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ice cream

作者: 新星爾咲

 暑い、暑い、真夏の太陽が、私の肌にチリチリと照りつける。

 ぱっちりおめめを演出するマスカラが落ちてしまわないように注意しながら、汗ばんだおでこをレースのハンカチでおさえた。

 もちろん一番お気に入りのワンピースに、きらきらのミュール。

 気合いが入るに決まってる。だって、今日は大好きな彼との初デートなんだから。


「ごめん、待った?」 

 私が待ち合わせ場所に20分も早く来てしまったにも関わらず、

彼はすぐにやってきた。

 彼も緊張してくれてるのかな。そんな淡い期待を胸に私は前を歩く彼を見つめた。


  ∽∽∽∽∽∽∽∽


 真夏の太陽に、俺は思わずたじろぐ。でも、決して外に出たくないわけじゃない。

 なぜなら、今日は俺の大好きな彼女との初デートだから。

 眉毛もばっちり整えたし、可愛くてお洒落な彼女の隣にいても恥ずかしくない格好をしたつもりだ。

 待ち合わせ場所に近づくと彼女はもう来ている。俺だって緊張して落ち着かないから早めにきたのに。

 申し訳なさと照れ臭さが半々の気持ちで、俺は彼女に声をかけた。

 「ごめん、待った?」

 ううん、全然、と言ってほほえむ彼女は、いつもよりさらにかわいい。

 思わずにやけそうになる顔を見られないように、彼女の少し前を歩こう。


  ∽∽∽∽∽∽∽∽ 


「どこに行くの?」

 私が聞くと、彼は笑って、ひみつ、と答えた。駅に向かってるみたい。

 ついた場所は、やっぱり駅だった。ここに来るまで私にはひそかな願望があったけど、かなわなかった。

 それは、手をつなぐこと。私と彼はまだ手をつないだことがなかった。デートの時こそは、仲良く手をつなぐのが夢なのに。

 でも、まだ15分しか経ってない、気長に待とうと思ったときだった。

 やばい、急ごう、と言って彼は急に私の手をつかんでホームに向かって走りだした。

 私は、突然の出来事に赤くなったり青くなったりしながら彼に引っ張られるように走った。

「間に合ったぁ!」

 私たちが目的の電車に乗るとすぐに電車は走りだした。

 ふと手元を見ると、やっぱり本当に手をつないでいる。ひんやりした彼の手。真夏なのに。

 くすぐったい気持ちでそのまま見ていると、それに気付いて彼が、ごめん、と手を離した。

 行き場を失った手に寂しさを感じて、私はさっきまで出せなかった勇気を振り絞ってこう言った。

「何で?ずっとつないでいようよ」

 さっきよりもかたく手を握って、顔を見合わせて、笑った。


  ∽∽∽∽∽∽∽∽


 ずっと前から決めていたこの場所。彼女と出会わせてくれたから。

 あの時の事を思い出して隣を見ると、彼女も、ばつが悪そうな顔でこっちを見ている。

 「あれがなかったら、今二人でここにはいなかったんだね」

 そういうと彼女はとびきりの笑顔を返してくれた。 何でこの笑顔に気付かなかったんだろう。きっと何度もすれ違っていたのに。


  ∽∽∽∽∽∽∽∽


 あれは去年の夏。この遊園地に友達と来ていた時のこと。

 大好きなアイスクリームを持って急いで友達の所に行こうとして、立っていた人にぶつかっちゃって。

一目見た瞬間に

「かっこいいなぁ」って思ったけど、その時はただ謝るだけで何もなくて。

でも、それからしばらくして、学校で偶然すれ違って。お互い顔を見合わせてたちどまってたっけ。

その人が今この場所で、私の隣で微笑んでくれてる。私、シアワセモノだなぁ。


  ∽∽∽∽∽∽∽


「とりあえず、食べる?アイス。」

俺がそう訊くと、彼女は笑顔でうなづいた。

二人でベンチに並んで座って、アイスを食べる。

俺がからかって、ちょっとほっぺたを膨らますのもかわいい。

「彼女はアイスクリームみたいだ。」

彼女を横目で見ながら考えてみる。甘くて、いとおしい。

「おれはとろけてしまうかも」

なんて本気で思ってみたりして。

 きっとこれからも、ずっと。


  ∽∽∽∽∽∽∽


幸せに浸っていると、 彼にアイスを食べようと誘われて、すごく嬉しかった。

もう誰かにぶつかるなよ、なんてからかわれて膨れてみせるけど、それすらも嬉しい。赤くなった顔、ひんやりとしたアイスでなおるかな?

ふと、

「彼はアイスクリームみたい」

と思う。ひんやりとした彼の手。でも私はとろけちゃうかもしれないなぁ。

 きっとこれからも、ずっと。

やっぱり分かりにくいですね。三年くらい前にほとんど書き上がっていたものの蔵出しです。

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