推しを思って5年。彼が死ぬ運命を回避します! 目指せ! グーパンKO!
1000文字の超短編です。
推しが死んだ。
アニメの中で凶弾に倒れたのだ。
赤毛の君と呼んでいた彼は、紳士な性格で親友の主人公をひたすら支えていた。
そんな推しが、主人公を庇い死んでしまう。
な ぜ だ
録画していたビデオを巻き戻したけど、彼が死ぬ運命は変わらなかった。
あの時はショックで心が灰になったから、今の状況はご褒美といえる。
なにせ私は推しがいる世界に転生しているのだ。
旧スマホから新スマホにデーター移行するみたいに、元の人格と私の人格が完全一致。
推しに抱き起こされた瞬間、過去を思い出した。
「君、大丈夫か?」
TV画面という次元を超え、生の推しがドアップ中。
魔物に殴られたことも忘れて、私は歓喜する。
推しがっ 生きている! 尊い!
感動で震えている間に、彼の背後で魔物が咆哮した。
彼は銃を抜き、私を抱き寄せたまま魔物の額に発砲。
魔物はあとかたもなく消滅した。
「君は避難しなさい」
殲滅隊である推しが、次々と魔物へ銃を撃つ。
カッコよすぎて言葉にならん。
私は志願して、村娘から殲滅隊の歩兵になった。
この世界では魔力を銃に込め、ぶっ放すという設定がある。
でも私の魔力は弱すぎて銃は撃てない。
絶望的に才能がなかった。
ならば、筋力だ!
私は体力をつけ、荷物持ちとして推しと共に魔物討伐に明け暮れた。
「君が物資を運んでくれて助かるよ」
「閣下のお役に立てるなら本望です!」
ぼそぼその携帯食しか食べられなくても、朝から晩まで戦地を駆けずり回わっても、推しの生ボイスを聞けるだけで天国だ。
彼が生きているだけでいい。他は望まぬ。
そんな5年間を過ごしていたら、推しが命を捨てるシーンがきた。
その事件はそもそも、推しの上官である主人公への妬みからきたもの。
功績をあげる主人公に嫉妬し、男が暗殺を企てるのだ。
犯行当日、私は男をマークし続けた。
男が凶器を懐から取り出した瞬間、突撃!
「ぐっ! 貴様っ!」
男ともつれあいになり、銃弾が私の肩をかすめた。
体に激痛が走る。
だが、それがどうした。
私は渾身の力で腕をふりあげ、男の顔に拳をめりこませた。
「なめんな、推し愛ッ!」
ぶっ飛ぶ男。
KOして、推しの無事を確認。
ほっとした瞬間、私は意識を失った。
目覚めると、悲痛な顔をした推しがいた。
「なんて無茶をするんですかっ」
それは私が推しに言いたかった台詞そのもので。
私は笑って、彼にVサインした。
その後、男は逮捕され私は回復。
だ け ど
「俺があなたを守ります」
推しにイチオシされて死にそうです!