9話.私の決意と彼の葛藤
「・・・アレックスって。実は強かったのね。」
ぽつり、と呟いてみる。
途端にアレックスが『急に何言ってんだコイツ』って目で見てきた。
そ、そんなに呆れた目で見なくたっていいじゃない~。
「だって、一人であんな大勢に勝てるなんて思っていなかったんだもの。何かやっていたの?」
も一回トライしてみる。
うるさい女って思われちゃうかしら。
そんなことをぐるぐると頭の中で考えていたら、不意に返事が返ってきた。
「ガキの頃に護身術としてちょっとかじっただけさ。それに、旅なんてしてたらあんなの日常茶飯事だしな。」
「ふーん・・・。」
そう返事をして、ぐるぐると頭の中で考えはじめる。
日常茶飯事って・・・。
じゃあ、旅をしていればまたあんな風に襲われたりするかもしれないってこと?
そしたら、今度こそ・・・。
私は運動もそんなにしたことがないし、もちろん剣なんて持ったことも無い。
自分を守る術なんて何ひとつ持ってないわ。
このまま旅を続けるとして、ずっとアレックスに守ってもらうの?
「私も剣をするわ」
「・・・は?」
唐突にそんな言葉を発すると、案の定アレックスは何か不思議なものを見るような目で眺めてきた。
「アレックス、私に剣を教えて。」
言ってみてから決心がついた。
自分の身は自分で守れなくちゃ。
ただでさえアレックスに迷惑ばかりかけているのに、これ以上足手まといにはなれないのよ!
「・・・嫌だ。」
あっさり承諾してもらえると思っていたのに、即効で断られた。
「なんでっ!?またさっきみたいなのに襲われたら、私だって守ってもらってばかりはいられないでしょう?」
「あんな奴ら、俺一人でも十分だ。」
「じゃあ、アレックスがいないときは?いつも私のそばにつきっきりなわけにはいかないでしょう?」
反論に反論を重ねているとアレックスははぁ、とため息をついて諭すように言った。
「・・・剣を扱うってことは、そう簡単じゃないんだ。お前に剣は振り回せない。」
これにはさすがにむっとした。
「最初から決め付けないで!私だってやれるわ!」
「そういう意味じゃない!俺はお前の手や身体が―――――――・・・」
「...なによ?」
「・・・いや、なんでもない。」
「じゃあ、教えてくれるの?」
改めてこう問うと、アレックスは頭の中での葛藤を振り払うように一瞬目を細め、やがて「わかった。教えてやるよ。」と言った。