結構気に入ってたのよ』

 ケイコの声には、引き止めて欲しいという思いが込められているように聞こえた。

「俺も気に入ってた方かな。……じゃなきゃ寝たりしないよ。まっ、新しい男と上手くやれよ」

『そう……ね……。頑張ってみるわ……』

 そう言って電話は切れた。


 俺に引き止められる訳無いだろうが……

 銀牙は、やるせなく屋上の手摺りを殴った。

 そこへ、ケイコがやって来た。


「あら……君……。何してるの?」

「空を、見てた」

「そう……」

「先生……仕事、辞めちゃうの?」

「えっ、どうして知っているの?」

「あぁ、えっと…… 立ち聞きしたから」

「ええ、実家に帰るの。……好きな人にも、振られちゃったしね……」

 ケイコは、銀牙の顔を愛おしく見つめる。

「好きだったの……とても……」

 ケイコは、そう言いながら銀牙の頬に触れる。

「キスして良い?」

 そう訊かれ、銀牙は少し驚いたが「いいよ」と答えた。

 優しく唇を重ね、そっと離れて涙を流し「さようなら」と囁き、それからケイコは、「ありがとう」と言って、屋上を後にした。


 それから 又何日かして、「なあ、聞いたか?」と、友達が銀牙に話しかける。「何を?」と尋ねると「ケイコ先生の事だよ!」と怒ったように言われた。

「辞めるって話しか?」

「そうじゃ無くて、いやその事なんだけど。理由だよ、学校を辞める理由!」

「知らない」

 と、応えておいた。

「何でもな、ケイコ先生、ホスト通いしてたらしいぞ。その事がばれて、教育委員会で問題になって、辞めさせられたって話しだ」

「それ、本当かよ!」

「あぁ、間違い無い」

 まじで? ……俺のせいか……

 銀牙はケイコに電話を掛けてみた。繋がらない。番号を変えてしまったらしい。

悪い事したかな……。まっ、でもケイコちゃん適合者じゃ無かったし。俺にはどうしょうも無いしな。ドンマイ! と、そこらの女の子に声を 掛けまくりに行った。




「えー。十一月に創立祭が行われます。まだ少し早いのですが 実行委員を、男女二人づつ選んで下さい。自薦他薦は問いません。我こそは! と言う人はいませんか?」

 と、担任の飯田が声を掛けるが、誰も挙手しない。飯田は慌てる事なく、予め用意しておいた白紙を配って行く。

「では、その紙に男女一人づつ推薦する人の名前を書いて、この箱の中に入れてください」

 瑞希は、悩みに悩んだ結果、橘 (たちばなあおい)相沢拓海(あいざわたくみ)の名を記した。紙を四つに折り、前に置かれている箱の中に入れる。

 しばらくして、集計結果が黒板に書き出された。

「男子は、相沢 拓海・山本 銀牙、女子は、橘 葵・杉本 瑞希。決定!」

「え~~~っ、私~~~っ?」

「意義は、認めん!」

 と、飯田が先生に言われ瑞希は肩を落とし観念した。


 放課後、女子達が瑞希の周囲に集まって来た。

「瑞希、良いな~。銀牙君と一緒なんて~」

「羨ましい」

 女子たちが口々に言う。

「じゃあ 誰か 変わってよ!」

 と言うと、

「だって」

「ねぇ~」

「もう決まった事だしぃ~」

「まっ、頑張ってね~」

 と、皆帰って行った。薄情者! 心の中で叫ぶ。


 瑞希は葵をチラリと見る。あんまり話した事無いんだよね……何でもどこかの社長令嬢って話しだけど……、住む世界が違うって感じよね~

 相沢君は、中学校からの同級生で、割と話す方だからまあ良いけど、問題は山本銀牙。チャラチャラしてて、どうも苦手!!

 翌日、二年生の実行委員が図書室に招集された。十一クラス、四十四名の生徒が 集められた。


「今年の、桜ヶ丘学園第四十回創立祭の実行委員長に成りました、三年F組の山根俊彦です。今年の創立祭が成功するように力を貸して下さい。皆で良い創立祭にしましょう」

「つきましては、二年生の代表を六人選んでいただきます」

 と、三年の代表が挨拶した。

「どうせ決まらないと思うのでくじで決めましょう」

 瑞希はクジ運の悪い人間だった。思った通り、六人の名前の中に自分と銀牙の名前もあった。

 ……最悪……

  銀牙と関わるつもりは全く無かったのに、二年の代表に成ってしまった。


 今日は、夏休み最後の委員会だ。嫌な事は、早く行って早く済ませたい。

「委員会が始まるわよ。早く行きましょ!」

 瑞希がいくら呼びかけても、銀牙はうつろな目をしたまま、ぽ~っとしていた。


 この学園には、一ヶ月しかいないつもりだったのに、創立祭の実行委員に成っちゃったな~。適合者探し出来ないじゃん。参ったな~。と銀牙が物思いにふけっていると、突然瑞希に瞳を覗き込まれた。

「聞いてるの? 委員会が始まるから、早く行くわよって、何回言わせれば気が済むの!!」

 突然、銀牙は立ち上がり、瑞希の頬を両手で挟み込んだ。そしてじっと瞳の中を覗き込んだ。

「なっ、何するのよ! 離しなさいよ!!」

 両頬を掴まれて、瑞希は上手く声が出せない。銀牙の手を振りほどこうとするが、びくともしなかった。


 ……こっ、これは…… 俺の瞳のマークとそっくり。ちょっと違う所もあるけど、これだけ似てるマークは 初めて見た……


 銀牙は、瑞希の顔を引き寄せてキスをしようとした。周りにいた女の子達がざわめく。

「何考えてんのよ!馬鹿!」

 瑞希は銀牙の頬を、思い切りひっぱたいた。銀牙は何が起きたのか理解できず、殴られた体制のまま、動けなかった。今まで 女の子にキスをしようとして、殴られたのは初めてだった。

「もう 最低!」と言って瑞希は、教室を出て行く。銀牙は、初めて女の子に嫌われた。




読んで下さいまして 有り難うございます。

次 瑞希の 危機です!

入力 頑張ります。

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