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序章1

バトルものは初めて書くことにしました。

描写に伝わりづらさもあるかと思いますが、少しでも楽しんでいただければと思います。

ノゾミ冒険記をどうぞよろしくお願いいたします。

あ、これ夢だって気づくことってあるよな。

俺もデジャブを感じたみたいに以前も見た気がする風景を見ることがある。

そこは昼寝したら気持ち良さそうな草原。

誰もいなくて、そもどこまででも遠くを見渡せそうなくらい広い青空。

太陽がとても暖かくて気付いたら眠ってしまいそう。

けど、何でかわからないけど…頰を涙が流れるんだ。

何か大事なものを失ってしまったようなそんな悲しい感じ。

こんな暖かくのどかな場所にいるのに…。

あ、そうだ…俺は……ーーーー。





「おい…ら…おき…。」


「ん…。」


「ノゾミ、起きろって、いつまで昼寝してるつもりだ。」


何者かがノゾミと呼ばれた呑気に眠っている癖っ毛の目立つ茶髪の少年の肩を叩き、起こそうとする。


「ん…ふぁあー。あれアキト?」


目を覚ましたノゾミの前には利発そうなキリッとした黒縁眼鏡の似合う男前の青年が立っていた。


「おはよう。それでノゾミは今が何時で何をすべきか覚えているのか?」


「えっと…。」


少しアキトが怒っているように見えたノゾミは必死に思い出そうとするが彼の脳細胞は期待に応えてくれない。


「はぁ…。明日の準備はもうできたのか?リンがお前のことを探していたぞ。」


ノゾミは豆電球が光るようなイメージが浮かび、手を叩いて全てを思い出した。


「あ、そうだった…リンに準備手伝ってもらう約束してたんだけど、修行の帰り道で眠くなって。」


「お前のことだから、そんなことだろうとは思ったけどな。」


アキトはリンという少女にノゾミが約束の時刻を過ぎても帰ってこないと聞き、自分の修行のついでに探して来ることにした。

そして森に向かう途中木陰で昼寝をしているノゾミをあっさりと見つけることができたのだった。

そこはノゾミが昼寝するには最適なとても暖かそうで、その上葉っぱの揺れる音が心地よい絶好の昼寝スポットだった。

ノゾミは完全に意識が覚醒したようで


「急いで、戻らないと…アキト、起こしてくれてサンキューな。」


サッと飛び起き軽い敬礼をアキトにして、走り出そうとする。

ちょっとしたところで振り返り


「そういえばアキト、もうリンに言ったの?」


「何を…って言えるわけないだろ。俺が勝手に想っているだけだから気にするな。それにリンも迷惑だろうしな。」


少し考え、思い至ったアキトは頰を染めながら返答する。


「そんなことないと思うけどな…。まあいいや俺は先戻ってるから。アキトも後悔しないようにな。」

ニヒッと歯を見せたノゾミは今度こそ振り向かずに走り出す。


「全くあいつは…。けどあいつらと一緒にいられるのも今日が最後か。それでも少し寂しいな。」

少し立ち止まって上を見上げたアキトだったが右手に剣を顕現させ、森の奥に歩き出した。





村にはすぐに戻ってこれた。

ノゾミが全速力で走ったのもあるが、約10分で戻ってこれた。

カドネ村という彼らの住む集落はとても規模としては小さい。

30人程度の村民と周囲を森に囲まれた土地柄であるため外の人間とは会うこともなく、森の動物と時々呼ばれていない"襲撃者"と出会ってしまうくらいだった。

走っている間、リンに対してどんな言い訳をするか考えていたノゾミだったが上手い言い訳が思いつく間も無く自宅まで着いてしまった。

ノゾミの家は所謂昔ながらの木造建築だった。

扉の立て付けも悪く、雨漏りも頻繁に起こるガタの来た家ではあったが立て直そうとは考えなかった。

ノゾミにとっては両親との唯一の繋がりだった気がするからである。

意を決して扉を開け


「リン、遅くなってごめん。」


開口一番の謝罪と深いお辞儀をした。

すると、玄関に立っていた可憐な紅蓮の長髪を微動だにしない少女がはぁ…とため息を吐いた。


「どこで道草食ってたのよ。心配したんだから。」


ノゾミはゆっくりと頭をあげ

「気付いたら森で昼寝してたみたい。でもなんで心配?」

心底疑問であるような表情でノゾミが訊ねる。


「明日出発日でしょ。最後だからって何か無茶するんじゃないかって思ったの。アキトには心配ないって言われたけど。」


「はは、何だよそれ。ちょっと森で修行してただけだよ。外では何があるかわかんないしさ。」


「もう、いつも呑気なんだから。心配して損した。」


肩を落とすリンだったが


「でも、心配してくれてありがとな、リン。」


笑顔を浮かべるノゾミに安心してつられて笑ってしまったのだった。


二人で荷造りを進めて、2時間ほど経ち、ようやく荷造りも終盤となってきた。

最もノゾミが何でもかんでもカバンに詰め込もうとした為リンが取り上げて、中身を整理し直すという無駄な時間があったため、リンの想定した時間を上回ってしまった。

その影響でまだ明るかった外もかなり日が落ちてきていた。

家のチャイムが鳴った。


「はーい。今出ま〜す。」


さも当然のようにリンが扉を開ける。


「俺の家なんだけど…。って、あ…。」


ノゾミは少し納得いかない様子だったが来客が誰だかわかると、駆け出した。


「「師匠!」」


ノゾミとリンは二人して白髪の杖をついた老人に飛びついた。

しかし、二人の突進はあっさりと回避され部屋の中に入られてしまった。


「相変わらず、二人とも落ち着きがないのぉ。それではいつまで経ってもワシには勝てんぞ。」


「イッテェ〜、避けるなよな。師匠〜…。」


「ノゾミ上に乗らないでよ。って、どこ触ってんのよ。バカッ!!」


「ぐほぉっ。」


勢いよく飛びかかった反動で玄関先に転がってしまった二人だが、上に乗っかったノゾミは更に吹き飛ばされるハメになった。


「やれやれじゃ、全く。」


老人は呆れたように息を吐いた。





「で、結局なんで師匠はうちに来たんだ?」


ノゾミはくっきりと紅葉の付いた頰を氷で冷やしながら、本題を聞くことにした。

無論、転んだ時に怪我したものではなくその後の人為的な攻撃によるものだが。


「明日の朝出発式を行うことは知っているな。」


「もちろん、俺だってそんなバカじゃないさ。」


笑いながら返答するノゾミだったが


「私との約束は忘れたくせに…。」


「ん、リンなんか言ったか?」


「何でもない!!」


リンはゴホンっと咳払いをして


「それで、明日の出発式で何かあるんですか?」


「うむ、渡すものがある。それと村長からありがたいお言葉もあるぞ。オッホホ。」


「「げ…。」」


ノゾミとリンは揃って顔を青くすることとなった。

以前村長が集会で話した時永遠と話が続くのではないかと錯覚するほど長く、村民が何人か倒れてしまうという事件があったからである。

その教訓から村長は登壇することを禁止とされたはずだが…


「冗談じゃ。面白い反応をするのぉ、二人とも。オッホホ。」


「心臓に悪い冗談はやめてくれよな〜、ししょ〜。」


二人は揃って安堵で肩を落とす。


「そっちは冗談じゃが、渡すものがあるのは本当じゃぞ。何かは明日まで内緒じゃがな。」


「今教えてくれてもいいのによ〜。」


「今教えられないのに、わざわざここまで師匠が来てくださったんですか?」


リンは師匠が効率的ではない方法を取るのが珍しく思った。

師匠が以前ノゾミ、アキト、リンの3人の稽古をつけてくれていた頃は無駄なことは全くさせない、効率化の鬼であったからである。

その修行の厳しさで3人は幾度となく泣かされていたのだが。


「いや、意味はあるぞ。二人の顔を旅立つ前にしっかり見ておきたくての。」


「「師匠。」」


二人は涙で少し、目を潤ませると


「冗談じゃ。」


「「だと思ったよ!!」」


二人は絶叫することとなった。






「本当にそれだけ言いに来たのかよ。」


「そうみたいね。」


師匠はあっさりとその後帰って行った。

修行の場では厳しいもののそこから出れば、優しく冗談もよく言う師匠のことを3人は慕っていた。


「いろんなものを教わったもんな。」


師匠はカドネ村の先生という職を一手に担っていたようなものだった。

学問、魔術、狩り、それ以外にも生きていく術をたくさん教わってきた。


「本当の本当は俺たちの顔見にきたのかもな。」


「うん、私もそう思った。師匠って案外照れ屋だし。」


「だよな!」


二人の笑い声は近所に少しの間響いていた。




日は完全に暮れてしまい、夜になった。

都会の夜と違い、村では僅かな灯りしかない。

魔法を使えば光を灯すこともできるが、カドネ村では夜早く寝る習慣がある為そう長く灯りは点いていない。

しかし、村の子供は時々夜家を抜け出しては村の外れにある広場に集合して遊んでいた。

今村にはノゾミ達より年下の子供が二人いる。

しかし、二人はまだ5歳ととても幼く、ノゾミ達とは10歳も年が離れていることで基本3人で集まることが多かった。


「にしても、ここは俺たちが小さい時から何も変わらないな。」


「そうね。ほらここ、ノゾミが火の魔法で焦がしたベンチ。」


「げ、まだあったのか。」


「確かあの時は、ノゾミと俺がここで決闘したんだよな。」


「そうそう、それでノゾミったらあっさり負けて。泣いて魔法をこのベンチに打ったんだよね。ホントバカなんだから。」


「もういうなよ〜。それであの時ゾウギ兄に殴られたんだからさ。めちゃくちゃ痛かったんだぜ。」


ノゾミは痛みを思い出すように頰をなでる。


「ゾウギ兄元気にしてるかな?もう村を出てから3年になるのね。」


「そうだな、村のルールでは2年間だからそろそろ帰ってきてもおかしくは無いんだが。結構そのまま帰ってこない人もいるらしいしな。」


「何でこんなルールあるんだろ…。私ずっとこの村に居たいよ。」


「リン…。」


アキトはかける言葉が見つからなくて、伸ばそうとした手を引っ込める。


「なーに泣いてんだよ。むしろ、俺はめちゃくちゃ楽しみだぜ。」


ノゾミはリンの頭をくしゃっと撫でる。


「ノゾミは寂しく無いの?私たちこの村で15年も生きてきたんだよ。」


「わかってるよ。俺だって寂しい。けど、それと同時にすげぇ楽しみなんだ。外の世界にはもっと多くの人がいて、俺たちの知らない世界がたくさんあるんだ。それにこの村じゃ食えないような美味い食べ物だってたくさんあるんだぜ、きっと。」


ノゾミは目を輝かせて空の彼方を見つめる。


都会では見ることのできない空に広がる無限の星が美しく、そして神秘的に輝いている。


「俺たちの道は一度違う方に向かうかもしれない。でもそれはノゾミの言ったように俺たちにとって貴重な経験になるはずだ。村にいるだけじゃ知ることのできなかったことを多く得ることができる。その後、またこの場所で集まって祝杯をあげよう。」


アキトもノゾミに賛同し、力強く拳を握る。


「そっか、うん。まだ、村を出ても無いのにね。私ってばいつになく弱気になっちゃった。」


えへへ、とリンは今度こそ吹っ切れた様子だった。


「ホントに珍しいよな。いつも俺のこと怒ってばかりのリンがさ。」


「ノゾミ、うるさい!それはいつもノゾミが変なことばっかりするからでしょ。」


ノゾミの頭を思いっきり叩く。


「いてぇ!」


「ノゾミは一言多いよな、いつも。」


アキトはそう言って笑うが


「何、アキト関係ないって顔してるんだよ。この前は俺に賛成してくれたろ〜?」


「アキトも私がいつも怒ってるって思ってたの?」


アキトにはリンの背後に般若が見えるような気がして


「違う違う、俺はリンが少し怒りっぽいって言っただけで…あっ。」


リンの背後の炎は一層強さを増し


「二人とも…バカぁぁぁーーーーーー!!」


「「ぎゃぁーーーーー。」」





「全く、騒がしい奴らだ。あいつらが本当にボスの探してるキーなのかよ。」

暗い森の奥で漆黒のローブに身を隠した男が遠くの村に目を向け、呟く。

「まだまだ、力も心も足りないが伸び代はあるって所か。」

男は首からぶら下げたネックレスを掴み

「粛清の光はすぐそこに----」

そう小さな声で呟くのだった。

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