《番外編》ラルの 憂鬱な日
これは、単に 面白半分で書いた物です。
流輝なら、やりかねないと思って書きました。
凄く短いです。
申し訳無いです。
流輝はここ数日、暇を見つけては自室に籠っていた。
もう一月に成る。毎日何をしているのだろう。
そんなある日、段ボールを手に降りて来た。
「ラル様が、以前耳としっぽをコスプレだと言っておいででしたので、これを お作り致しました」
流輝は茶色のネコ耳を右手に持って黒も御座いますと黒ネコ用と思われる物を左手に持っていた。
後はこれとか、これとか、こんなのも御座いますと、段ボールに手を突っ込み、うさぎ、豚、ライオン、を出して見せる。たてがみ付だ。
「………」
ラルは遠い目に成った。
「いつも同じ狼の耳だけでは、不振に思われるかも知れませんので……」
流輝は慌ててそう言い終え。右手を顎に当て、何やら物思いに耽っている。そして、ポンと手を打ちパンダも良いですねぇ。などと言っている。
おぉぉい。もしもし?
流輝は、何やら独自の世界に突入してしまったようだ。
うっ、どうしよう。これを全部試着しろと?
あぁ。冗談じゃ無い!
なのに、こんな日に限って余計な人達がやって来る。いつものメンバーだ。
目敏い三人は、早速 流輝の作品を見付け「わぁぁぁぁ」と、歓声を上げる。
「ラル様の為にお作り致しましたが、皆様も着けて見られますか?」
と、流輝はすかさず声を掛ける。
「えぇ? これ全部流輝さんが作ったんですか?」
「まじで?」
「凄いですわ。本当に、何でも出来ますのね」
三人は感心している。
それに気を良くして「私のお勧めは、ズバリこれです」と流輝は、耳が二つとその間に角が有る物を二種類見せる。
「それは?」
「キリンと牛です」
流輝は自信満々で答える。
キリンに有るのは、角じゃ無いからと、突っ込みを入れる前に
「まぁ、素晴らしいですわ」
「本当だ!」
「凄~い」
と言う言葉に、遮られてしまった。
そうこうしている間に、瑞希の母親まで現れた。
冴子は、段ボールの中をしげしげと見つめ凄いわねと言った。
「冴子様には こちらがお似合いかと存じます」
流輝は頬を染めて一対の耳を両手で捧げる。
「まぁ、うさぎですわ」
「うさぎだな」
「うさぎね……」
さっきの耳とは、少し違う。バニーだな。つまり、この中で一番年嵩の人に、バニーガールをさせたいのか、流輝!
冴子さんに、睨まれた気がした。
心を読んだのか。やっぱり怖いよ。冴子さん!
冴子はバニーの耳を手にし、ひとしきり考えた後で。何かを思い付いた様に、家へ帰って行った。
流輝は、気に入って貰え無かったのかと肩を落としている。
そんな流輝を元気付ける様に、思い思いに気に入った物を手にし、恐る恐る着けてみた。
おいおい銀牙。お前には、自前の耳としっぽがあるだろ!
でも。流石に女の子達は似合っている。ラルは頬を染める。瑞希、似合い過ぎ。その、はにかんだ顔が何とも……可愛い。
携帯携帯ポケットを探る。あったあった。
我を忘れて、瑞希を撮りまくる。
隣では、ライオンに扮した銀牙が、黒ネコに扮した葵を負けじと撮りまくっている。
そこへ、冴子が戻って来て「もう撮影会始まったの? 私も撮ってくれ無い?」と、おもむろにコートを脱ぎ捨てた。
その姿を見て、皆が固まった。
真っ赤なハイヒール、網タイツ、黒い衣装に身を包み、しっかり耳も装着している。
「「「バニーガールだ!!」」ですわ」
「母さん。何でそんな服、持ってるの?」
「会社の、宴会で、ちょっとね~」
どんな会社だよ! すかさずラルは心の中で、突っ込みを入れる。
ずっと、無表情で見ていた流輝が、遂に鼻血を吹き出し卒倒してしまった。
「私は、どうしてしまったのでしょうか……」
流輝が、目覚めた。
「流輝さん、大丈夫?」
冴子が自分を、見下ろしている。
流輝は「ん?」と思い横を向く。
……黒い網目の枕……なんて、ありましたっけ? と、流輝は考える。
何と、冴子の膝枕だ。
「あぁ、クラクラしてしまいます……」
流輝はまた眼を閉じた。
「だっ、大丈夫? 流輝さん!」
「もう、お母さんの格好がいけないのよ! 着替えて来て!」
と言われ、渋々立ち上がろうとした冴子の膝を、しっかり掴んで離さない流輝なのだった。
次も 番外です。