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嫁、誕生 2

挿絵(By みてみん)

☆☆☆


その頃-


「♪︎~♪︎~」


 屋敷の中では、先ほど宅配荷物を受け取った研一が鼻歌交じりに段ボール箱を開き、中に入っているカップ麺を初めとするインスタント食品や冷凍食品、トイレットペーパーやミネラルウォーターなどを取り出していた。


 屋敷の中は壁や天井の至る所に美少女アニメや特撮ヒーローのポスターが貼られ、リビングに置かれたテレビの周辺にはアニメや特撮番組・映画のDVDとブルーレイ、更にはVHSのビデオテープが山のように積まれ、多種多様なテレビゲームのハード機器やソフトがナチュラルに鎮座していた。


 本棚にはマニアックな漫画や素人には難解な科学専門書、テレビアニメのファンブックとゲームの攻略本&設定資料集、流行のライトノベル文庫や18禁の同人雑誌、遺伝子工学の研究論文等が区別も差別も無く、ギチギチに詰め込まれている。


 ダイニングキッチンには空っぽになったカップ麺の容器や冷凍食品のパック等が詰め込まれたごみ袋が山のように積まれており、それでいて流し台以外のコンロ等は新品のように汚れひとつ無かった。


『♪︎~♪~』

「ん?」


 研一が段ボール箱の中身を広げていると、近くの机の上で充電ケーブルに繋がれている研一のスマートフォンが着信音と共にブルブルとバイブをし始める。


 研一がスマホを手に取ると、スマホの画面には午後からのお天気情報が届いていた。


『関東地方は夕方より雨。自宅周辺地域は激しい雷雨が予想』


「ふぅ~ん……『夕方から雨』か。今夜の『実験』にはおあつらえ向きだなぁ~。フフフフフフ……」


 スマホ画面に表示された今夜の天気情報を見ながら、研一は嬉しそうに笑う。


 その姿はまるで、SF映画や特撮ヒーロー番組に登場するマッドサイエンティストを彷彿とさせ、知らない人が見たらすぐに通報されそうな不気味さが漂っていた。


☆☆☆


 研一の住む屋敷の一角には研一専用の研究室が備え付けられている。


 ドアは指紋認証と網膜認証式になっており、研一以外の人間は不用意に入室できないようになっていた。


 荷物を片付け終えた研一は、そのまま研究室へと入っていく。


 室内には最新式の大型スーパーコンピューターが3台も置かれ、様々な薬品や実験器具の他、用途不明な大型機械等も置かれており、まるでSF映画から抜け出てきたような場所だった。


 そして、研究室の中央にはガラス製と思われる半透明の巨大な円筒型カプセル容器のような装置が鎮座しており…………そのカプセルの内部には、一人の『人間』が容れられていた。


 年齢はおそらく20代くらい。

 長く伸びた銀色の髪の毛と豊満な乳房から考えて、性別は『女性』と思われる。

 その肉体はグラビアモデルも裸足で逃げ出しそうな抜群のスタイルをしており、お世辞抜きで『美の女神の化身』を思わせる美しい容姿をしていた。


 その『女性』は一糸纏わぬ姿でカプセル内に注がれた黄緑色の液体に浸かっており、まぶたは閉じられて、呼吸をしている様子も無い………ただ静かにカプセルの液体内で、水中のクラゲのように浮かんでいた。


 カプセル装置の周辺には心電図や脳波計らしき装置が置かれていたが、それらの計器やメーターは全てフラットな状態を表示していた。


「あぁ~、お嫁ちゃん……僕だけの『お嫁ちゃん』……」


 研一はカプセルの抱きつくと、カプセルに向けて……いや、カプセル内にいる『自分の嫁』となるべき女性に語りかける。


「もうすぐだ………もうすぐ僕らは一緒になれる……僕と君だけの『エデンの園』で、幸せに暮らすんだよ………」


 研一はカプセルを頬擦りしながら、その中で目を閉じたまま眠り続ける………いや、まだ『命』が宿っていない自分の『嫁』に愛おしげに語りかけるのだった。


☆☆☆


その夜-


 まるで海がひっくり返ったような激しい雨が降り続いていた。

 猛烈な風が吹き荒れて森の木々を激しく揺さぶり、時折雲の合間から稲妻が光ったかと思えば、ゴロゴロという雷鳴が周囲の山々に轟き響く………。


 研一の屋敷では、全ての窓のカーテンを締め切った上に部屋の照明灯も必要最低限に抑えられているのが外から見ても判別できたが………研一の研究室がある区画には、目測2~3mはありそうな避雷針らしき装置が屋根の上に大きくそびえていたのだった。



感想よろしくお願いいたします。

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