第6話 友達
「なに…これ?昔に一体何があったんだろ」
数時間前にうとうとして寝てしまった。今度は、寝まいと頑張りつつ古い本を読み進める、その本には昔の事が書かれていた。
「・・・魔物・・・戦争・・・」
ペラペラと更に一枚また一枚とめくる。様々な事柄が書かれていて、めくる度に情報が流れ込んでくる。しかしそのほとんどは、知らない名前の人目線で語られていて、何というか自慢話みたいに見える。
「魔女ついての文献?」
この話は他の物とは違った。明らかに虚偽の情報だと思う文もあり、真に受ける人は、誰も居ないだろうと思われる文が並んでいる。
こんな物を信じる人が世の中にはたくさんいる、そう思うと何だか嫌な気分になる。
「魔女・・・この世界での大罪人、力に溺れ、国を破滅させる。出会った者はすなわち死を意味する」
嫌な、話がびっしりと書かれていた魔女の話を飛ばし、ページを更に進めるとめくれないページがあった。
「とある少女の話?求めし者の叫び」
ページをめくろうとしたのだが、不思議な力でめくれないようにされていた。
一体何が書かれてるんだろ、腑に落ちないが、仕方なく本を閉じる。
「ひどい本だった」
私は、初めて本で気分を悪くした気がする。重い足取りで本棚に戻しに行った。
机に戻ると、そこで誰かの視線を感じた。
耳がひょこっと出ていてバレバレな隠れ方、多分チトだ。
「え〜と、チト、何してるの?」
私が話しかけると耳がビクッとして出てくる。
「にゃはは、バレてたかにゃ」
頭をポリポリと掻き、照れている。
「何してたの?突然走って行っちゃって、心配したんだよ」
「ごめんにゃ、私ちょっと嫌な事があると走りたくなっちゃって」
申し訳なさそうにして、頭を下げた。
「ねぇチト、私、村に帰らないと」
少し時間が経ち、ずっと言わないといけないと思っていた事を言う。流石に貴族様のお家にずっと居る訳には行かない。居たいと思う気持ちを抑える。
「スノちゃんは帰りたいにゃ?」
真剣な眼差しのチトの質問にすぐに答えられなかった。
本当にここでの生活は楽しそうで、残りたいと思ってしまう。
何故なら、私は村で奴隷みたいな仕打ちを受けてきたのだから。
「本当は帰りたくは・・・無いよ」
だからチトの綺麗な目に見据えられて、質問され、私は素直な気持ちを言ってしまう。あんなに抑えようと思ったのに。
「ふふ、にゃら良かったにゃ、私スノちゃんには帰って欲しくないにゃ」
それを聞いたスノーは驚く。
村でそんな事を言われた事が無かった。だからとても嬉しい、それにチトにそんな事言われるとは思ってもみなかった。
「だって、スノちゃんはとっても良い人だからにゃ!」
チトは真剣な目で私を見据え、この広い図書館に声が響き渡るほどに声を大きくして言った。
「良い人?・・・私が?」
スノーにとって、良い人は、レーテのように誰にでも手を差し伸べられる人だと思っていた。
だから、自分が良い人と、言われて驚いた。
「そうですにゃ、だって、だって!初めてだったにゃ、私にこんなに親しく話しかけてくる何て、この家に来る人は皆怖くて、私が話しても礼儀知らずなメイドといつも言われてしまうにゃ」
この屋敷は貴族の家だから、チトの様な礼儀が出来ない人をあまり受け入れてはくれない。私が村で受けてきた仕打ちみたいな物をチトも、そう思うと何だか良く分からない感情が込み上げてくる。
「チト・・・そんな事が」
励ます言葉が見付からず、何と声をかければ良いか分からなくなる。
「あ・・・ご、ごめんにゃ、変な事言っちゃったにゃ」
すぐにチトは、場の雰囲気を重くしてしまった事に気付き謝る。
「あの私・・・」「あの私!」
何とも言えない空気になってしまい、どぎまぎしてしまう。
そして二人は顔を見合わせて笑い合い言った。
「これからずっと友達でいようね!」
二人はほとんど同じ事をされてきたような物だ。だからこそ、気が合う。そんな二人の声は、静かな図書館に響いた。