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ハッピーエンドじゃないと出られない教室  作者: ナヤカ
二章 最円桜は一歩を踏みだす
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1話 降水確率は当てにならない

【一章の変更点報告】

・万願寺優における噂を「電波女」から「怪しい宗教勧誘者」へ変更。

・万願寺優が自らを「欠陥品」と表現していた言葉を「社会不適合者」へ変更。

・一章、最終話を加筆。

※変更におけるストーリーや展開の変更等はありません。

 気象庁が梅雨入りを発表した六月上旬。


 それまであまりに天気の良い日が続いていたものだから、その発表に「本当か……?」などと当初懐疑的だった先日。


 だが、蓋を開けてみれば、それみたことかと言わんばかりに連続して雨が降ったため「やはり気象庁様……!」と手のひらを返して傘を持って家をでたら、今日だけ雨が降らなかった放課後。


 たしか、天気予報でも降水確率70%だったんだがな……。ポケモンのワザ命中率と同じ理論だろうか? だとしたら逆に30%とかで降ってきそう。やはり正義は100%だけか。


 確率論というは行動や判断における一つの材料に過ぎないのだが、当たった時と外れた時に起こる感情の高低が激しいため、それ自体を目的としがちだ。


 普通なら雨が降らなかったことに「良かった!」と喜ばなければならないところなのだが、降水確率70%という数字を見てしまったがために「降らねーじゃねぇか!」と怒りを覚えてしまう。


 そうやって勝手に期待し、勝手に裏切られた気になって、勝手に信用しなくなっていく。


 人間不信というものも、誰かに裏切られた人ほど陥りやすいのだろう。


 だが、その多くは降水確率みたく自分で引き起こした事だったりする。


 裏切られたわけじゃない。期待しすぎて裏切られたような気になってしまっただけ。


 だから、多くの人々は期待することをやめた。


 期待しなければ、怒ることも悲しむこともなくなるから。


 そんな人々は、いつ雨が降ってもいいよう常に折りたたみ傘を持ち歩き、天気がどれほど良くても洗濯物は室内に干した。


 そして、その対策が功を奏した時ほど心の中でほくそ笑んだ。


 ほら見たことか、と。


 だが、ハッピーエンド至上主義者である俺から言わせてもらえば、それは悪手である。


 なぜなら、ハッピーエンドとは、独りでは到底辿り着くことができない境地だからだ。


 すべて独りで何でもできてしまえる人ほど、ハッピーエンドは遠のいていく。


 それを愚かだと断定してなお、人は誰かを信じなくてはならない。


 その誰かを選ぶとしたら、俺はやはり妹の桜だろう。


 桜が正しいからじゃなく、裏切られても良いと思えるのが桜だからだ。


 なんか、桜のことを考えたら早く会いたくなってきたな……。


 いつものように雑務を終え、帰宅するために教室をでた俺は下駄箱へと急いだ。


 のだが――、


「あー、六組の皆さん! ちょっとだけお時間いいですか!?」


 それは、すこし高めで舌足らずな声によって引き止められた。


 振り返れば、身長150センチあるかないか位の幼い少女が書類を胸に抱いて、もう一つの教室入口にちょこんと立っている。


「あのー、生徒会執行部の一ノ瀬(いちのせ)です! 今度ある生徒総会のことで話があるんですが!」


 彼女の名前は一ノ瀬(いちのせ)心美(ここみ)


 現生徒会執行部において、庶務を務める唯一の二年生でもある。


 そして……生徒会が面倒な仕事を六組に押し付けるときだけやってくる疫病神でもあった。


「そんなに時間は取らせないので! 今日は!」


 最後に付け加えられた「今日」という言葉で、どうやら明日から放課後の雑務が増えるらしいことを理解してしまう。


 もちろん、六組である者たちに断る術はない。


 なぜなら、六組とは『価値残りシステム』で価値無しの烙印を押され、それでも価値を無理やり付けるために教師や生徒会に言われた雑務をこなす、謂わば窓際族だからだ。


 ポケモンでいう旅パの『ひでん技要因』と一緒。


 そう例えると、なんか悲しくなってきた……。

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