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第一章『紅(くれない)編』…プロローグ…

初めまして糸香です。


拙いと言うか、へたっぴなんで、温かい目でお願いします。


章ごとにプロローグを書いております。変だなと思われるかも知れませんが、一章を一冊の本と見立てて書きましたので、この様な形に成りました。ご了承下さい。







主な人物紹介。


エルド

ミラルドの父。五百年前のウルフ族当主。



美鈴

五百年前のミラルドの妻。



流輝

ウルフ族当主の側近。

時空間移動の力を持つ。



ミラルド

ウルフ族の次期当主。エルドの息子。

癒しの力を持つ。





 総統山の裾尾から東西南北に樹海が拡がる。山の麓には力を誇示する様に立派な城がそびえ建ち、その四方は塀で取り囲まれている。鬱蒼としげる枝葉、日光はそれらに邪魔されて森の中までは届かない。空から零れ落ちた光りは、光線の様に木の葉の間から草の生えない地面に落ち、その場所にだけ色見を与えていた。


 遥か昔からその場所に住むウルフ族。最も気性の荒い凶族。穏やかな気性の優族。大人しい気性の和族。代々当主の座を受け継ぐ本家。その森には数種の部族が住んでいた。凶族は本家と対立する事が多く、遂に五百年前に大規模な戦闘が勃発したのだった。





 凶族から、使いの者がやって来た。『話し合いに応じる。一人で来られたし。こちらも 凶族の代表一名で向かう』と言う内容の手紙が届いた。


 彼は争いが嫌いだった。なぜいがみ合わなければ成らないのか、なぜ仲良く暮らして行けないのか。当主にもその思いをぶつけて来た。だか彼の言葉が受け入れられる事は無かった。



 ミラルドは誰にも告げず 一人で出掛けた。その後を追う影には気付かなかった。それだけ思い詰めていたのかも知れない。光りのささない森を走る。凶族の指定した場所を目指す。凶族の頭が、一体何の用が有るのか、……罠と言う事は無いだろうか……


 指定された場所に着いた。一人の男が待っていた。


「――――凶族の代表の者か――――」


「そうだ……。約束通り一人で来た様だな。感心 感心……。ミラルド様、争いを辞めたいそうだな。ふん、愚かな。次期当主ともあろう者が……」


 凶族の代表の者は、言い終わると同時に左手を上げて合図を送る。すると木陰から凶族の者達がわらわらとあふれ出した。その者たちは遠巻きにミラルドを取り囲む。


「やはり罠だったか……」


「ミラルド様、あなたの提案には応じられない。……我々は争いを止めない。今更お前達への攻撃の手を緩めたりしない」


「今、我々は黒樹様の力をお借りして、最大の力を手に入れた。今が 本家に攻め入る最大のチャンスだ。……貴様にはここで死んでもらう」


 凶族の代表が攻撃の合図を送る。ミラルドは身構えた。その時突然、樹の上から数人がミラルドを取り囲む様に降り立った。彼の護衛隊だった。


「ミラルド様、お怪我はありませんか?」


「あぁ、済まない。勝手な行動を取って 。……助かった……」


 戦いは苦戦した。



 ミラルド達が戦っている最中(さなか)、凶族の別動隊が城に攻め込み、城壁の中でも凄まじい攻防が繰り広げられていた。当主のエルドは、流輝という時空間移動の力を持つ男にミラルドを連れて来る様命じた。


 ――――かしこまりました――――

 そう言って男は消えた。


 閃光が走り男が現れた。そして、ミラルドと共にすぐに消えた。


 気が付くと二人は城の中に立っていた。


「どうして俺だけ連れ戻した。なぜ他の者達を置き去りにした!」


 ミラルドは歯をギリギリと鳴らしながら流輝の胸ぐらを掴む。


「……エルド様に…… 至急ミラルド様をお連れする様に指示を受けましたので……」


 流輝はつらそうに顔を歪ませる。


「ミラルド、こちらへ」


「何の用ですか」


「これをお前に授ける」


 エルドの首に掛かっていた黄金色に輝くペンダントを、ミラルドの首に掛け服の中へと仕舞う。


「……これは……」



「代々 当主が受け継いで来た物だ。これを持つ者こそがウルフ族当主である証。今からお前が当主だ」


「なぜですか。僕は当主なんかにはなりたくない。」


 首からペンダントを外そうとしたその時、多くの敵が部屋の中へと雪崩れ込んで来た。


「こんな所までやって来たか……」


 力は三人の方が格段に上だったが多勢に無勢。三人は応戦しながら外へ出る。死角からミラルドに襲い掛かって来る者がいた。


「危ない」


 突然ミラルドは押し倒されて間一髪助かった。


「美鈴、なぜこんな所に。ここには来るなと言っておいただろう 」


「ごめんなさい。でも胸騒ぎがしたの。あなたの事が心配になって……」


 二人はとにかく逃げようと、手を取り合って走り出した。流輝もその後に続こうとしたが敵が立ちふさがる。


 ミラルドは美鈴を庇いながら応戦するが、敵の数が多過ぎた。鋭い爪が攻まって来る。ミラルドは咄嗟にバリアを張ったが容易く破られてしまった。


 ――――避けきれない――――


 そう思った時に敵との間に美鈴が入り込んだ。5本の鋭い爪が全て身体の中に飲み込まれて行く。その直後エルドと流輝が合流した。


「……遅かったか」


 流輝は奥歯を噛み締め、三人を少し離れた場所に空間移動させる。ここにはまだ敵は居ない。

 ……美鈴……

 ……なぜ俺を庇って……


「……ミラルド……あなたが無事で……良かった。……あなたは ……生きて……生き抜いて……」


「――――美鈴――――美鈴――――」


 ミラルドは美鈴を抱き締め、 自分の持てる力の全てを注ぎ込んだ。だが、愛する人を失ったミラルドの妖力は、見る見る無くなってしまった。


 心を引き裂かれそうだ。 こんな想いをするのなら、もう誰も愛さない。


 ――――――みすず――――――


 触れたら壊れてしまいそうだった。


 そこへ敵が現れた。エルドが懸命に戦っている。流輝はミラルドを庇うので必死だった。もうこれまでかと思った時。


「流輝よ、お前はミラルドを守れ」


 とエルドによって、二人は谷底へと突き落とされたのだった。流輝には、力を発揮する暇も妖力も無かった。


 激流の中に放り出された流輝は、必死にミラルドの元へ辿り着いた。そのまま二人は流される。


 激しい流れに呑まれそうに成りながら、必死に顔を水面の上に出す。遠くの方で轟音がした。その音はどんどん近づいて来る。


 ……この音は、滝?



 その瞬間、物凄い勢いで空中に投げ出されていた。流輝の力も限界だったが、最後の力を振り絞って光を放った。


 何とか陸上に降り立つ事が出来たが、二人共そのまま気を失ってしまった。幾日か経って目覚めた時にはミラルドは子供の姿になってしまっていた。




 それから、時は流れ……五百年後……









次回から 五百年後です









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