表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/62

修学旅行 (3)

 瑞希はゆっくりと目を開いた。そこはとても暖かく、色とりどりの花が咲き誇っていた。



「ここは…どこ?」


「杉本瑞希様ですか?」


 女の人の声がした。


「はい…そうです。…けど」



 その人は真白いフード付きのマントを身に付け、すらりと背が高く雪の様に透き通る肌の色をしていた。



「ゆっ…雪女?」


 女は緩慢に微笑み


「ご安心下さい。ワタクシは総樹様のしもべ。この土地を任されている白樹と申します」


 とお辞儀をする。フードから、はらりと落ちる髪も真っ白だった。



「あなた様がこちらへ来られる事は伺っておりました。お守りする様に仰せ使っております」


 白樹と言う人は、深々とお辞儀をした。そしておもむろに両手を天に向け伸ばす。


「冬は、植物は枯れてしまった様に見えますが、土の下では大きく根を張り春の訪れを待っているのです。ここはその様な場所。邪悪な者は入り込めません」


「……はぁ……」



 白樹は両手を下ろす。



「リフトに乗せた者を恨んではいけません。あの者達は暗示を掛けられ、操られただけで御座います。何も憶えてはおりますまい」



「…そう‥だったんですか…」


 白樹は頷く。


「あなた様の魂はこちらに呼び寄せましたが、お身体はそのままにしております」



「えっ…、私死んだの?」


「いいえ。見えない膜で保護しておりますから、大丈夫です。戻れますよ」


「あぁ、良かった…。でも、どうして私の事助けてくれるんですか?」


 瑞希は疑問を口にする。


「…総樹様の命で御座いますゆえ」


「どうして総樹様は、私を助けてくれるんですか?」


「それは…分かり兼ねます。遠い地に居りますゆえ」


「…そうですか…」



 話しをしていたら急に瑞希の身体が暖かい光りに包まれた。


「えっ、…何?」


「お迎えが、いらした様ですよ」


 白樹は優しい笑みを浮かべる。


「誰が…」


 と言った時に、白樹の身体から眩しい光りが放たれた。






◇◇◇◇






「ねぇミラルドさん、瑞希さん知りませんか? まだお戻りに成りませんの」


「瑞希、午後から冴子さんと一緒だって聞いけど…。電話してみる」


 直ぐに携帯を取り出し瑞希に掛けてみるが、出ない。次に冴子に電話してみた。


『瑞希? 一緒じゃないわよ』


 ミラルドの顔色が変わる。


「そうですか…分かりました。失礼します」



「済まない。手分けして捜してくれないか」


「解りましたわ。銀牙さん参りましょう」


 それから分かれて捜したが、一向に見付からなかった。





「二時頃リフト乗り場で見たって言うのを最後に、目撃情報は無いよ」


「それが…上級者コースだそうですわ」


「えっ、瑞希にはまだ無理だ…まさか‥まだ上に居るのか…?二時に乗ったとしたら四時間経つ」



 直ぐに流輝に電話する。


「流輝、済まないが今すぐに戻って来てくれないか。瑞希が居なく成った。まだゲレンデに居るかも知れないんだ。…頼む…」


「かしこまりました」



 十分程経って、ようやく戻って来た。


「遅かったじゃないか」


 かなり苛々している。



「申し訳ありません。…冴子様が入浴中でしたので…」


「瑞希が居ないってどう言う事?」


 ミラルドは二人に経緯を説明した。



「私達、一度も戻って来ていないわよ」


「そうですか…。それより流輝、瑞希の気配を探ってくれ」


「はい。もうやっております」


 だが、中々見つからない。


「仕方無い、上級者コースへ向かってくれ」


「はい」


 二人は消えた。







 二人はゲレンデに降り立った。


 あちこち捜し回り、ようやく建物の中に横たわる瑞希の姿を見つけた。二人は、瑞希の名を呼びながら駆け寄った。


 顔は、血が全て抜け出てしまったかの様に白く、呼吸もしていない様だった。


「瑞希!…瑞希!」


 ミラルドは癒しの光りで瑞希の身体を包み込んだ。



 …瑞希……瑞希…




 意識が浮上する。瑞希はゆっくりと瞼を開いた。



「瑞希!」


 突然抱き締められた。



「うっ…寒い」


「はい、毛布で御座います!」


 すかさず、オレンジ色の毛布を流輝が差し出した。



「大丈夫か?」


「うん、大丈夫」


 瑞希は、毛布にくるまり頷く。



 気付いたら、白い服の女が立っていた。



「誰だ!」


 ミラルド達は警戒体勢をとる。


「待って、この人は怪しい人じゃないの。私を助けてくれたのよ」


 瑞希は、白ずくめの女の前に立つ。


「総樹様のしもべの白樹って人なの」


「総樹様の?」


 白樹はこくりと頷く。



「黒樹が私を殺そうと、女の子達を操って私とミラルドを引き離したんだって…」


「ワタクシが居りましたゆえ、この方に手を出せなかった様です」



「有り難うございました。瑞希を救って下さって」


 身体から力が抜ける。



「でも、どうして助けて下さったのですか?」


「はい…総樹様は瑞希様の事を気に掛けておいででした。総樹様の元を離れる瑞希様にきっと何か仕掛けて来るとお考えに成り、この地を守るワタクシに命じられたのです」



「いや、そうでは無くて…。なぜ瑞希の事を助けて下さるのでしょうか?」


「それは…『カギを握る者』と申されておいででした。…それ以上は解り兼ねます」


「…そうですか…」


 ミラルドは考え込む。



 …カギと成る者か…



「ともかく有り難うございました。行こう瑞希」


「うん」


「白樹様、有り難うございました」


 とぺこりと頭を下げて、三人は消えた。






 ここは冴子の部屋。



「いいか瑞希。ずっとここで寝てた事にするんだぞ」


「うん、解った」



 冴子の部屋から出て、エレベーターでロビーに降りた瑞希は驚いた。



「あぁ~、瑞希!! 居たぁ~」


「本当だ。どこにいたの?」


「心配したよ」


 と詰め寄って来る。その中にはあの女の子達も居た。



 物凄い騒ぎに成っている。



 人混みをかき分けながら、教師の飯田が近付いて来た。


「杉本、今までどこに居たんだ」


「済みません。母の部屋で眠ってました」


「そうなのか…。皆心配して手分けして捜し回ったんだぞ」


「…本当に済みませんでした」


 瑞希は何度も頭を下げた。









 夕食後、皆は冴子の部屋に集結した。


「瑞希は命を狙われているの?」


 冴子の声に怒りの色が混じる。


「…済みません。瑞希は総樹様になぜか気に入られていて、そのしもべの者に狙われているらしいのです」


「なぜ瑞希なの?」


「カギを握る者だと…。それ以上は…」


 首を振る。


「だけど、総樹様が助けてくれると約束してくださいました」


「そう‥」


 まだ納得していない様だ。当然だ、娘の命がかかっているのだから…



「俺達もこれまで以上に気を付けます」


「…ええ…お願いね」


「俺も葵もいるからさ」


「はい。お任せ下さい」


「私も全力でお守り致します」


 冴子は皆の言葉に、やっと全身の力を抜いた。




「でも…帰りの飛行機…大丈夫でしょうか…」


 葵が躊躇いがちに言う。


「…そうだな…」


「何か仕掛けて来るかも…」


「それでしたら、皆様に迷惑をおかけしない様に、私達は別便で帰りましょう」


 葵が提案する。


「別便て言うと?」


「橘家の自家用ジェットで」


「あぁ、成程ね…」


 今までの話しを黙って聞いていた銀牙が


「それよりさ、流輝さんの力で帰った方が良くね?」


 と、提案した。


「うん…それは、その方が速いし、安全だけど…先生方に何て言うんだよ」


「そこが問題だな」


 う~んと皆で考える。



「そうだ。帰りのバスに乗る前に集合するだろ。そん時に俺達三人は初めから居なかった。と暗示を掛けるんだよ」


「成程…それで?」


「それで、新都市空港で合流して、今まで一緒に居た様にもう一度暗示を掛ける。どう?」


「それ良いな。それで行こう」


 皆は頷いた。











番外編の『もう一つの修学旅行』は、この日の流輝と冴子の行動です。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ