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仲間

人物紹介です。




護衛隊メンバー


隼人 護衛隊隊長


身長178㎝ 細身 黒髪 長い髪を後ろで束ねている 色白 切れ長の茶色の瞳




海道


身長192㎝ 茶色の短髪 色黒 大柄な男 豪快




雪成


身長151㎝ 黒髪 色白 細くて小さい男




作造


身長162㎝ 黒髪 短髪 小太り




早苗 恭弥の母親


身長168㎝ 背中まである茶色のストレートの髪を束ねている しっかり者 皆に慕われる




恭弥 早苗の息子


身長174㎝ 銀牙に似たやんちゃ系 茶色の短髪がつんつん立っている 明るい









 ミラルドと流輝は、城壁の中に立っていた。



 突然現れた二人の姿を見て、多くの人が集まって来た。


「…ミラルド様…」


「流輝様…」


「よくぞ‥ご無事で…」



 こんなに沢山の人が…



「…皆、済まない。今まで留守にして…」



「いいえ。私達はミラルド様がご無事でいらした事が嬉しいのです。紋章を手にされたご当主がご無事である事で、私達ウルフ族は生きて居られるのですから」


 と、代表の者が言った。




 ふと疑問に思う…


「それは…どう言う事ですか?」



「は?…はい。えっと、ウルフ族の持つ紋章はウルフ族の命と繋がっているのです。紋章が何かの弾みで壊れてしまえば、その消滅と共にウルフ族も煙の様に消えてしまうのです。…お忘れですか?」


 と、逆に聞かれてしまった。


「…俺は…五百年前の事は、記憶が曖昧で…。そうですか‥紋章にはそんな意味が有ったのですか…」


「私も…忘れていました…」


 流輝も愕然とする。



「それにしても沢山の方が行き残ったのですね」


「はい。あの大戦の後、部族を関係無く多くの人々を護衛隊の方が助けて下さったのです」


「皆、感謝しています」


「そうか、海道たちが…」


「ですが、私達もずっとここに住んで居る訳では無いのです。皆一度は人間の中で生活しました。でも、人間の中に有って、孤独を感じ人間関係に疲れた者や、金銭トラブルに巻き込まれた者達が、一人又一人と戻って来て今に至るのです。…やっぱり生きる時間が違いますからね…」



 そうだな…俺達も各地を転々として来たからな…



「ミラルド様、よくぞご無事で」


 と、野太い声が耳に飛び込んで来た。


 振り返ると懐かしい顔が見えた。護衛隊の海道、雪成、作造だ。



「お前達、無事だったのか。他の者達は…一緒じゃ無いのか」


「はい。皆無事です。早苗と恭弥は外で生活しています。隼人はミラルド様を探すと言って飛び出したっ切りで…」



 ミラルドは不意に俯いた。


「その…。五百年前は突然消えてしまって…済まなかった」


 流輝も深々と頭を下げた。



「いいえ、とんでも有りません。…お城の方も大変だったのですから…」


 皆、一様に肩を落とす。



「あの大戦は本当に酷い物でした。相討ち状態で倒れた者達が多数おりました。敵も味方も無く多くの者を手当てしました。総樹の樹も切り倒されていたのですが、丸一日祈りを捧げようやく樹液を分けて頂き、そのお陰で多くの者が助かりました」


「しかし同時に沢山の方が亡くなりました。エルド様は代々の御当主が眠られる塚に。他の者はその近くに埋葬致しました」


「そうか…。俺がすべき事なのに、大変な事をさせてしまったな…済まない。…有り難う」


 ミラルドは深々と頭を下げる。


「お止め下さい。残された我々の役目ですから」


 と海道が言った。



「それで…その…」


 言いにくそうにするミラルドに代わって、流輝がその後を継いだ。


「美鈴様も、皆様と御一緒に埋葬されたのですか?」


「それが…」


 皆、顔を見合わせ言いにくそうにしている。



「美鈴様は…どこにもいらっしゃら無くて、生きて居る人の中にも…御遺体の中にも…」


「そっ…そんな…」


 確かに…確かにあの時、…俺の身代わりに成って…。美鈴は…っ、…両手で顔を覆う。膝が折れそうになる。


「大丈夫ですか、ミラルド様」


 慌てて流輝が支える。


 生きて居るのか…美鈴はっ…。一体どこに…


 明らかに憔悴しょうすいしているミラルドを抱き止め



「あの、私達は桜新町の桜ヶ丘公園の側で診療所を開いております。ミラルド様もお疲れの様ですので、そちらに一度戻っても宜しいでしょうか」


 そう流輝が切り出す。


「はい。私達の事は心配有りません。今までもここで暮らして来ましたし、これからも変わりません。大丈夫です。ミラルド様は、今の生活を続けて下さい」


 皆でそう言い募る。



「皆…済まない」


 俯いたままのミラルドはそう言って、二人は消えた。








「只今戻りました」


 リビングに流輝が入って来る。



「お帰りなさい、流輝さん。ミラルドさんは?」


「はい。ミラルド様は…お部屋の方へ…」


「そうですか…。お疲れでしょう、お茶でもどうですか?私ミラルドさん呼んで来ますね」


 部屋を出て行こうとした瑞希を呼び止めた。



「瑞希様…ミラルド様は…その…何か調べ物が有るそうなので、後で私がお持ち致します」


「そうですか?解りました。じゃあ流輝さんの分、用意しますね」


 と、リビングに入って行った。





 ミラルドは、ベッドに寝転んで天井を見ていた。



 美鈴は、どう成ったんだ。…生きて居るのか…。あの後俺が少しだけ施した治療で、生き返って…。俺が逃げ回っていた五百年もの間、俺を捜しさ迷って居るとでも言うのか…



 俺は今まで何をしていたんだ。ただ、だらだらと生き永らえて。ウルフ族の‥皆のその後を、自分の目で確かめもしないで‥現実から目をそむけて、自分の事ばかり考えて…。俺は…俺は…



 顔を覆う。


「ミラルド様…余り御自分を責め無いで下さい。私も…同じですから。…私も…現実から目をそむけて生きて参りました」


 いつの間にか部屋に入って来た流輝が声を掛ける。



「でも…それは…俺を気遣っての事だろう。…俺を一人にして離れられ無かったから…。あんな状態の俺をほっとけ無かったから…」


 項垂れるミラルドに優しく声を掛ける。


「確かにあの時のミラルド様を御一人には出来ませんでした。ですが、私も…、事実を確かめるのが恐かった。私も…貴方と‥同じです…」



 それでもミラルドは自分を責め続けた。



「ミラルド様…」








 ミラルドは夢を見た。いつの間にか眠ってしまったらしい。



 深い緑色の森、光りが幾筋も差し込んでいる。ふっと微笑む声がした。



 ーーーーミラルド…こっちよ…ーーーー


 長い髪が風に揺れる。



 誰?‥もしかして…美鈴?…美鈴なのか…、顔を‥見せて…。君の顔 思い出せ無いんだ…


 ミラルドは顔を歪ませる。



 女性は振り返ったが、そこは暗い森の中 よく顔が見え無い。


 …こっちよ‥ミラルド…


 フフフッと、走って行く。待って…行かないで…


 …きっと…いつか逢えるわ…


 それは…いつ?



 ーーーーそれは…必ず逢えるから…だから…待っていて…待っていて…ミラルド…


「待って」


 ミラルドは、パッと目を開けた。



「…みすず…」


 ミラルドは顔を覆った。









―‥―‥―‥―‥



 隼人は街中を歩き回っていた。


 あの女、お雪と言ったか。何度も美鈴様のお命を狙わせた張本人。今度会ったら必ず仕留める。


 …この俺が何度もしくじるとは、腕が落ちたな。それにしてもあの男、只の人間の分際でウルフ族に敵う訳が無い。あの怪我だ、死は免れないだろう。


「…ミラルド様は一体どこに居られるのだ…」


 ふと足を止め、思い付いた顔をする。


「そうだ…」


 たまには城に帰ってみるか。何か解るかも知れ無い。邪気の事も気に掛かる。


 善は急げと言うしな。



 隼人は急いで城に向かった。







「隼人、久しぶりだな」


 小太りな男が近付いて来る。


「あぁ、作造か久しいな。まだ…ミラルド様の手掛かりは全く掴め無い。もっと遠くに居られるのかも知れ無い…」


 悔し気に俯く隼人に向かって、作造は躊躇いがちに話す。



「その事なんだがな…実は、今日の午前の内に城に見えられたのだ…」



 隼人は一瞬何を言われたのか理解出来ず、頭の中で反芻する。



「何だと!…もう一度言ってみろ」


 と作造の胸ぐらを掴み上げる。



「ミラルド様と流輝様が、先程までこちらに居らしたのだ」


 と、海道が後ろから声を掛けた。



「それは…まことか…」


 やっと…やっと見つける事が出来た…。


 隼人は両手を握り締め、わなわなと震えている。



「何度も済まないとおっしゃっていたよ。それと、皆が無事で良かったと」



 そうかと安堵の表情を見せる。


 隼人のこんな表情を見るのは何年振りだろう。いつも険しい顔をして溜め息も多かった。やはり護衛隊隊長と言う肩書きが、隼人を追い詰めていたのだろう。



「今は、桜新町の桜ヶ丘公園の側に在る診療所に居られるそうだ」


「では、早速お会いして来る」


 と言った隼人の腕を掴み


「まぁ待て、まだ話しが有る」


 と引き留めた。



「何だ!」


 早く行きたいのに引き留めるなと、目が訴える。


 コイツは昔からミラルド様命だからな…と考えながら


「実は、美鈴様の話しを聞いて愕然とされて居たのだ。ご遺体も見つからない。あの様子ではお会いにも成って居ないのだろう。生死が不明なままでは、さぞ心穏やかでは居られ無いだろうな、苦しんで居られるのかも知れ無い…」



 美鈴様がミラルド様を庇って深手を負った事は、生き残った者達に聞いていた。あの傷では助からないだろうと…。でも、ご遺体は見つける事が出来無かった。かなり遠くまで捜したが見つけ出す事は叶わなかった。



「そうか…解った」





 隼人は城を後にした。


美鈴様は多分お亡くなりに成っているだろう。


 骸が見つから無いのがいけないのだ。…何か良い案は無いものか…



 ずっと考えながら歩いていた。


 ふと名案が浮かんだ。



「…よし、これで行こう」


 嘘を付くのは良く無い事だが、会えもしないのにこれから先悩み苦しんで生きて行くよりはずっと良い。これもミラルド様の為だと、自分に言い聴かせる。



「桜ヶ丘公園と言うのはここかな…」


 と、桜の木を見上げる。もうすぐ冬だ。葉も疎らに付いている。



 よし。と、歩き出しふと人影に目を奪われる。



「あ…れは…、美鈴様?」


 家の中から美鈴と、凶族の者が出て来た。


 隼人は更に愕然とする。それを見送りに出たのは流輝様と…あの…お雪…っ


「一体…どう成っている…」


 自分の目を疑う。



 隼人は銀牙の前に立ちはだかった。



「お前は凶族の者だな」


 声を荒げる。



「おっ…お前は…。え~っと誰だっけ?」


 とぼけた声で返す。



 隼人は瑞希に向き直り


「美鈴様っ、ご無事だったのですね。しかしなぜ凶族の者などと一緒に居るのですか」


 と、問い詰める。


「あっ…あの…私…」


 瑞希は後退り、葵に“助けて”と目で訴える。


 怖がる瑞希を庇い隼人を片手で押し戻しながら


「あの、失礼ですが貴方はどちら様でしょうか。まずは御自分が名乗るのが礼儀ではないのですか?」


 と、静かに諭す様に言う。



 あっ…葵が珍しく怒ってる。怖いっ、銀牙は後退る。



 何だこの女の力…。そうか、ウルフ族か…


「俺はウルフ族当主の護衛隊隊長を努める隼人と言う者だ。…女、お前も凶族の者か」


 葵は瑞希をチラリと見る。驚いた顔をしている。



「私ですか?私は人間ですよ」


 と静かに笑って


「この方は、美鈴と言う方では有りません。杉本瑞希さん。十六年前に生を受けた正真正銘の人間ですわ」


「な…に…、美鈴様では無いのか…。確かにウルフ族の匂いがしない。…本当に人間なのか…」



 瑞希は困惑する。


 私が…私が美鈴さんに似ているの? ミラルドさんの亡くなった奥さんに…。でもそんな事二人共一言も言った事無いのに…。ミラルドさんにとって私は只の身代わりだったの?…


 瑞希の顔が見る見る変わる。


「大丈夫ですか瑞希さん。お宅までお送りしますわ」


 と、倒れそうになる瑞希を支え葵は歩き出す。



「俺は確かに凶族で、ミラルドを狙った事も事も有ったけど、今はもうミラルドは大事な仲間だ。あんたと闘う理由も無い」


 と言って葵の後を追った。




 隼人は三人が立ち去った後、診療所のインターホンを押した。緊張する。


「はい。お待たせ致しました」


 と、流輝が顔を出す。



「…隼人さんでは有りませんか。…さあどうぞ中へ」


 と、リビングに通す。紅茶を出し、ミラルド様を呼んで参りますと出て行こうとした流輝を呼び止める。


「流輝様お待ち下さい」


「はい、何でしょうか?」


 隼人に向き直る。



 隼人は少し考えてから口を開いた。


「あの…先程ここを出て行った者達は…」


「瑞希様と銀牙様と葵様ですか?」


「はい。どう言ったご関係でしょうか?」


「銀牙様は凶族の者で、ミラルド様に復讐する為に生きて来られたそうです。ですが葵様の想いが銀牙様を変えたのです。葵様も銀牙様のマーキングをお受けに成り、共に生きて行く事を誓い有ったのです。瑞希様はミラルド様の恋人ですが、ミラルド様はマーキングするおつもりは無いようです」


 と言って目を伏せる。


「その…瑞希と言う方は美鈴様では無いのですか?」


 流輝は驚いた表情で隼人を見つめる。



「今…何と…」


「あの瑞希と言う方は美鈴様にそっくりでは有りませんか?」


「そんな…馬鹿な…」


「…私もミラルド様も…記憶を無くしている処が有るのです。美鈴様のお顔は…思い出す事が出来無いのです。只鮮明に覚えている事は、美鈴様は亡くなられたと言う事だけなのです」


 と、力無く項垂うなだれる。


「美鈴様と瑞希様が似ていると言う事は、ミラルド様には言わないで頂けますか?これ以上あの方を苦しめたくは無い」


 そう言って部屋を出た。




 リビングのドアが開いた。ミラルドが入って来る。懐かしい姿を前に


「ミラルド様っ…よくぞご無事でっ」


 隼人は、感極まった風に絶句する。


「隼人も無事だったんだな、良かった。ほっとしたよ。あの後の事全て任せてしまって…済まなかった」


「とんでも御座いません。生きて居て下さっただけで…私は…私はっ…」


 言葉が続かない。



 そこへ、隼人の訪問を聞いた美咲が現れた。


「!!」


「…お前はっ」


 攻撃体勢を取る。



「まっ、待ってくれ隼人! 美咲さんの事許してやってくれ。頼む、俺の友人の大切な人なんだ」


 ミラルドは必死に止める。



「ミラルド様が…そうおっしやるのなら…」


 渋々納得する。



 申し訳有りませんでしたと、美咲は改めて二人に深々と頭を下げた。


「それより、涼の側に居て上げて下さい」


 ミラルドにそう言われて「はい」と部屋を後にした。





「ミラルド様、城にいらしたそうですね」


「…あぁ。随分永く掛かったがやっと戻る決心が付いた。あの戦闘で殆どの者が亡くなったと聞いていた。だからもう誰も城に居ないと自分に言い聴かせて、お前達の生死も確認せずに。…俺は…俺は…、お前達から…逃げたんだ…」


 俯いて肩を震わせている。



「止めて下さい。私達は美鈴様の事は聞いておりましたし、ミラルド様がどのようなお気持ちだったのかも想像出来ます」


「誰もミラルド様の事を恨めしく思っている者などおりません。ですから、どうか顔を上げて御自分を責めるのは止めて下さい。お願いします」



「でも…美鈴が…今どうして居るのか…」


 ミラルドは顔を上げハッとした。


「お前は…知っているのか…」


 そう聞かれ返事に詰まる。



 こう成ったら、後には退けない。隼人は心を決めた。



「はい。あの後暫くして私はミラルド様を捜す為に城を飛び出しました。色んな町をさ迷い歩き、そんな時に出会ったのです」


 ミラルドはハッとする。…もしかして美鈴…


「優族の女でした」


 ミラルドは肩を落とす。



「その女が言うには、美鈴様が虫の息の時に頼まれたのだと、“亡骸は海に流して欲しい”と…。だからお望み通りにしたと申しておりました。他の者には、言いそびれておりました。申し訳有りません」



 …そうか…美鈴は死んだのか…ミラルドは俯いたまま項垂れている。


「大丈夫ですか?ミラルド様」


 美咲と入れ違いに戻って来た流輝がミラルドの身体を支える。


「大丈夫だ…」



 五百年も前に俺の目の前で亡くなった美鈴が、生きているかも知れ無いと思ってずっと揺れていた…



「最期が聞けて良かったよ…。これで気持の整理が出来る。有り難う」


 とミラルドは微笑んだ。










 瑞希は自宅のソファーに座り呆然としていた。


 私が…私が美鈴さんに似ているの?私は只の身代わりなの?自然と涙が込み上げて来る。



「瑞希さん大丈夫ですか?」


 葵が瑞希の顔を覗き込む。その声は彼女には届いて居ない様だった。このままでは心配ですわ。一人にはして置けない、早急に解決しなければ…



「どうしたの?瑞希」


 瑞希の余りの顔に、冴子が声を掛けた。


 葵は今、隼人に言われた事を冴子に伝える。



「そう…それで、こんな風に成っちゃった訳ね。解ったわ、後は任せて!」


「宜しくお願いします」


 心残りは有ったが、冴子に任せて。少し遅れて来た銀牙と、帰って行った。



「瑞希…瑞希! しっかりしなさい」


 瑞希の瞳に冴子が映った。


「お母さん…」


 わっと泣き出し、冴子に抱き付く。



「よしよし、大丈夫よ。大丈夫…」


 冴子は落ち着かせる様に瑞希の背中を擦る。


「ふふっ…何年振りかしらね。こんな風に瑞希が抱き付いてくれたの…」


 瑞希をソファーに座らせて、ハンカチで涙を拭いてやる。


「こんな風に好きな人の事で想い悩んで…。大人に成ったのね…」


 冴子は寂し気に微笑んだ。



「私は…私は…身代わりだったの?…彼女に似ていれば誰でも良かったの?…」


 しゃくり上げながら瑞希は呟く。


「瑞希は…ミラルド君の事、信じられ無い? 瑞希を身代わりにする様な人に見えるの?」


 瑞希は涙を流しながら首を横に振る。


 そんな事無い…そんな事無い…。心の中で繰り返す。



 冴子は再び抱き締めた。


「可哀想な子…。今日はゆっくり眠りなさい。好きな人の事を信じなさい。信じるのよ…」






















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