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第7話 本と現実

私は、一度一人で考える為に部屋帰ることにした。これからどうするのか、考え無ければならない。と言ってもこの家に住む事が出来ればの話だけど。


「ふ〜、これからか〜」

考えがあまりまとまらず、ベットに倒れ込むようにダイブする。

少し前に図書館で寝てしまったのに、再びベットに誘惑され、眠たくなってくる。ベットには勝てず二度目の眠りについてしまった。



気が付くと周りには朽ち果てた建物があり、今まで居たレーテの家とは違う雰囲気に私は、竦んでしまう。

「こ、ここは何処?誰も居ないの?チト?ミーアさん?」

怖くなり、名前を呼ぶ。

しかしそういう気配は無く、辺りに声だけが響く。


不気味な場所に一人で居るのは怖いから、とりあえず歩く。

常に黒雲が立ち込めているていて、建物や道みたいな物はあっても何らかの力を受け破壊されていた。

痛々しいまでに破壊され尽くされた、家々。でもこれをやった人は無闇やたらに破壊したそんな気はしなかった。

「何だろ、悲しい感じがする」

「悲しい?お前、これを見て悲しむのか?」

唐突に後ろから声を掛けられびっくりする。

それに誰も居ないと思っていたので、人を発見でき、ちょっぴり気持ちが落ち着いた。

「あっ、ごめん、お前が呟くから答えてしまった」

声の主は、落ち着いた声色で人のせいにしてきた。あれは私のせいじゃ無いでしょ。

「いえ、こっちも突然声を掛けられたから、びっくりして」

私は微笑み、声の主の顔を見る。

黒と赤の服を着た少女?だった。

「その様に驚かれたのは久しぶりかも」

私を見て、少女?は微笑む。まるで遥か昔に別れた、友を見るように。


「あの、ここは何処なんですか?」

「何処か・・・分からんな、私にも」

そう言った少女は、何故か悲しげだった。少女?には見えない大人しさがあり、今まで会ってきた人とは全く違った感じがした。


「・・・あの、お話しませんか?」

沈黙に耐えきれず、少女の袖を引っ張り構ってもらおうと奮闘する。

「お話か、ふふ・・・嫌だ、そう言うのは面倒そうだから」

少女は寂しそうにするスノーを尻目に壊れた瓦礫の上に座り、欠伸をする。

「面倒くさいって・・・そんなぁ〜」

また静かになり、音が無いことに気付く。


「おっと、そう言えば忘れてた、お前どうしてこうなったのか、気になってたな、教えてやる」

そう言って、手招きをしてくる。どうせまたやっぱり面倒とかからかってくるだけなのではと思う。

「お前、気になってなかったのか?だったら良いが」

少しは、話でもと思ったのだが、と心の中で思いつつ、地面に着かない足をプラプラさせる。

「気になりますけど、本当に教えてくれるの?何か、やっぱ面倒とか言わない?」

まだ会って数分の少女に疑いをかける。

「言わない、流石にこっちから話振っておいて、やっぱりはあやつに怒られる」

数分の間に見せた余裕な表情とは違い、少女の顔は、少し怯えた様な顔をしている。

仕方なく、身を寄せる事にする。


そして少女は小さい声で囁いた。

「魔女の仕業、破壊の魔女のな、お前は知ってるの?魔女がどんな奴か」

少女が口にした魔女、それは本に書いてあった名前だった。あの嘘ばかりの本の。

「その魔女は怒りのままに破壊する。最悪の人です」

少女は正解と言わんばかりに拍手する。ただ本の一文をそのまま話しただけなのに。

「ほう、知っていたのか、ならお前の考えてる事で大体合ってる」

でも、何か違う気がする。これを魔女がやった事自体が間違ってる気がする。スノーは、本と現実のこの場所の2つを見て、とても違和感を覚えた。

「あの、本当にこれを魔女さんが?」

「お前は知っているのだろ、だった分かるはずだが」

少女は何度も同じ事を聞くなと怪訝そうにする。

「これを魔女さんがやったのなら、何故こんなに悲しそうな感じがするの?」

少女は目を見開き驚く素振りをする。

当然だ、突然やって来た、そんな少女に悲しそう何て、言われたのだから。

「何故・・・そう思う」

「それは分からないけど、何となくそんな気がするの!」

そう何となくなのだ、ただそんな感じがする、それだけ。スノーは、重々しい空気の中、ただそれだけを感じ取った。それだけの話なのだ。もしかしたら、本の影響なのかも知れないけど。

「お前、私を舐めてるのか?悲しいだと!誰が人間風情を殺して、悲しむものか!」

スノーに悲しそうと言われ、焦り、本性を表してしまう。また、怖がらせてしまった。でもこれで良い。結局人間は怯える生き物だ。

「舐めてないよ!前も誰か言ってたけど、私馬鹿になんてしてない、真剣にそう思ったから、言っただけだよ、確かに本の通りだったらきっと悲しいなんて思わないと思う、でも魔女さん、どうして人を生かしたの?」

スノーらしい、率直な質問だった。

「それは・・・」

唇を噛み締め、俯く。

きっと魔女には、人は容易く殺せたはずだ、なのにそうしなかったのかそれはきっと何もしなかったから、最初から魔女は誰に怒り、殺そうなんて考えて無かったと思った。

「ねぇ、何があったの?」

俯く魔女に近づき頭を撫で、そう囁く。

「私は、私がこれをした訳ではない。あいつらがしたんだ。力が欲しいが為に、そして全て私のせいにされた、私は何もしてないのに」

悔しさで涙を流している魔女は本当にただの少女に見えた。

「それじゃあ、本に書いてあったことはやっぱり、嘘だったの?」

今となってはそんな事、どうでも良かったでも、全て嘘かどうかはまだ分からない。

「ふふ、本当の事も書いてある、復讐のために戦おうとしていたのは本当だ」

人に騙されて、守ろうとした者を守れなかった、怒りを覚えるのは当然なのだろう。

「でも、後悔してるんでしょ?何となくだけど、分かるよ」

魔女は何でもお見通しだなと手を上げ降参する。



それからは、魔女との会話にいそしんだ。

好きな食べ物とかただの雑談だった。

それだけなのに魔女はとても喜んだ。

魔女はただ話し相手が欲しかっただけなのだ。


「そ、そういえば、お前名前は?」

照れくさそうに頬を赤らめる。

「私?どうしようかな〜?教えなきゃだめ?」

からかうと魔女は袖を掴み、教えてくれるまで離さないと言う。

「アハハ!冗談だよ、私は、スノー、私はスノー・リンデだよ!」

久しぶりに人の名前を聞き、覚えられるか心配になる。

「わ、私は、リーテ・ク・・・あっ、リーテだ、よろしく」

危うく、全部言ってしまいそうになり慌てる。

「リーテさん、よろしくね!」

二人の名前を言い合い、握手をする。

「さんは要らん、リーテ、それだけで言い」

リーテは久しぶりに出来た友達を見て、心の中で誓った。絶対に守ってみせると。



「おひさま・・・ベット・・・」

翌日、目を覚まし私は昨日の事を夢だと実感する。

恥ずかしさのあまり赤面しているかも知れない。だって夢でお友達作るとか危ない人じゃん!

「あっ、やっと起きたにゃ、全くスノちゃんはだめだめにゃ」

昨日と同じ落ち着いた声がする。と言うか、あんなに、にゃを連発してるのはチトしかいない。

「チト〜会いたかったよ〜」

薄っすらと涙を貯め、抱きつく。夢とはいえ一時的に一人になったので寂しかったのだ。

チトは抱きつかれ、訳も分からず驚く、しかしスノーの良い匂いに魅了され、そんな事どうでも良くなってしまう。

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