礫
おやつ時を過ぎてソファにしどけなく横たわり、心地よい眠りへと真由紀は今にも落ち込みそうなところへ、ふいに肩をゆすられぼんやり起き直ると散歩への誘い。
微笑む恋人へ力なくうなずいて目をこすりながら、それでも十分後にはもう表へでて足長な彼にすたすた付き従いつつ、白い花をつける雑草をわきに茂らせながら細長くゆるやかに曲がりゆく裏道を歩むうち、素足へそのまま突っかけた靴の中にどうやら小石が迷い込んだらしく、真由紀は優しく後ろへ蹴り上げた踵をにぎって脱ぐと、片足立ちのまま靴をゆすった。
と、コロコロと転がりゆく亜麻色が目を射たかと思うと踵で一度跳ねかえり、すうっと落ちながら硬い墨色のアスファルトに当たると共にぽんとはじかれてすぐに止んだ。
踵へ指を差しいれて履きなおし、しゃがみ込みながらぼんやり礫を見つめるうちふと心づいて彼をむくと、きっと緩やかな曲がり道をすいすい先へ進んでいるかと思いのほか、嬉しくもこちらを見返りながら足をとめて、ブルゾンのポケットに手を突っ込んでいる。
「どうしたの」
と優しく穏やかに訊いてくれるのに、真由紀はなごやかに首をふりながら、
「何でもないよ」
と答えるなり笑顔で立ち上がって、静かに歩みだしながらたちまち早足になるままぱたぱた彼のもとへ飛んで行き、両足をそろえて立ち止まると、背の高い暖かいその胸へそっと額を押しあてた。
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