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《 番外編 》 もう一つの修学旅行


第三章の一話目に『修学旅行』が入ります。


それに付いて行った冴子と流輝の話しを載せます。


短いです。








 瑞希の修学旅行。せっかくだからと一日遅れで冴子と流輝とミラルドも後を追って来た。


 勿論、瑞希には内緒。冴子の悪い癖。


 瑞希を脅かそうと言われ、ミラルドもそれに従う。…冴子さんに逆らうなんてとても無理。瑞希に心の中で手を合わせた。



 ホテルにチェックインしてから三人で名所を巡った。余りに冴子が流輝にベタベタする物だから、ミラルドは居心地が悪かった。



 夕方に成りホテルに戻った処で瑞希に遭遇した。思惑通り瑞希を驚かせて混乱するロビーを後にし、冴子は流輝を部屋へ誘い込んだ。



 冴子は流輝に近寄り熱烈なキスをした。中々離れ無い唇に流輝の身体は火照り、今にもショートしそうだった。


 暫くし、冴子はやっと離れてくれた。耳からも頭からも蒸気が上がって目も回る。



「流輝さん‥泊まって行って」


……更にクラクラする。



「いいえ。ミラルド様をお一人にする訳には…」


「大丈夫よ。瑞希が居るんだから」


「しかし、何かあった時に瑞希様ではミラルド様を御守りする事は出来ません」


「ミラルド君強いんでしょう?そこまで構わ無くて良いんじゃない?」


「何かあった時に傍に居ませんと…」


 流輝は両手の拳を握り締める。


「私はその昔、ミラルド様をお救いする事が出来ませんでした。今度は…今度は必ずお救いしたいのです。…心も…」


 冴子はプッと頬を膨らませ大人気なく怒る。


「私は…一人でも大丈夫だとでも?」


「いいえ…そんな訳では…。…解って下さい」


 流輝は拳を握り締め、申し訳なく頭を下げた。


「止めてよ! 私が意地悪してるみたいじゃない!」


 更に膨れる冴子。本当に大人気ない。


 冴子はフッと身体の力を抜く。



「分かったわ。我が儘言ってご免なさい。…それじゃあ…お休みなさい…」


「申し訳有りません」


 流輝は頭を下げて出て行った。







 修学旅行二日の夜、瑞希は冴子の泊まる部屋を訪れていた。



「それにしても流輝さん、良くお母さんに付き合って色んな所へ連れて行ってくれるよね」


 毎日ネットをチェックしてしてどこで祭りが有るとか。どこの湖が五年振りに凍ったとか…。初詣も有名な所を何ヵ所も巡ってたし、節分には好きなタレントさんが豆まきしている場所を渡り歩いて…。



「どうせなら二、三日泊まりで外国の名所巡って来たら良いじゃない」


 その言葉に冴子は口を尖らせる。


「私もおねだりしたのよ!でも駄目だって言うの」


「どうして?」


「ミラルド様の執事だから、長い時間離れる訳にはいかないって言うのよ。私とミラルド君、どっちが大事なのよって思わない?」


 冴子は思い出した様に、プンプン怒っている。


「お母さん…駄目よ、そんな事言っちゃ」


「…やっぱり駄目よね」


 冴子は盛大に溜め息を吐いた。



「お母さん!!」


「解ってるわよ。でもね、何かって言うと“ミラルド様が”って言うのよっ! 私とミラルド君、どっちが大事なのよ!って言いたく成る訳よ!」



 …わぁ~。お母さんが嫉妬してる…。流輝さんに本気に成ったって事かな…


「仕方ないじゃない。ミラルドさんのお爺さんの代から、ウルフ族の当主秘書なんだから。……流輝さん…何年生きているんだろうね…」


「…本当ね…。私達って凄い歳の差よね。軽く千年は生きているのかしら…。…考え無い様にするわ」


「…そうね、それが良いと思う…」










 二日目。


 ミラルドは瑞希にスキーを教えるらしく、この日は昨日に引き続き、朝から二人で名所巡りをしていた。




「わぁ~、懐かしい。昔友人達と訪れた事が有るのよ!」


 冴子はいつにも増して瞳を輝かせている。


「さようで御座いますか。楽しかったですか?」


「ええ、とっても」


 冴子は少女の様に微笑んだ。


 せっかく北海道に来たのだからと、昼食は海の幸尽くし。新鮮でぷりっとしてて、とても美味しい。二人は十二分堪能し店を出た。



 あちこち観光しまくって、さすがに身体が冷えて来たので温泉に入る事にした。


 地元の人が教えてくれた秘湯にやって来た。観光客は滅多に訪れ無いらしい。



「なんか情緒があって良いわねここ。人も多くは無いし、良い処教えて貰ったわ」


と冴子は満足気だ。



「ねぇ流輝さん、温泉入って来なさいよ」


 ニヤリと冴子が囁く。


「いいえ…私は遠慮しておきます」


 冴子様の笑顔……何か企んでいる様だ。



「どうして~、良いでしょう? …じゃあ私と入る?」


 更にニヤリと笑う。



「いえ、とんでもない」


 流輝は一歩後退る。



 冴子様は私の事をからかっている。私の気持ちはお伝えして有るのですが…。私達の正体がばれてからと言うもの。あの迫り方にはどうも慣れない。


 ……困ってしまう……



 冴子は素早く流輝に近付き、無理矢理唇を押し付けてくる。


 考え事をしていた流輝は逃げる隙が無かった。


 長い間そうした後、冴子は一緒にお風呂に入りましょうと流輝の腕をとる。



「そこまで申されるのなら、わっ、私一人で入って参ります」


 と冴子の腕を振りほどき、流輝は慌てて脱衣場へ逃げ込んだ。


 運悪くそこは、混浴場だった。当然流輝はその事に気付いてはいない。






「は~」


 湯船に浸かり流輝は一息つく。


「…冴子様には困ってしまいます…」


 チャプンと両手でお湯を掬う。


「それは、冴子様は素敵な方ですし…でも、憧れの様な物ですし…。…私はそれ以上の事は……」


 掬い取ったお湯を湯船に溢した。



「それ以上の事は望まないの?」


「いえ…あの、そう言う訳では…」


 後ろから白く細い腕がぬうっと伸び、抱き締められた。



 この背中に当たる二つの柔らかい感触は………



「!!」


「ギャッ」


 と悲鳴を上げ、流輝はボンと狼に変化して、露天風呂の柵を軽々と飛び越え林の中へ駆けて行ってしまった。



「流輝さん?」


 …………


「…逃げられた…」


 仁王立ちしたまま冴子は呟いた。




「こんなにいい女の裸に『ギャッ』て…。失礼しちゃうわよね…」


 ブツブツ言いながらお湯に浸かる。


「は~」と溜め息。


「流輝さんて奥手よね…。もっと積極的に行かないと駄目かしら…」


 湯船を出て、服を着て出て行こうとした時ロッカーの中の服が目に止まった。


 キッチリ折り畳まれたスーツ



「………」


 流輝さんのだわ…何て几帳面なのかしら…。




 ……ふふふっ……面白い人…



 キチッと折り目が揃った服を両腕で抱き抱え、流輝を捜しに外に出る。


 もうすっかり日は落ちていた。




「流輝さ~ん」


 声を張り上げて流輝を捜す。


「流輝さん、どこ? 出てきて!」


「流輝さ~ん」



 林の中からカサカサッと音がした。



「流輝さん?」



 音の方へ声を掛けると、雪を被った笹の間から黒い毛並みの狼がこうべを 垂れてノソノソと現れた。冴子は駆け寄り、狼の首にそっと腕を延ばした。



「ご免なさい。流輝さんを困らせるつもりじゃなかったの。本当にご免なさい」


 冴子は狼の首に抱き付く。



「だから元に戻って!」


 その言葉を受けて人間の姿に変化した。


 その直後、流輝の携帯の着信が鳴った。






「大変です冴子様! 瑞希様がいなく成ったそうです」


「えっ、瑞希が?」


 くしゅっ くしゅっ 返事の代わりに流輝はクシャミをした。

 雪の積もる中、流輝は素っ裸で外に居る。



「流輝さん、風邪引いちゃうわ。もう一度温泉に入って来て」


「でも、瑞希様が…」


「お願い五分で良いから暖まって来て丁だい」


「…でも…」


「ミラルド君には、私が温泉に入ってて遅くなったって言えば良いから。良いわね!」


 冴子の迫力に流輝は、はいと頷く。


 流輝は時空間移動でそのまま浴場に移動する。身体を粗方洗って湯船に浸かった。そして五分後、脱衣場で待ち構えていた冴子から服を受け取り着てから、ミラルドの元へと戻って行った。







 ……あぁ…冴子様に裸を見られてしまいました……恥ずかし……穴があったら入りたい……





 ひたすら赤面する流輝だった。













冴子はミラルド達の正体を知っています。


あの事故の後二人を呼び出して洗いざらい吐かせました。


冴子さん恐るべし。


その話しは後で回想として出てきますので、暫しお待ちを…




流輝の本性を知った事で冴子の気持ちは流輝に随分傾いた様です。


すんでの処で踏み切れ無い流輝を、総崩ししたい冴子。


流輝と一緒に居て楽しくて仕方無い! と思っています。








以前書きましたように、第三章から『ファンタジー』に成ります。『恋愛』でご覧頂いていた方々、お世話に成りました。


又、続きが読みたいなと思って下さった方は


『ウルフ族の紋章』もしくは『糸香』で検索! お願いします!



お読み頂き有り難うございました。




糸香。









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