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修学旅行 (4)

 四日目の今日は午後からスキー大会。ギブス姿の相沢は応援席にいる。


 それぞれ上級、中級、初級コースに分かれ順番に滑って行く。葵と銀牙は上級者コース、瑞希は勿論初級者コースだ。



 大会では、初級者から滑り降りる事に成っている。巧い人の後に素人の滑りを観るのは忍びないからだ。


 瑞希の順番に成った。冷たい空気を胸一杯吸い込み吐き出す。


「よし!」


 と勢いをつけて滑り出した。途中、何度かバランスを崩しそうになったが、なんとか持ちこたえ下まで降りる事が出来た。


 下で待ち構えていたミラルドが「良くやったね」と誉めてくれた。瑞希は頬を染めて頷いた。


 自分の番を終え、葵達が滑り降りて来るのを待つ。


 中級コースの人達が滑り降りそのなかの知った顔の友達に声援を送る。


 次はいよいよ上級者コースだ。



 銀牙も葵もプロかと思う程の腕前で、華麗に滑り降りてきた。応援席は大いに沸いた。




「凄~い。二人共プロみた~い」


「そうですか?」


「そうだよ~、凄かった」


「俺も凄かった?」


「勿論よ。流石さすがだね二人共」






 スキー大会も無事に終わりミラルドと冴子と流輝も加わって、自由時間ギリギリまで最後のスキーを満喫する事にした。







 五日目は、北海道観光をする事に成っている。食後慌ただしく準備をし、八時にホテルを出発した。朝が早かったせいか、バスの中は寝静まっていて終始静かだった。屈斜路湖の駐車場に静かにバスは滑り込んだ。


 バスから降りて、ピンと張りつめた様な冷たい空気で目が覚める。


 生徒達は、う~んと伸びをしながら歩き出した。



「…広~い」


「凄いね」


「やっぱ、寒いね」


 あちこちで、それぞれの感想を述べながら湖に近付いて行く。



 屈斜路湖は火山性の陥没により出来たカルデラ湖で、日本最大の大きさを誇る。中央にはポッカリと島が浮かんでいた。



 ここでの停車時間は四十分だったが寒さのせいか、皆予定よりも早くバスに戻って来る。


 ミラルド達三人は、瑞希を監視するために流輝の力で同じ場所を訪れていた。


 勿論、誰にも気付かれない様に。




 それからバスに揺られ二時間かかり、阿寒湖に到着した。


 先程の屈斜路湖よりもかなり小さい湖だが、ここには天然記念物のマリモが生息している。昔は阿寒湖全般に生息していたマリモも、水質汚染が進み、今では北部の二ヶ所にしか生息していない。その数も減少し、大きさも年々小さくなる傾向にある。


 湖畔には先住民アイヌの集落コタンがあり、アイヌ文化を体験出来る。


 ここでの自由時間は二時間。ゆっくりと観光する事が出来る。


 お土産をここで選ぶ生徒も多い。


「北海道と言えば、鮭をくわえた木彫りの熊だろうか」と思っている人も、いるとかいないとか…。「やっぱり瓶に入ったマリモかな…」様々な思いを抱え生徒達は辺りを歩き廻る。


 少し行くと先程までとは全く雰囲気の異なる場所に出た。石畳の道路の両側に、特徴的な家屋が立ち並ぶ。どの店にも、その店の主が心を込めて造った木彫りの人形や、アイヌの護り神.島ふくろうが所狭しと並べられていた。


 道路の中央部には駐車場があり、その両側や、所々に、トーテンポールや島ふくろうのオブジェが、堂々とその存在を主張している。あっと言う間にどの店も桜ヶ丘学園の制服で埋め尽くされてしまった。


 温泉街でもあるため、温泉に入りに行く者や、アイヌの民族衣装を借り記念撮影をする者もいた。


 冴子達は、桜ヶ丘学園の生徒よりも早く到着し、観光するためにサングラスや帽子で変装し、ミラルドと流輝は初老の男性に変化していた。瑞希達からは距離を置き、でも離れ過ぎない位置をキープした。


 瑞希は、木彫りの島ふくろうを気に入ったらしく、手に取ったり離したりを繰り返している。小塚い銭からすると少し高め。でも欲しい。そんな風に眺めていたが購入を諦めて、そっと元の位置に戻し店を後にした。ミラルドはすかさずその島ふくろうを手にし、土産用に包んで貰った。


 軽食を取り、その後もぶらぶらと土産物を物色して回る。


 土産は定番の白い恋人。皆こっちに来てるから買う必要無いんだけどね…。でも他の場所に行った友人達の為に、何か買わなくちゃ。このストロベリーチョコ気になるな…中に乾燥いちごが入ってるのか…まん丸いホワイトチョコの中にごろっといちごが…どんな味だろう、美味しそう。入れ物も可愛いし、自分用に買って行こう。あと、ミラルドさんとお揃いの物…う~ん悩む…


 出発時刻ギリギリでやっと生徒達が揃い、バスは五分遅れで摩周湖を目指し出発した。


 湖ばかりの観光と成ったが特に苦情も出なかった。それぞれに有名で特徴的な湖だったからだろう。




 摩周湖は、透明度の高い火口原湖であるのに霧の発生率が非常に高く、美しい湖面が見られるのは年に四.五回程しか無いらしい。


 今日は湖面が見られるかなと、あちこちから声が聞こえる。


 吐く息を白くそめながら湖を見下ろす。あちこちから残念そうな溜め息が零れた。美しい湖面は今日も顔を出してはいないらしい。


 瑞希達も期待を込めて湖に近付いたが、結果はやはり同じで、足下は白い雲が在るように、その全貌は綿菓子のような物ですっぽりと覆われていた。



 三人は長い溜め息を吐く。


「見たかったな…」


「私もですわ」


「俺も…」


 一行は残念そうに下を見つめる。まるでその眼力でもやを吹き飛ばそうとするように…



「そうだ、銀牙君。妖力で吹き飛ばせない?」


「う~ん、範囲が広すぎるから無理だな。穴を開けられたとしても一瞬だろうな」


「そっかぁ…、残念」


 瑞希は、ちぇっと口を尖らせた。



「ねぇ瑞希。皆で写真撮ろう」


 クラスの友達が誘いに来た。


 「うん」と言って三人はクラスメイトの元へ移動する。カメラマンが沢山いて「こっちこっち」と、あちこちから声が掛かる。どのカメラを向けば良いのか迷った。


 入れ替わり立ち替わり、撮る側と撮られる側が入り乱れる。三人は徐々に離れ離れになった。


 そんな中、瑞希は女の子の集団に思いっきり湖へと突き落とされてしまった。


「えっ?」


 と思った時には身体は宙を舞っていて、真っ白いもやの中を真っ逆さまに落下していた。











屈斜路湖、阿寒湖、コタン、摩周湖、土産物など。ネット検索しましたが実際と異なる場合もあるかも知れません。


移動時間なども、実際の物とは異なります。


済みません。





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