4話.押して押して!
「なぁ、俺、そろそろここを出るつもりだけど、お前はどうするんだ?」
6日目の朝、アレックスはそう切り出した。
うーん・・・
どうするのかしら。
城にはもちろん帰れないし,かと言って行くあてもないのよね・・・
だって私、城からほとんど出たことがないのよ。
城にはなんでも揃っていたし、買い物だって私が行ったりするなんてことは有り得なかったもの。
はーぁ・・・
困ったなぁ・・・
黙ったままの私を見かねたのか、アレックスは「お前、家は?」と言ってきた。
家・・・ねぇ・・・。
これはまた適当に誤魔化すしかないわよね・・・。
「あの、ね、アレックス。私、盗賊に襲われたって言ったじゃない?それ、村ごと襲われたの。それで逃げたんだけど、何故か私だけ執拗に追われて・・・。どうやってか、村からずっと追いかけてくるの。それでついこの間もまた追いつかれて、命からがら逃げていた所でアレックスが助けてくれたみたいなの。でも、怖いの。家に帰ったらきっとまた捕まって売り飛ばされてしまうわ。帰りたくない・・・」
上目遣いでアレックスを見上げてみる。
最近一緒にいて、アレックスは結構押しに弱いことがわかった。
今だって「う゛っ」ってなってるもの。
あと一押しね・・・
「ねぇ、アレックス。一緒に連れて行ってくれないかしら。」
お願い、と懇願してみる。
私ってば女優になれちゃうかもしれないわ。
この作り話だって強ちウソじゃないし。
だって結局は知らない人の所に嫁に行くってことは売り飛ばされちゃうことと同じじゃない?
ちょっと規模が大きくなって国の話っていうだけの違いよ。
「アレックス・・・?」
返答を渋るアレックスを呼んで催促してみる。
「わぁーったよ。連れて行ってやるよ。」
渋々といった顔で了承の言葉を口にするアレックス。
「本当!?ありがとう!」
騙しちゃってごめんね。
いつか事が片付いたら、きちんと説明するから。