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悪役レスラー(♂)が悪役令嬢に転生してヒーローになる話  作者: 芋男爵
第一章 悪役令嬢×悪役レスラー=ヒーロー
2/5

第一話、今日から頑張る その一


 あれから一週間が経った。


 一週間もあれば色々わかるものだ。


 この体の女の子、名前をオリヴィエ・ドラゴバッファ(七歳)と言うのだが、ラッキーなことに俺はこの子の記憶をしっかり受け継いでいる。

 知らない記憶を思い出すのには少し神経を使うが、これならわざわざ情報収集する必要は無い。


 と、言いたいところだが、記憶に齟齬が無いか確かめる為に結局さりげなく周りに色々聞いた。

 俺は頭が良くないのでさりげなく聞くのには苦労したものだ。


 どうやらオリヴィエは、木から落ちて頭を打った後、高熱にうなされて数日寝たきりだったらしい。

 そして起きた時には中身が俺に変わっていた訳だ。


 これがこの子に憑依したのか、それとも転生前の記憶を頭を打った衝撃で思い出したのかは分からないが、未だに俺が女の子だという実感が湧かないので、俺は前者だと思ってる。


 だとしたらオリヴィエの魂?人格?はどこに行ったのか気になるが、どれだけ考えてもわかるものでは無い。

 喋り方や趣味趣向はオリヴィエに引っ張られているので、きっと自覚が無いだけで共存してるんだと自分に言い聞かせて、何となく湧いてくる罪悪感から目を背けることにした。


 あと、ここはどうやら俺が居た世界とは違うらしい。

 聞きなれぬ土地の名前、中世ヨーロッパ的な時代にしては平和な街、極めつけは魔術や神器といった存在。


 別世界、異世界なんてそんな馬鹿なと思ったが、転生するなら異世界があってもおかしくないだろう。


「魔術ねぇ……」


 魔術、この言葉にワクワクしない人間がいるだろうか?

 物を浮かせたり、空を自由に飛んだり、雷を落としたり、誰もが一度は夢想したと思う。


 それが手の届く距離にあるのだ。

 心が踊るとはこういうことなんだろう。


「ふふっ」

「……ミス・オリヴィエ」

「ハッ! ひゃイ!」


 教師に名前呼ばれて反射的に体が固まり、そのせいで返事も変な声になってしまった。


「随分と楽しそうでしたが、私の授業はそんなに愉快でしたか?」

「い、いえ」

「では授業に集中してください」

「はい……」


 そうだった。

 今は授業中だった。


 怪我と高熱の後遺症が無いかしばらく様子見をするということで休んでいたが、今日からは毎日頑張って学校に行かなくてはならない。

 正直少し面倒くさいが、この世界の学校は裕福な家じゃないと入れないらしいので、ありがたい気持ちで毎日行かないと入れてくれた両親や学校に行けない人達に失礼だろう。


 それに、俺はこの学校でやらなければいけないことがある。

 しっかりしないとダメだ。


「では、今回の授業はここまでとします。各自しっかりと予習するように」


 授業が終わって休み時間が始まった。

 席を立とうとすると、赤髪の女の子とキツネ顔の少女が近づいてきた。


「オリヴィエ様大丈夫?」

「やっぱり怪我で辛いんじゃ……」


 オリヴィエの友達だ。

 おそらくさっきボケっとしていたことを心配しているのだろう。


「いえ、大丈夫ですわ(いや、大丈夫)」

「でも……」

「ありがとうノエリアさん、レティシアさん。本当に大丈夫でしてよ(ありがとうノエリア、レティシア。本当に大丈夫だから)」


 この体になって一番面白いと思ったのは、喋り方が強制的にオリヴィエと同じお嬢様言葉になることだ。

 他にも俺は生粋の辛党だったのに、甘い物が好きになったり、犬派だったのに猫派になってたり、細かい所でオリヴィエに引っ張られている。


「そんなことより(わたくし)、やるべきことがありますの」

「やるべき事?」

「なんですか?」

「……アリアさんに謝罪を」


 アリアとは、オリヴィエがいじめていた女の子だ。

 オリヴィエは典型的ないじめっ子で、おとなしいアリアに目をつけて、高慢な態度とは裏腹に陰湿な手口でいじめていたのだ。


 俺がやった訳じゃないが、だから「関係ない」で謝らないのは違うだろう。


「えっ!?」

「どうして……」

(わたくし)、高熱に浮かされて生死を彷徨い、自分が如何に小さい存在か思い知らされましたわ。そして、このままではダメだと思いましたの」


 何かを聞かれた時の為に予め考えておいた言い訳だ。


「アリアさんには沢山悪いことをしましたわ。ですから、たとえ許されないとしても、ここで謝らなければ(わたくし)は一生変われませんわ」


 適当な言い訳でも七歳相手には通じるらしく、目をキラキラとさせている。


「思い立ったが吉日! 行きますわよ!」

「はいっ!」

「え? 私も?」

((……キチジツ?))


 教室の端で本を読んでる少女、アリアに近づく。


「アリアさん、少しよろしいかし──」


 最後まで話終わる前に、俺とアリアの間に新しい少女が立ち塞がった。


「……何かしら?ポーラさん」


 立ち塞がった少女はポーラ、確かいじめられていたアリアを庇った良い子だ。


「病み上がりなのに随分と元気だね、今度はアリアに何する気?」

「誤解ですわ、(わたくし)はアリアさんに謝る為に」

「信じられるとでも?」


 睨まれる。

 確かにこれで信じろという方が無茶だろう。

 どう説得したものか。


「ちょっと! オリヴィエ様が謝ろうとしてるのに何よその態度! というかあんた関係ないでしょ!」

「ノエリアさん!?」

「ハッ! 何が謝ろうとしてるのにーだ! その態度が反省してない何よりの証拠だろう!」

「待ってポーラさん! (わたくし)は本当に」

「関係ないのにでしゃばってきて正義面してんじゃないわよ気持ち悪い!」

「なんだと!」

「なによ!」


 これはダメなやつだ。

 二人が当事者達を置いて熱くなっている。

 止められる気がしない。

 お互いが捲したてるような口論をしているので口を挟む隙が無い。

 アリアを見てみると俺と同じようにオロオロしている。

 レティシアを見てみると……


(……あれ、レティシア居ねぇ!? 逃げた!)


「───! ─────っ!」

「─────! ───!」


 もはや二人が何を言っているのかよく分からなくなってきた。

 あぁ、女子って怖いな……。


キャラスペック


名前:オリヴィエ・ドラゴバッファ

性別:女

年齢:7歳

職業:貴族の長女

性格:悪い

特性:わがまま

筋力:か弱い

知力:ちょっとお馬鹿

魔力:天才的

好きな物:ケーキ

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