浄化 (大幅に改稿中です。まだ読まないで頂けると助かります<(_ _)>)
人物紹介
高科祐一
身長 180㎝ 細身
27歳
黒髪 少し長めの髪を、きっちり後ろに撫で付けている。
銀縁眼鏡
いつも 黒いスーツ姿
高科は幼い頃親に暴力を受け、命からがら逃げ出した処を、葵の父親に助けられた。
高科の親は、多額の金と引換に子供を手放した。
思ったよりも優秀だった為、ありとあらゆる教育を受けさせ、いずれは葵の婿にしようと経営学も学ばせた。
高科が十歳の時葵が産まれ、妹の様に面倒を見て来た。
今は、葵付の運転手兼ボディーガード。
真壁稔
身長 165㎝ ガッチリしてる
25歳
黒髪 スポーツ刈り
幼い頃から期待されて育って来た。
余りのプレッシャーに受験に失敗し、親に見捨てられ自暴自棄に成っていた処を葵に助けられた。
連れられるまま屋敷に行き、葵の優しさで心を溶かされた。
それから、葵の為に命を捨てる覚悟で生きている。
葵のボディーガード志願中。
屋敷の庭係。
「又、人間を襲いに行くのか。チマチマ殺して何に成る。じきに大量殺戮するから良いだろう」
男が声を掛ける。
「蟻は、一匹づつ潰して行くのが愉快なのだ。俺の事は放っておけ」
「野蛮人め」
去って行く姿を見ながら呟いた。
―――‥―――‥―――‥―――‥―――‥―――‥―――‥―――‥
今日は、ダブルデート。
銀牙の提案で、四人は急きょ出掛ける事に成った。
場所は、総統山を通り過ぎた所に有る遊園地。
ミラルドは今までそう云う場所に行った事は無い。
いや。一度だけ鉄雄が連れて行ってくれた事がある。
全然楽しめ無かった。
見た目は子供だけど中身は大人だ。大人の男が二人で行っても、楽しい訳が無い。当たり前である。
冴子達も誘ったが「若い人達で、楽しんで来なさい」と、断られた。
いつもは葵が嫌がるので、ベンツを使っているが。今日は四人乗るので、リムジンだ。
ボディーガードは運転手の高科が一人のつもりだったが「銀牙にお嬢様を任せては置けない」と、真壁も助手席に乗り込んでいる。
長い車体を公園の駐車場に停め、ミラルド達を迎えに行く。
「お待たせ致しました。参りましょう」
「おつす!早く行こうゼ~」
診療所で待っていたミラルドと瑞希と一緒に、四人で車に向かう。
「わっ凄い! リムジンって初めて!」
「本当だ、凄いね。俺も初めてかも」
「さあ、中へどうぞ」
車のドアを高科が、開けてくれる。
「有り難う御座います。今日も、宜しくお願いします」
そう言って車に乗り込む二人。
「あれ?もう一人いる」
「はい。あれは、真壁と言います。今日は二人でお供させて頂きます。どうぞ、安心してお乗り下さい」
そう言って、高科と真壁がお辞儀をする。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
と改めて言った。
車は、ゆっくりと走り出した。
早朝だった為、車内には軽食が用意されていた。
「皆さんも、どうぞ」
と勧められ、カナッペやサンドイッチを摘まみながらのドライブと成った。
乗り心地は最高だった。
会話が弾んでいると、どこかの部屋かと錯覚する。たまに揺れると。あぁ、ここは車中だったと思うのだった。
約、二時間半。漸く目的の場所に着いた。
四人は車を降りて、う~んと伸びをする。
高科と真壁にお礼を言って、入場ゲートへ向かう。
他の客達は、一様にリムジンを見て驚いていた。
銀牙と葵は、平気な顔で堂々と。 ミラルドと瑞希は、恥ずかし気に下を向き歩いて行った。
勿論、真壁もお供する。
何か遭ったら私が一番に駆けつけると、意気込んでいる。
人間相手なら、敵無しなのだが。そんな事は、知るよしも無い。
高科は、車に残ることにした。
ここには、絶叫マシンと言われる物が数々有る。それで、有名な場所だ。
ミラルドは少し苦手だった。
銀牙と葵は、次々に絶叫マシンに乗り込む。その全てに付き合わされ、ミラルドと瑞希はヘロヘロだった。ついでに、真壁も。
「はぁ、もう駄目。私、ちょっと休憩する……」
「……俺も……」
ミラルドと瑞希は、白旗を上げる。
「わっ、わたしは……、最後までお供させて頂きます」
と、真壁は頑張る。
「へぇ~、真壁さん頑張るね。俺は、まだまだ平気だよ」
銀牙がニタッと笑う。
「わたしだって、まだまだ行けます。お嬢様の為ならば!!」
と、真壁も意地に成ってそう叫んだ。子どもか。
「真壁さん、無理なさら無いで下さいね」
乗り物酔いできつそうな真壁に、葵は少し困った顔で声をかける。
真壁は、零れんばかりに目を見開き「……お嬢様に気を使って頂いて、私は、私は……っ」感極まって、今にも泣きそうだ。
「あ~、大袈裟だな~」
と言う銀牙をギロリと睨んで、そそくさと葵の後を付いて行く。
「まるで、金魚のフンだな」と呟いて銀牙は「あ~も~。俺達のデートの邪魔しないでよ~」と、後を追いかけて行った。
「確かに。銀牙に任せるには、頼り無いかもね~」
「そうね。将来的には、そうかも。でも二人が幸せなら、それでいいと思うけど」
「うん。俺もそう思う」
と、遠くなる三つの人影を見ながら、ミラルドと瑞希は微笑んだ。
一時間程して、三人が帰って来た。
真壁は、真っ青な顔をしている。
「大丈夫ですか? 真壁さん」
瑞希が駆け寄る。
「私とした事が、お嬢様にご迷惑を掛けてしまうとは……」
と、真壁は嘆いている。
「この長椅子に、横に成って下さい」
ミラルドが、医者の顔に成る。
優しい光を当てると、身体が軽くなる。重かった気持にも楽に成った。
「何をなさったのですか? 凄く楽に成りました。本当に嘘の様です」
真壁は、ミラルドに何度もお礼を言った。
昼食をとる為に、四人はバーガーショップに入ることにした。真壁は四人から少し離れた場所に座った。
食事を終え四人で園内をブラブラ歩く。その 三メートル後を真壁が付いて来る。
遊園地の外れに、小さな土産売り場が在った。
女の子達は、夢中に成ってお土産品をあさる。
そんな女子の後を、真壁はつかず離れず付いて回った。
まるでストーカーのようだな。と思っても、口には出さない。
ミラルドと銀牙は、店には入らず近くをブラブラしていた。
突然、茂みの方から悲鳴が聞こえた。
二人は、声のする方へ向かって走りだした。
男女三人が折り重なるように倒れている。
銀牙は、駆けつけた時に、走り去って行く後ろ姿を見た。
あれは……
銀牙は倒れた人もそのままに、その男を追って行く。
「おい!銀牙」
ミラルドは、銀牙を呼び止めたが、振り向きもせずに行ってしまった。
ミラルドは、倒れている人の手当をしてから銀牙の後を追う事にした。
「あぁぁぁぁっ」
銀牙の叫び声が聞こえた。
ミラルドは、その声の方に走った。
公園の冊を越え、林の中を探す。居た。「銀牙!」横たわる銀牙の元に駆け寄る。
銀牙のすぐ側に、黒ずくめの男が立っていた。
「誰だ!」
ミラルドはその男に向かって、叫んだ。
その男は、ミラルドに目を向けると、緩慢に両手を前にかざし黒い妖力を放った。
ミラルドは思わぬ攻撃を受けて、方膝をついた。
男は、更に妖力をぶつけてくる。
それを、ミラルドはバリアを張って防いだ。
「銀牙、大丈夫か?」
ミラルドが揺すると、銀牙は「うっ」と、短く呻き声を上げる。
このままじゃ二人共やられる。
「お前は、誰だ」
その男は、こちらの問いにには応えず。
「これは、置き土産だ」
とニヤリと笑い、妖力を叩き付け男は消えた。
その力に耐えきれず、バリアが砕け散る。
黒い妖力をまともに受け、二人共気を失ってしまった。
冊の向こうで、三度爆音のような物がした。
瑞希と葵が駆け付ける。
倒された木々の中央に、ミラルドと銀牙を見付けた。
「ミラルド!」
「銀牙!」
二人が駆け寄る。
「真壁さん、高科さんに連絡を」
そう言った直後に葵もまた胸を押さえてうずくまってしまった。
「お嬢様!!」
「葵ちゃん!」
真壁がミラルドを、駆け付けた高科が葵をを抱え急いで車に向かった。そして、真壁が引き返し銀牙をおぶって車に向かった。
病院へ着き、涼の診察を受ける。
「これは前に、銀牙君を診た時と同じだねぇ。三人共入院してもらうよ」
「あれ? 涼さん風邪ですか?」
マスク姿だし、鼻声だ。
「そうなんだよ~。熱っぽくて、身体もだるくて、医者の不養生だねぇ」
ズルッと鼻水をすする。
「でも、ちゃんと診察したからね」
涼はそう言うとフラフラと歩いて行く。
「有り難う御座いました」
と、後ろ姿にお礼を言って病室に入った。
三人は中々目を覚まさない。
瑞希は、心配でしかたがなかった。
葵には真壁が付き添っている。葵の状況を皆に伝えるべく、高科は一度屋敷に戻った。
屋敷に戻ってみると早苗と恭弥も、床に伏せていた。どうやら葵と同じ頃に倒れたらしい。高科は慌てて二人を病院に運んだ。
診断の結果は葵と同じ症状だと言う事だった。
瑞希からの連絡を受け流輝も病院に駆け付けた。いつものように時空間移動の力ではなくタクシーで駆け付けたとの事だった。体調が悪いらしく力がコントロールできないらしい。
良く見たら流輝も顔色が悪かった。ミラルドを心配しての事だろう。
数日が過ぎて、ミラルドが目覚めた。他の面々は未だに目覚めていない。
「ミラルドさん、大丈夫? あの日、何が遭ったの?」
「あの、日?」
「銀牙君と葵ちゃんと、遊園地に行ったでしょう?」
「……あの日、女性の悲鳴が聞こえて、男が逃げて行って、黒ずくめの男が現れて、突然、攻撃された……」
黒ずくめの男? 瑞希は、キャンプの時の夢を思い出した。
まさか……
「何が起きたのか、その後の事は全く……」
花瓶の水を変えに行った流輝が戻って来た。
流輝はふらつきながらミラルドのベッドに、駆け寄る。
「ミラルド様……。良かった……。安心致しました……」
流輝はそう言うと、その場に倒れ込んでしまった。
「流輝さん! ……やっぱり、具合が悪かったんだわ」
瑞希は空いているベッドに流輝を座らせる。
「無理していたんですね。でもどうして、流輝さんまで……」
「……ミラルド、様。紋章は、有りますか……」
流輝は、消え入りそうな声でミラルドに訊いた。
ここにあるぞと、ミラルドはベッドに座り、ペンダントを取り出して見る。普段は透明感のある真紅の紋章が、赤黒く鈍い光を放っていた。
「紋章が、どうしてこんな色に……」
ミラルドは呆然と紋章を見つめる。
「これは、俺達の先祖が、総樹様に授けられた物で……」
ミラルドは独り言のように呟いた。
「総樹様に? ……ミラルドさん、その黒ずくめの人って、真っ黒いマント姿で、フードをかぶっていませんでしたか?」
「そう云えば、そんな感じだったかな」
「たぶんその人、総樹様のしもべの人ですよ!」
「何でそんな事知ってるの?」
「この前総統山に登った時に、夢を見たの。総樹様が現れて黒い人を指して、私の人生に関わる人を滅ぼそうとするって言ってたわ」
「君は……、神の声が聞けるのか……」
「私にも、良く分から無いんだけど……」
「そうだわ。総樹様にペンダントを元に戻して貰え無いかしら。私、明日 総統山に登ってみる」
一度言葉を切ってから、瑞希は決意してそう言った。
「えっ、一人じゃ危ないよ」
「大丈夫よ」
「じゃあ俺も行く」
「えっ、無理よ。無理。」
「ミラルド様が行かれるのならば私もお供致します」
ミラルドと瑞希の掛け合いに流輝も加わる。
「えっ? ダメだぞ流輝!!」
焦ってそう言ったあとミラルドは、めまいがしてベッドに倒れ込んだ。それを見た瑞希は「やっぱり、私一人で行く!」と言い張る。ミラルドが「ダメだ」と言っても、全く訊く耳を持たない。
「流輝さんも倒れたんだって?」
相変わらず具合の悪そうな涼がそう言いながら入って来た。
「そうだ。瑞希と一緒に行ってくれないか?」
突然ミラルドにそう振られて、涼は返事に困る。
「何の話?」
ミラルドは紋章を見せながら、涼に経緯を説明した。
「別に、良いよ」
明日は休みだしと軽い感じで返事をする涼に「涼さんも体調が悪いのに」と瑞希はミラルドに抗議する。
「でも、瑞希が心配だから、涼と一緒に行ってくれ」
お願いだからと続けるミラルドに、しかたないなと思いつつ、瑞希は涼に「宜しくお願いします」と頭を下げた。
「じゃあ、行こうか瑞希ちゃん」
次の日の朝、私服姿の涼がミラルドの病室にやって来た。
今日も、涼は具合が悪そうだ。
「大丈夫ですか? 涼さん。無理ならタクシーで行きますよ?」
「瑞希ちゃん、心配しなくても大丈夫だって!」
涼に「行こうかと」促された瑞希は、ミラルドから紋章を受け取って、涼と病院を出た。
病院から総統山は近い場所にある。
涼の運転で、山の中腹にある総樹湖までの車道をくねくね登って行く。大丈夫だと言っていた涼は、かなりきつそうだった。
三十分程で車は湖に着いた。
ここからは、徒歩で階段を上がって行く。
二人は、登りにくい足元に注意しながら一段 一段上って行く。漸く千五百段の石段を上り、頂上に着いた。瑞希は脇目も振らず祠に駆け寄りひざまずいた。そしてペンダントをかかげる。
「総樹様、ご無沙汰しています。杉本瑞希です。実は、ウルフ族の紋章が濁ってしまったのです。どうか元に戻して下さい。お願いします」
そう言って、祈りを捧げた。
『そなたの望み……叶えよう』
しばらくして声が響いた。その声は、瑞希にだけ届いた。
瑞希の手の中が、徐々に明るい光に包まれていく。黒く染まっていた紋章が透き通った真紅へと色を変えて行った。
紋章が元通りに浄化されたのだ。
元に戻ったペンダントを見て瑞希はほっとして、総樹様に丁寧にお礼を言った。
そしてそれを手に取り、少し離れた場所で座り込む涼の元へ向かった。
「涼さん見てください、元に戻りましたよ」
瑞希はペンダントを涼の目前に差し出した。
紋章からは清浄な妖力が溢れ出している。
「ホントだ、さっきまで黒っぽかったのに、凄いね。これでミラルド達が良くなるといいね」
涼は、紋章から発せられる清浄な光をしばらくの間見つめていた。
「涼さん、どうですか? 動けそうですか?」
瑞希にそう聞かれ、涼は「何が?」と訊き返した。
「登って来た時、随分きつそうだったから」
瑞希にそう言われて、初めて、涼は体調が楽になっている事に気付いた。
「登った時に汗をかいたから、良くなったみたいだよ。じゃあ帰ろうか」
瑞希は頷いて、急いで階段を降りた。車に揺られ来た道を下って行く。
漸く病院に辿り着いた二人は、急いで病室へと向かう。
ミラルドはベッドに座っていた。流輝と銀牙は眠っている。
「ただいま、ミラルドさん。気分はどう?」
「瑞希お疲れ様。涼もありがとう。朝よりは、凄く楽に成ったよ」
「そう良かった。はい、ペンダント。総樹様が奇麗にして下さったわ」
瑞希はそう言いながら、紋章をミラルドに手渡した。
「有り難う。……元に戻ってる……」
驚きながらミラルドは、それを首に掛ける。
定位置に戻ると紋章は徐々に輝き出し部屋中が暖かい光に包まれた。
紋章から溢れ出した光は波紋のように広がり、病院の外へと広がって行く。
三十分程経って、ゆっくりと光は収まっていった。
「流輝さんも、良かった。大丈夫ですか?」
「私はどうしたのでしょうか…余り記憶が無いのですが…。大丈夫です。ご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした」
「やっぱり、紋章が濁っていたから、皆の体調がおかしく成ったのね」
「…そうだな…」
高科が見守る中、漸く早苗と恭弥は目覚めた。
「早苗さん。大丈夫ですか?」
「ここは…何処ですか?」
「病院ですよ。お二人共屋敷の庭で突然倒れたそうです。それで、大学病院へお連れしたのです」
「…そうだったのですか…。それはご迷惑をお掛けして、済みませんでした」
「とんでも有りません。私に出来る事ならば、何成りと」
じっと早苗の目を見つめ、手を取り、うっとりと語る。
「あんがとな。助かったよ。でも手は握らなくて良いだろ」
隣のベッドに寝ていた筈の恭弥が、その手を弾き睨みを利かせる。
すると高科は、何時もの冷静さを取り戻し、眼鏡を指で押し上げながら
「おや、恭弥君も目覚めたのですか?もう少しお休み頂いても宜しかったのに…」
と、皮肉を込める。
「何時も言ってるだろ。母ちゃんに手を出すな!」
「お言葉ですが、一度たりともお身体に触れた事などありません」
「今、触ったじゃ無いか!」
「それとこれとは、別です。病気の方に手を差し伸べる。当然の事ではないですか?」
「ああ言えばこう言う。…嫌な奴!」
「まぁまぁ、二人共…」
早苗は、苦笑している。
「しかしですね、早苗さん。いつも恭弥君は私の事を…」
「だって…。聞いてよ母ちゃん。コイツってばさぁ…」
同時に話し出す。
「はいはい、解りました。でもここは病院よ。この続きは帰ってからにしたら?」
そう言われ、二人は顔を見合わせる。
高科は咳払いをし
「退院出来るのですか?」
と顔を輝かせる。
「もう目覚めたのですから、きっと直ぐに…」
早苗は、軟らかく笑った。
次の日。全員退院出来る事に成った。
「ミラルドさん達も車で、ご一緒に参りますか?」
「流輝、どうだ?力使えそうか?」
「はい。大丈夫で御座います。お任せ下さい」
流輝は、胸を張る。
「俺達は大丈夫だから、先に帰って良いよ」
「それでは、お先に失礼します。銀牙さん、参りましょう」
「じゃあな。ミラルド、瑞希、流輝さん、又な!」
「ご機嫌よう」
「またね、葵ちゃん、銀牙君」
「お気を付けて」
ロビーで待って居た高科と恭弥と早苗と一緒に外へ出る。
助手席に早苗を乗せようとしたが、恭弥が無理矢理乗り込んで来た。
「もう母ちゃんにちょっかい出すなよ」
「だから、言ったでしょう。手を出した事など無いと、何度言えば解るのですか?学習能力は有るのですか?」
「うるせぇ!お前には、何度も言わなきゃ解らないだろ?」
「…俺、恭弥と変わろうか?」
見兼ねた銀牙が提案する。
「お嬢様、銀牙様、申し訳ありません。…何時もの事ですが…」
三人は苦笑する。
その状態が、屋敷まで続く事に成った。
『浄化』の内容を書き換えたので下の文がボツになってしまいました。残しておきたかったので下に記します。
高科と真壁の会話です。
◇◇◇◇◇◇◇
こちらは、待合室の高科と真壁。
「お嬢様は、どうしてあんな奴を選んだのでしょうか……」
真壁の声に高科は、ゆっくりと煙草の煙を吐き出す。
「……そうだ高科さん。貴方がお嬢様と結婚して下さい。高科さんなら、旦那様も納得される筈です」
「はっ、冗談。葵様がお産まれに成った時からお世話をして居るんだぞ。そんな気にはなれない」
高科は、眼鏡の中央部を指で押し上げながら言う。
「高科さんて、どう言う方がお好みなんですか?」
「私か。そうだな、私は早苗さんの様な方が良いな」
「えっ? 年上じゃ無いですか」
「そうだ。人生経験が豊富で良いではないか。……息子には警戒されて居る様だがな」
「あぁ。恭弥さんですか、銀牙さんに似てますよね……」
真壁は、銀牙のはじけるような笑顔を思い浮かべ、嫌な声で、言った。
「旦那様も奥様も、今では気に入っておられるのだから、良いでは無いか。橘グループは葵様が継がれるのだろうし。真壁には関係無い事だろう」
「私には関係の無い話しですが……。あんな、どこの馬の骨とも分から無い奴にですね、大切なお嬢様を持って行かれると言うのは……」
真壁はそう言うと悔し気に顔を歪め、うっすらと涙を浮かべた。
「そうだったな。真壁はお嬢様に助けられたのだったな。だから、そんなに……」
「受験に失敗し、親にも見捨てられ、さ迷って居た私を葵様が救って下さったのです。暖かい紅茶を入れて下さったのです。あの時のご恩は忘れません。だから、お嬢様には幸せに成って頂きたいのです」
「そうだな……幸せに成って頂かなければ……」
◇◇◇◇◇◇